(33)

2007年5月23日

ロサンゼルス最高裁のフィドラー判事は昨日、スペクター側に付いた法医学の権威、ヘンリー・リー博士が事件現場から何かの証拠の品を持ち帰り、今も検察側に隠していると認定した。

ただし、何が起きているのかは不明なため、リー博士を現時点で法廷侮辱罪に 問うことはしないが、「リー博士が何か持っているなら公判で明らかにするべ きだ」と判事は語った。

判事は認定の根拠として、最初に被告側の弁護団にいたサラ・キャプラン弁護士の証言をあげた。



スペクターの最初の弁護人だったロバート・シャピロのチームにいたサラ・キャプラン弁護士は、博士が何か小さな白いものを取り上げて試験管に入れるのを見た、爪の破片のようだったと予審で証言した。

リー博士が隠しているのはラナ・クラークソンの爪の破片で、おそらく弾丸の跡が残されている。それは彼女が銃を口に入れられたときに抵抗したことを示すものだ、と検察側は主張している。

検察側はリー博士が信頼できない証人だと主張するが、これをフィドラー判事は戒め、信頼できるかできないかの判断は陪審員に任せるように命じた。

だが判事は陪審員のいない審問の場で、リー博士は今回の件で多くのものを失ったはずだと語った。リー博士はO.J.シンプソンやケネディ・ジュニアの事件でも弁護側に付いてい た人物だ。



一方、リー博士は証拠隠滅を図ってなどいないと必死に弁明している。

「私が見つけたのは血に染まった2本の白い糸のような繊維だ。これについては文書に書いているし写真も公開している。ちゃんとラベルを貼って証拠の袋に保存してある。私が証拠を隠しているというのは言いがかりだ」


「サラの証言は色などの点で明らかに食い違っている。それに、この事件に関わった人間で爪を失った者がいるという証拠はない」

だが水曜日の公判で陪審員に公開された写真を見ると、クラークソンの親指の爪が剥がれている様子がはっきり映っている。検察側は、これはクラークソンが被告と争ったことを示していると主張している。

フィドラー判事はすでにリー博士が何か隠していると認定している。それは何なのか。博士はいまイタリアに行っている。


(34)

2007年5月

検察側の証人ペナ医師の証言
ラナ・クラークソンの死は自殺ではなく他殺だ

クラークソンの舌の傷は特異な形をしており、銃身をむりやり口の中に入れられたことを示している。傷は口の中だけでなく、クラークソンの右腕と手首にもあった。

彼女は希望を捨てない積極的なタイプの女性で、抑鬱症を患った記録も自殺を試みた記録もない。彼女の死は自殺ではなく殺人によるものだ。ペナ医師はそう証言した。

スペクターの弁護団は、クラークソンの死は自殺であり、自分で銃を口にいれて引き金をひいたと主張している。

だがペナ医師は反論した。彼女はあらかじめ身辺整理をした形跡もない。解剖所見からは2種類の抗鬱剤が検出されたが、彼女の掛かりつけの医師によれば、それらの薬は慢性頭痛の薬として処方したものだ。それに彼女は財布も持っていた。わざわざお金を持って親しくもない他人の家に行って自殺するとは考えにくい、と。

この日の公判では、クラークソンを死に至らしめた銃弾の跡を示すイラストも公開された。銃弾は口から耳のほうへ、やや上向きに後頭部へ脱けている。弾丸はクラークソンの前歯を砕き、粉々の破片が脊髄を傷つけている。おそらく即死だった、とペナ医師は証言した。



ラナ・クラークソンの右腕と手首の傷は“抵抗の跡”を示すもので、彼女が自分で銃を口に入れて撃ったという弁護側の主張とは矛盾するものだ、とペナ医師は言う。

次のペナ医師の証言は被告スペクターにとっては大打撃だったはずだ。現場で見つかった銃のコルト・コブラの溝の部分には血痕が残っていなかった。これは銃を発射した後で誰かが血を拭いたことを物語っている、とペナ医師は証言したのである。

さらに、「クラークソンの右肩にはハンドバッグが掛かっていました。自殺だとしたら、右利きの彼女が銃を持つほうの手にそんなものを下げているでしょうか」と彼は語った。

ラナ・クラークソンは抗鬱剤を飲んでいた。何か個人的な悩みを持っていたからだ、という弁護団の反対尋問に対しても、彼はこう反論した。「薬は医者が適正に処方したものです。彼女の家には同じ薬が大量に残されていました。自殺するには十分な量です。もし彼女の死が自殺なら、自宅で薬を大量に飲めばいい。被告の屋敷に行って拳銃自殺する必要などなかったはずです」

クラークソンの足元に転がっていた銃についても彼は重要な証言をした。「被告の銃が入っていた引き出しは1つしか開いておらず、銃のホルスターも空っぽなのは1つだけでした。クラークソンが他人の家の銃をそんなに簡単に見つけられたでしょうか」と。