(29)

ラナ・クラークソン



弁護団は依頼人のスペクターが“ひ弱”であることに注意を促した。

リンダ弁護士は陪審員を前に、被告は薬の副作用で手が震えること、身長が5フ ィート4インチで体重が59キロしかないことを指摘した。

「科学は疑いの余地のない証人です。科学は嘘をつこうとする動機を持っていません。記憶や言葉にまつわる問題もない(お抱え運転手はスペイン系)」とリンダ弁護士。

リンダ弁護士は検察側の陳述を、事件現場にいなかった者たちの作り話と断じ、 科学は事件現場にいた、と主張する。

彼女は弾の弾道と飛び散った血痕のあとを示し、「ラナ・クラークソンの両手には硝煙反応があるのに依頼人の体にはなかった。つまり被告はラナを撃っていな い。彼女の側にいなかったから硝煙反応がないのです」と主張した。

さらに、彼女は事件前にラナが友人たちに送ったEメールにも注意を促した。そ こにはこう書かれていた。「いずれ身の回りの色んなことを整理したい。女のコ が背負うには重すぎるから」

ブルース・カトラー弁護士は言う。「事件現場についた警官たちはすぐに殺人と いう結論を出してしまい、その結論に一致しない証拠や証言はすべて無視してし まったのだ」



注:ずっと前の記事にはスペクターの手に硝煙反応があったと書きました。あれは誤報だったのかもしれません。



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フィル・スペクター


2007年5月8日

4人の女性が銃を弄ぶスペクターの性癖を証言

「彼は私の眉間に銃を突きつけて言いました。“もしここを出ていくなら俺はお前を殺す”と」

「彼は私に銃をつきつけて部屋に閉じ込めました」

検察側の証人として証言台に坐った彼女たちは口をそろえて恐怖の体験を証言 した。



以下は検察側の第2の証人、スペクターのかっての恋人だったダイアン・ オグデンの証言だ。

「あれは1989年。18年前でした。パーティーのあと、突然、彼は人が変わったようになって私をレイ
プしようとしたんです」

音楽タレント・コーディネーターのオグデンは、ラナ・クラークソン殺害につながったと思われるスペクターの“性癖”を生々しく証言した。

「彼は汚いコトバで私を罵りました」とオグデン。「そのときの彼は私が愛した彼ではありませんでした。悪魔が乗り移ったようでした。とても怖かった」

「彼は最初、ライフルを持って私に近づいてきました。そのあと銃に持ち替えて。金切り声をあげながらずっと銃を私に突きつけてたんです」

「私は、お願いだから銃を下ろして、と彼に頼みました。でも彼はノーだと言って、銃を私の顔に突きつけたまま、俺だってお前の頭を吹き飛ばしたくはないさ、と言いました」



オグデン:
「そのうちに彼は、私に銃を突きつけながらベッドに行けと命令しました」

ディクソン副検事:
「彼はあなたと性的関係を持とうとしたんですね?」

「そうです。銃を突きつけて。彼は私をレイプしようと・・・」

スペクターはセックスしようとした。それはとても“不快だった”、と彼女はいう。




「それまで私は彼と性的関係を持ったことはありませんでした」

「で。その夜、あなたは関係を持ったんですね?」

副検事の問いに、彼女は言い にくそうに、
「彼は目的を果たそうとしました」と答えた。

翌朝、彼女が目覚めると、スペクターは何事もなかったように浴室でシャワー を浴びながら歌を口ずさんでいたという。




オグデンがスペクターと別れることにしたのは、旧友に会いに再び彼の屋敷を訪れたあとのことだったという。

「私が帰ろうとすると彼が後ろから付いてきて、“お前はどこにも行けない。俺はウージー(イスラエル製の短機関銃)を持ってる。出ていくなら俺はお前を殺す”と言いました」

私は言いました。「フィル。お願い。またそんなことをしないで。あなたは酔ってるのよ」

出てゆくオグデンをスペクターはウージーを手に追いかけてきた。彼女が車に乗ると、スペクターはエンジンルームに銃弾を浴びせた。

「私は車から飛び出しました」と彼女。「私は走って逃げました。彼はウージーを持ったまま私を追ってきました。ずっと私を罵ってました」

この話を捜査当局にしたことはない、と彼女は証言した。ただ、デビッド・レターマンのレートショーで話したことがある。検察当局がどうやってこの話を知ったのかは分からない。彼女は言った。


この証言のあいだ、スペクターは石のように無表情だった。