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ラナ・クラークソン



事件翌日の報道2:

B級映画の女優ラナ・クラークソン殺害の容疑で逮捕されたポップ界の伝説の男フィル・スペクターは、弁護人としてO.J. シンプソンの弁護を担当したロバート・シャピロを雇った。法曹界の奇才シャピロは昨日、保釈金6万ユーロを支払い、資産1億ドルと言われるポップ界の大金持ちフィル・スペクターをロサンゼルスの留置所から解放した。

部屋数26の大邸宅の一室を血の海にした惨劇の唯一の容疑者として警察はスペクター(62才)を逮捕していたが、今週末には第一級殺人の容疑で裁判所に出頭する予定だ。

警察はロサンゼルス郊外のアルハンブラにあるスペクターの屋敷から凶器と見られる拳銃も発見している。

エキセントリックな行動で知られるポップ界のスターは銃を弄ぶ癖があり、“どちらかと言えば異常”だと自らを評している。
過去には、彼はスティービー・ワンダーやザ・ラモーンズのようなスターにも拳銃を向けたことがある。だがシャピロ弁護士がこの事件を担当するや、数時間もしないうちにスペクターは自宅に戻ることができた。

彼の保釈金は100万ドル、約66万ユーロに決まったが、その約10%の6万ユーロを支払っただけで釈放されたことを警察は認めた。

シャピロ弁護士はマイケル・ジャクソンの代理人でもあり、1995年の有名なO.J. シンプソンのニコール夫人とその男友達の殺人事件の審理でも弁護人を務めている。この事件ではシンプソンは無罪とされた。

ラナは身長6フィート(約183センチ)でマリリン・モンローのファン。殺される数時間前にスペクターに会ったと見られている。2人はその夜を一緒に過ごした後、スペクターの自家用車に乗ってロサンゼルス郊外のお城のようなスペクターの屋敷、ピレニーズ・キャッスルで下りた。だが、そのまま走り去ろうとした運転手は一発の銃声を聞き、慌てて屋敷の警報を鳴らした。事件現場に到着した警官は入り口の部屋の大理石の床に横たわっているラナを発見したという。




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ラナが働いていたクラブ

ハウス・オブ・ブルース

ダン・エイクロイドが共同オーナー


フィル・スペクターの最初の妻、ロニー・スペクターは言う。「私は彼と別れなきゃならなかった。さもなければきっとあそこで死んでいたわ」

02/06/2003 7:00 AM, 事件から3日後。
記事: ダリー・モーデン


フィル・スペクターの前妻、ロニー・スペクターは、女優ラナ・クラークソン殺害の容疑をで逮捕された前夫について声明を発表した。

「彼女と彼女の家族に謹んで哀悼の意を表します」そして彼女は言った「何が起こったのか私には分かりません。私に言えるのはただひとつ。70年代の初め頃に彼と別れたとき、もし別れなければ私はあそこで死ぬことになる。そう思ったことです。そのことを私は20年以上も前に本に書きました。今でもそれは真実だと私は思っています」

ロニー・スペクターは1960年代に「ビー・マイ・ベイビー」などの大ヒットを飛ばした黒人女性トリオ、ザ・ロネッツのリード・シンガーだった。彼らは1968年に結婚したが72年に彼女は家を出、それから2年後に離婚した。


「スペクターは私に銃を向けた」
記事: ブライアン・フリン(ロサンゼルス)

昨夜、エキセントリックな行動で知られる伝説のプロデューサー、スペクターの前恋人だったバーバラ・ニコルスはこう打ち明けた。「彼は変態じみたセックスのあと、私の頭に銃を向けたのよ」

スペクターはいきなり拳銃を引き抜くと恋人を冷笑しながら言った。「俺は君を殺すこともできるんだよ」恐怖に駆られたバーバラは寝室をあちこちと1時間あまりも動き回り、拳銃を下ろすように哀願した。

パラノイアの億万長者は2丁の銃と1丁のピストル、それに小型のデリンジャーを持っていると彼女は言う。デリンジャーはいつも靴の中に隠しているそうだ。

スタンダップ・コメディアンのバーバラはスペクターとの恐怖の暮らしを3カ月ほど送ったあと、彼との関係を絶った。留守番電話に“お前と娘を殺す”というメッセージが残されたあとのことだった。

スペクターはB級映画女優のラナ・クラークソン殺害の容疑で逮捕された後、100万ドルの保釈金を条件に自由の身となった。今は偽名を使って贅沢なリゾート地に潜伏しているようだ。この間、警察はロサンゼルス郊外の彼の屋敷で証拠集めに努めている。






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スペクターがよく行っていたダン・タナクラブ

セレブが集まる西海岸でも有数のクラブだ

ボブ・ディランやエルトン・ジョンも常連だった。



前回の記事の続き



昨夜、バーバラ(54才)は言った。「彼はいつか誰かを殺す。私はいつもそう思ってたわ。殺されるのは私かもしれなかった」

恐怖の日々を思い出しながら彼女は言った。「私たちはセックスをした。なにもかも素晴らしかったわ」

「目覚めたら彼がピストルを両手で交互に弄んでるの。私は部屋の中を歩き回ったわ。だって彼が銃口を私にずっと向けてるんだもの」

「“何をしてるのよ? ”私が聞くと彼はこう答えたわ。“俺は君を殺すことだってできる”。私、殺されるかと思った。恐かったわ。でも、もし彼が私を撃とうとしたら黙ってるものか。そう思ったわ」

「私は部屋の中をぐるぐる回りながら落ち着いて彼に話し続けたの。彼がピストルを下ろすまでね」

バーバラは顔を顰めながらスペクターの異様な性癖を明かした。彼はセックスのときは鬘をはずしてバンダナを付ける。そして大人の玩具を使い、コンドームは常に2枚重ね。勃起させるために男性器に薬を注射するのだという。



スペクターが彼女を見初めたのは確かダン・タナ・クラブだったとバーバラは言 う。ラナ・クラークソンが殺される数時間前にスペクターと訪れたナイトスポッ トだ。

「スペクターが気に入ったのは私の内面なの。だって彼を笑わせることができるから。でも彼はほんとに異常な男だったわ」

「よく部屋のクローゼットに入って、15~20分ぐらいすると鬘(かつら)を取って出てくるの。性的に興奮した状態でね」

「きっとクスリでも打ってたのね。コンドームは彼のパラノイアの一部なの(おそらくエイズへの恐怖から)。それと、バスルームに入るときは扉のところに必ず人を立たせておくのよ」

スペクターは突然理由もなく彼女を殴ったり、広い屋敷に閉じ込めておくこともよくあったとパーバラは言う。「彼はいつも私に言ってたわ。“俺はお前を殺すこともできるんだぞ”って。きっと力を誇示したかったのね。だって私のほうが彼より背が高かったから」

「私には彼がボディガードを雇っていた理由が分かったわ。それはほかの人間を守るためだったの」

「あるクラブだったわ。彼がお客さんたちに向かってこう叫んだの。“お前らはクズだ”って」

バーバラへのラブレターで、彼はいつも自分の暗黒面を自慢げに吹聴していたという。ある手紙にはこう書かれていた。「俺が狂っていて危険で悪い男だという ことを忘れるな」

バーバラは1996年にスペクターを捨てた。彼女は言う。「彼は私の子供たちを脅 したの。それが最後の藁の1本になったわ。堪忍袋の緒が切れたってわけ」

スペクターは今週の月曜に逮捕された。彼の屋敷では身長6フィートのブロンド の美女が遺体で発見されている。