『ハセガワ君、今罪悪感が凄いんでしょ?』
ここまで来て何も格好つける必要も無いので素直に『はい』と答える。
『分かるよ、このバイトはみんな罪悪感との戦いだから。可哀想な主婦を救ってあげれなかった、そんな風に考えてるんでしょ?』
『まあ、そんなようなもんです。』
『でもそんなにハセガワ君が悪いかな?今日は沢山お金使っちゃったけど、このおばさんだってそれなりに毎日楽しんでたんじゃない?罪悪感なんか感じる必要ないと思うけどな。』
いきなりそんな風に言われ、僕が答えに困っていると
『それに、何で他の人では罪悪感を感じないの?何でこのおばさんにだけ感じるの?ハセガワ君の今までの仕事振りを見てたら『お金くれー』て言ってくる会員さんに対しては結構酷い事してるよ。さんざん話長引かせてお金使わせて挙句にお金あげないんだから。』
西田さんが言うようにさっちゃん以外の会員に罪悪感を感じた事は無い。
むしろ懲らしめてやるという気すらあった。
でも
『そんな奴らとさっちゃんは違います。全然違うんです。』
『本当にそうかな?私最初に言わなかった?出会い系サイトに居る人間でまともな人間は居ないって。話し相手が欲しい人も、愛を求めて来る人も、お金を求めて来る人も、その全員が私はまともじゃないと思うよ。皆どこかおかしな人達。それにこのおばさんはハセガワ君に魅かれたんじゃない。年収10億のハンサム社長に魅かれたの。そんな人相手に罪悪感を感じる必要なんて無いんだって。』
違う。
確かに西郷寺は年収10億円のイケメンだ。
でもさっちゃんが西郷寺に魅かれたのはそこじゃない。
さちゃんは西郷寺を通して僕の心と触れ合い、僕の心と通じ合ったのだ。
こんな馬鹿げた話、説明のしようも無いが
本当にそうなのだ。
いや、そうだと信じたい。
だからこそこの結果が悔しくとてつもなく胸が痛むんだ。
『さっちゃんは本当に全然違うんです。さっちゃんだけは。それなのに僕はさっちゃんを救うどころか地獄に叩き落した。正直耐えれないです。これを仕方ないとしてまた普通にメールする事なんて僕には出来ません。すいませんが、、』
僕の言葉を聞いた西田さんは呆れた表情をし、少しの間黙って僕をじっと見つめた後『じゃあ最後のお願い』と言って再び口を開いた。
『辞めたいのは分かったから、辞める前に、今日ハセガワ君が担当するはずだったキャラを少しでいいからやってもらってもいいかな?代わりの人間が来るまでの30分くらいの間でいいから。人気の高いキャラだから今こうして動かしてない時間が勿体無いの。それくらいのお願い聞いてくれるよね?』
既に辞めると決めたバイトの事情なんて僕にはどうでもよく
今すぐにでもこの建物を出たかったのだが
西田さんは今朝から何度も僕のお願いを聞いてくれた
そのお返しで僕は『分かりました』と頷く。
しかし辞める事にかわりは無いので返信も少々雑になるかもしれませんよとだけ付け加えて。
こうして僕は代わりの人間が来るまでの30分間だけ新しいキャラを担当する事になった。
【三菱 隼人】 28歳 容姿端麗の財閥御曹司
これがサクラとして最後に担当するキャラ。
それもたったの30分間。
さっちゃんへの罪悪感でいまだ頭がいっぱいのまま
何を意気込む事も無く
僕はパソコンと向き合い静かに業務を開始した。
西田さんは僕の横から動く気配は無く
1通2通と溜まっていた未返信のメールを処理していく僕を見ながら呟くように言った。
『たかだか30分でも残ってくれてよかった。』
僕は西田さんに視線を移す事もせず
カチャカチャとキーボードを叩きながら『いえ、でも本当に30分だけですよ』と答える。
西田さんは『それで十分よ』と言った後
ぐっと僕の耳元に近づきこう続けた。
『これでようやく【全部】を教えてあげる事ができるから』
ここまで来て何も格好つける必要も無いので素直に『はい』と答える。
『分かるよ、このバイトはみんな罪悪感との戦いだから。可哀想な主婦を救ってあげれなかった、そんな風に考えてるんでしょ?』
『まあ、そんなようなもんです。』
『でもそんなにハセガワ君が悪いかな?今日は沢山お金使っちゃったけど、このおばさんだってそれなりに毎日楽しんでたんじゃない?罪悪感なんか感じる必要ないと思うけどな。』
いきなりそんな風に言われ、僕が答えに困っていると
『それに、何で他の人では罪悪感を感じないの?何でこのおばさんにだけ感じるの?ハセガワ君の今までの仕事振りを見てたら『お金くれー』て言ってくる会員さんに対しては結構酷い事してるよ。さんざん話長引かせてお金使わせて挙句にお金あげないんだから。』
西田さんが言うようにさっちゃん以外の会員に罪悪感を感じた事は無い。
むしろ懲らしめてやるという気すらあった。
でも
『そんな奴らとさっちゃんは違います。全然違うんです。』
『本当にそうかな?私最初に言わなかった?出会い系サイトに居る人間でまともな人間は居ないって。話し相手が欲しい人も、愛を求めて来る人も、お金を求めて来る人も、その全員が私はまともじゃないと思うよ。皆どこかおかしな人達。それにこのおばさんはハセガワ君に魅かれたんじゃない。年収10億のハンサム社長に魅かれたの。そんな人相手に罪悪感を感じる必要なんて無いんだって。』
違う。
確かに西郷寺は年収10億円のイケメンだ。
でもさっちゃんが西郷寺に魅かれたのはそこじゃない。
さちゃんは西郷寺を通して僕の心と触れ合い、僕の心と通じ合ったのだ。
こんな馬鹿げた話、説明のしようも無いが
本当にそうなのだ。
いや、そうだと信じたい。
だからこそこの結果が悔しくとてつもなく胸が痛むんだ。
『さっちゃんは本当に全然違うんです。さっちゃんだけは。それなのに僕はさっちゃんを救うどころか地獄に叩き落した。正直耐えれないです。これを仕方ないとしてまた普通にメールする事なんて僕には出来ません。すいませんが、、』
僕の言葉を聞いた西田さんは呆れた表情をし、少しの間黙って僕をじっと見つめた後『じゃあ最後のお願い』と言って再び口を開いた。
『辞めたいのは分かったから、辞める前に、今日ハセガワ君が担当するはずだったキャラを少しでいいからやってもらってもいいかな?代わりの人間が来るまでの30分くらいの間でいいから。人気の高いキャラだから今こうして動かしてない時間が勿体無いの。それくらいのお願い聞いてくれるよね?』
既に辞めると決めたバイトの事情なんて僕にはどうでもよく
今すぐにでもこの建物を出たかったのだが
西田さんは今朝から何度も僕のお願いを聞いてくれた
そのお返しで僕は『分かりました』と頷く。
しかし辞める事にかわりは無いので返信も少々雑になるかもしれませんよとだけ付け加えて。
こうして僕は代わりの人間が来るまでの30分間だけ新しいキャラを担当する事になった。
【三菱 隼人】 28歳 容姿端麗の財閥御曹司
これがサクラとして最後に担当するキャラ。
それもたったの30分間。
さっちゃんへの罪悪感でいまだ頭がいっぱいのまま
何を意気込む事も無く
僕はパソコンと向き合い静かに業務を開始した。
西田さんは僕の横から動く気配は無く
1通2通と溜まっていた未返信のメールを処理していく僕を見ながら呟くように言った。
『たかだか30分でも残ってくれてよかった。』
僕は西田さんに視線を移す事もせず
カチャカチャとキーボードを叩きながら『いえ、でも本当に30分だけですよ』と答える。
西田さんは『それで十分よ』と言った後
ぐっと僕の耳元に近づきこう続けた。
『これでようやく【全部】を教えてあげる事ができるから』