「エル・シド」 1961年 アメリカ
監督 アンソニー・マン
出演 チャールトン・ヘストン ソフィア・ローレン
ラフ・ヴァローネ ジュヌヴィエーヴ・パージュ
ジョン・フレイザー ゲイリー・レイモンド
ハード・ハットフィールド マッシモ・セラート
ストーリー
狂信的な回教徒ベン・ユーサフは、アフリカからヨーロッパ侵略の機会を窺っていた。
彼はムーア人の諸公を煽動しては、カスティール国境の村を脅かした。
ある小競り合いの折、ムーア人の大公たちはカスティールの若き武将ロドリーゴに捕らえられたが、彼の思いやりから全員釈放された。
感激した大公の1人は彼にエル・シドの称号を贈った。
だが、ムーア人を釈放したことから、彼は王をはじめ恋人シメンからさえ非難を受けた。
そのことでエル・シドと争ったシメンの父ゴルマスは、彼の剣にかかって死んだ。
息をひきとる父から復讐を頼まれたシメンは苦しんだが、父を殺された憎しみは愛を押し流すのだった。
それからのエル・シドは、戦うごとに勝利を勝ち取り勇名を馳せるのだったが、ことごとにシメンが自分をおとし入れようとするのを知り心が重かった。
だが、シメンを思いきれないエル・シドは、王に彼女との結婚を願い出た。
婚儀の日、心を固く閉ざしたままのシメンは夫にすべてを許さないことこそ復讐と、翌朝修道院へこもってしまった。
そのころ、王の急逝により王子サンチョとアルフォンソの間で王位継承の争いが起こった。
やがて王位に就いたアルフォンソは、事の真相を知るエル・シドを追放しようとはかった。
追われたエル・シドは寂しく城を旅立ったが、彼の偉大さを知ったシメンは後を追った。
それから数年、エル・シドは再び勇将として返り咲いた。
一方、バレンシアでは、ベン・ユーサフが侵略に余念がなくアルフォンソ王にも挑戦してきた。
旗色の悪くなった王は、エル・シドを呼び戻した。
ベン・ユーサフの率いる一隊とエル・シドの軍との戦闘が始まった。
寸評
僕はスペインの歴史に詳しくないし、ましてや救国の英雄とされるエル・シドことロドリーゴ・ディアス・ビバールと言う人物の存在など全く知らないでいた。
この映画はそのエル・シドの半生を描いた歴史絵巻である。
カスティーリャ王国の若き武将であったロドリーゴは、イベリア半島に攻め込んできたムーア人との戦いの末に捕らえらえた敵軍の首長ムータミンとカディアを、捕虜として王に引き渡さず生かして逃がす。
ムータミンはロドリーゴの人物に惚れこみ彼に協力するようになるが、一方のカディアはムーア人の王ユサフに従うようになる。
カスティーリャ王国はキリスト教国家で、ムーア人は北西アフリカのイスラム教徒であるから、紛争は侵略戦争でもあり宗教戦争でもあったのだろう。
捕虜を逃がしたためにロドリーゴは反逆者とみなされるのだが処刑されることはない。
カスティーリャ王国の最高戦士であるゴルマス伯爵がロドリーゴの父親を公の場で侮辱したので、ロドリーゴはゴルマス伯爵を殺害することになってしまうのだが、それでもロドリーゴは捕らえられて処刑されない。
この辺の事情は分かったようで分からないもどかしさが僕には生じた。
ゴルマス伯爵がロドリーゴの愛するシメンの父親であったことでロドリーゴとシメンの関係がドラマチックに描かれる。
父親を殺されたことで、愛していたロドリーゴを自分に気のあるオルドニエス伯爵を使って殺そうとまでする変節はストーリー的で伝わってくるものはない。
最終的にオルドニエスはロドリーゴに協力するようになり、捕らえられてユサフによって処刑される運命をたどる。
たぶんオルドニエスはユサフと争って敗北して捕らえられ拷問を受けたと思われるのだが、これもストーリーを示すような描き方で、ロドリーゴと和解したかと思うといきなり処刑される場面が出てきてフェードアウトしてしまう。
ムーア人がスペイン征服を目論んで攻め込んできているのだが、両軍が激突する場面は最後まで待たされる。
戦争スペクタクルとしては物足りない描き方になっている。
カスティーリャ王国のフェルナンド王が死ぬと後継者争いが起り、弟のアルフォンソ王子が姉のウラカ王女と結託し、兄であるサンチョ王を暗殺して即位することが描かれるが、この出来事は史実のようだ。
ウラカ王女がロドリーゴに好意を持っていたように感じとれるのだが、直接的に描かれているわけではない。
描けば物語としては面白くなっただろう。
大軍がぶつかり合う戦争場面は最後になってやっとバレンシアの攻防で描かれる。
浜辺での戦闘では陣形を組んだ弓隊の攻撃があるものの、あとは両軍分け入って入り乱れての乱闘となる。
当時の本当の戦いはこのようなものだったのかもしれない。
映画では死んだと思われたエル・シドが現れたことでムーア人は恐れおののき退却を始め、ユサフ王も馬に踏みつけられる形で絶命しカスティーリャ王国は侵略を免れる。
エル・シドは瀕死の状態で、辛うじて馬上の姿を器具によって保っているのだが、カスティーリャ兵士は彼の姿を見て士気を高め、ムーア人は恐れをなしてしまう。
海岸を走り抜けるラストシーンはエル・シド伝説を感じさせるものとなっていて感動的だ。
ロドリーゴは王に意見もするし、慈悲深い人でもあったので人々の尊敬を受けたのだろうが、救国の英雄として彼のもとに人々が参集する過程はもう少し感動的であっても良かったような気がする。









