以前にアガサ・クリスティ原作の『オリエント急行殺人事件』がリメイクされていましたが、先日から今度は『ナイル殺人事件』がリメイクされて公開されているようです。
テレビドラマ版でデビット・スーシェ演じるエルキュール・ポワロ(近年の出版物などではポアロと表記するのが大勢だそうですが)が、今までで最も原作のイメージに近いと言われているようです。
ですが、わたしが一番好きなのはピーター・ユスチノフ版です。
デビッド・スーシェ版では『ナイルに死す』というタイトルでした。このタイトルの付け方は原作のタイトルに忠実な訳ということでしょう。
ピーター・ユスチノフ演じる映画版では『ナイルに死す』ではエンターテインメント性に欠けると判断したのか『ナイル殺人事件』に変更されました。
1978年の公開です。
時を経て2022年公開となった今回の作品は、タイトルを引き継いで?『ナイル殺人事件』にしたようです。
観客の層があまり被らないからこれでいいと思ったのかもしれません。
新しい『ナイル殺人事件』のキャストを見ると、若い!と思わず呻ります。
それと、出演者の顔立ちがイギリスっぽくない。こういうのも時代の流れという感じですね。
で、話をまた元に戻してピーター・ユスチノフ演じるエルキュール・ポワロは、わたしの持っているポワロのイメージである「底意地が悪く皮肉屋で無礼で自信過剰」というのによくマッチしているところが好きなのです。
アガサ・クリスティが描いポワロのシリーズに出てくる犯人とその周辺の人たちは、とにかく「金に群がる人々」「不満を始終口にしながらも金のために縛られている人」「誰かをかのことを早く死んで欲しいと願ってやまない人」「金のためなら殺人を計画する人」そういう人たちばかりが砂糖に群がるアリのように登場しますから、その中で容疑者を選り分けて丁々発止のやりとりをするにはポワロのようなアクの強い神経の図太さを持ったキャラクターでないと張り合えないのだろうと思います。
ピーター・ユスチノフのエルキュール・ポワロは、当たり役だったと言えるのでしょう。1978年の『ナイル殺人事件』から1988年までの間に『地中海殺人事件』『死海殺人事件』の映画3本とテレビ用長編3本に出ています。わたし、これらの日本語吹き替え版を全部見た覚えがあるのですが、いかんせん古いので、今では放送されることはほぼないようです。
そしてさらに話は連鎖して、ピーター・ユスチノフ版の『ナイル殺人事件』が日本で上映されるときに打たれたTVCMには、日本用のイメージソングが使われ、その曲が映画自体のエンディングにも使われました。
この曲が使われたのは日本だけなので、その後のビデオソフトなどにも収録され得ておらず、Amazonprimevideoのチャンネルで見られる版でも、オリジナル版で使われた静かな地味なエンディングテーマが流れます。
でも、ピーター・ユスチノフ版『ナイル殺人事件』のヒットを担った一翼はこの曲だったと言えると思います。この曲こそが、殺人事件をワクワクする推理ドラマと客に思わせたのだろうと思っています。