近年の日本語指導では、「がてら」と「ついでに」は、ほぼ同じ意味であると説明されるようです。
ただし、「がてら」のほうは、「移動を伴わない文章では使わない」といったような制約があるということです。
例えば「散歩がてら買い物に行く」というようなことです。
「がてら」は、あまり使われなくなってきたことばというのもあると思いますが、「ついでに」とは明らかに意味が違う使われ方をする場面があったように思います。
試しに、こういう文があった場合、
「X君を合コンに誘うついでにY君に声を掛けた」
Y君ほうは「ついでなのか」という気分にならないでしょうか。
国語辞書でも「ついで」の意味には「主な目的に、あることを追加する」という解説が書かれています。なので、この「追加」の対象になったものは、感覚的に「付け足し」という感じもするので、必ずというわけではありませんが、「追加の対象」になったものの価値は低いということが感じとして受け取れるのだと思います。
ですが、この文章を「がてら」で単純に言い換えることは出来ません。移動が伴わないからのようです。そこで、移動を文章ないに足してみます。
「X君を誘いがてらY君に声を掛けた」
この文章では、「誘いに行く」という移動が足されたので、文章として違和感は少ないと思います。
そして、この文章の書き方だと、「X君を誘うことより、Y君に声を掛ける」ことのほうが大きな目的のようにも感じられます。それもそのはずで、昔は「がてら」を使った文章では、前件より後件に示されたことのほうが主たる目的だったからだそうです。
日本語を勉強する外国人のかたは、課題で「ついでに」と「がてら」で例文を書くようなことがあるようです。
そのような課題について日本人に質問をして回答を得ようと思う学習者がいるのですが、そのときにこういう、ある意味マニアックな解説をすると、ほかの日本人に、そんな話は聞いたことがないというように叱られたりします。指導者向けの解説に、ほぼ同じ意味だと書いてあるのですから、当然かも知れませんが、これらの解説は私が考えたのではなく、国語学者の意見の相違を私が読み比べて書いただけなのです。
ちなみに、「がてら」は、近年の小型辞書では掲載されていません。ほぼ死語になったということかも知れません。
話はそれますが、似たようなことばの意味の違いを考えるとき、ことばでは言い表せなくても違いを感じることが出来る方法は、人間を対象にして文を作ってみるといいように思います。
「意外」と「案外」を使って文を作ってみます。
「彼の料理は意外とおいしい」
「彼の料理は案外おいしい」
どうでしょうか。
さらに、「彼」を読み手である「あなた」に置き換えたらどんな気分がするでしょうか。
「案外」のほうは嫌な気分がしないでしょうか。
これは、「案」ということばに、考えるとか思考するという意味が入っているからだそうです。
「案外おいしい」と言われると、「以前から恐らく彼の料理の腕はたいしたことがないと考えていた」、というような侮辱的な感じを受け取られる可能性があるのです。
対して「意外」には、思考の伴わない単純な驚きが籠もっているため、あまりネガティブな感じを受けないようです。