残業代の未払い | 残業代請求の弁護士メモ

残業代請求の弁護士メモ

残業代請求をはじめとする法律問題についてのメモ書きです。

中小企業の中には、残業代を従業員に支払っていない会社もあります。
理由は様々です。管理職だから残業代は発生しないというものであったり、基本給に含まれると考える経営者もいるようです。
ただし、これらの考えが裁判所でも通用するとは限らないです。
たとえば下記のように裁判所は考えることが多いです。

(1) 前記争いのない事実によれば,原告は,平成9年2月12日,被告との
間で労働契約を締結し,以後,被告の従業員として勤務しているもので
あり,別表1の「時間外労働時間(U)」欄(別表2の「時間外労働時間」欄
と同一)記載のとおりの法定時間外労働をしたものである。
(2) 乙5によれば,平成5年3月29日に労働基準監督署に届け出られた
被告の賃金規定5条は,被告が支払う基準外賃金には,職責手当(営
業手当・現場手当・業務推進手当)のほかに割増賃金がある旨規定し,
同23条は,割増賃金について,各割増率に基づいた計算式について規
定し,同24条1項は,「職責手当は,従業員各々が任せられた職務に対
する責任を認識し,その職務を工夫遂行しながら各人の潜在能力発揮
を期待するとともに,やる気を起こさせることを目的とする。」と規定し,
原告が該当する営業,工事以外の業務に携わる従業員に関して,同条
4項1号は,「営業,工事以外の業務に携わる従業員には,その職務と
遂行能力に基づいて業務推進手当を支給する。」と,同項4号は,「前各
号に該当しない従業員については固定残業手当と業務推進手当でもっ
てこれを構成し,固定残業手当部分を越える時間外労働については,変
動残業手当として次の計算により支給する。」とそれぞれ規定し,変動
残業手当について,「基準内賃金÷1か月平均所定労働時間(188)×
1.25×時間外労働時間数-固定残業手当」とする旨の計算式が掲記
されていることが認められる。
この賃金規定の定め方からすれば,各割増率に基づいて計算された
割増賃金が支給されるほか,従業員各々が任せられた職務に対する責
任を認識し,その職務を工夫遂行しながら各人の潜在能力発揮を期待
するとともに,やる気を起こさせることを目的として支給される職責手当
の一つとして,職務と遂行能力に基づいて業務推進手当が支給されるも
のとされ,その額の計算については,時間外労働時間数に基づいて計
算した額から固定残業手当なるものを控除した変動残業手当なる額が
業務推進手当の額となり,固定残業手当と業務推進手当でもって職責手当が構成されると規定しているかのようにみえる。
しかし,割増賃金と業務推進手当あるいは変動残業手当とはいかな
る関係にあるのか,固定残業手当とは何かについては,これを明確にし
た規定はない。
この点につき,被告は,業務推進手当は,被告の賃金規定の24条に
明記されているとおり,被告においては,営業担当従業員及び工事担当
従業員以外の従業員に支払われるもので,1か月45時間までの残業手
当に相当するものである旨主張し,乙13にはこれに沿った記載がある。
しかし,前記のとおり,賃金規定24条4項4号は,「固定残業手当と業
務推進手当でもってこれを構成し,固定残業手当部分を越える時間外
労働については,変動残業手当として次の計算により支給する。」と規
定しているのであるから,その文言上は,固定残業手当と業務推進手当
は併給される関係にあり,固定残業手当を超える時間外労働について
変動残業手当が支払われるのであるから,変動残業手当が業務推進
手当に相当するものとしか解しようがない。
また,前記のとおり,変動残業手当の計算式が記載された業務推進
手当に関する規定とは別に,各割増率ごとの計算式が示された割増賃
金に関する規定が置かれているのであるから,固定残業手当が業務推
進手当に相当し,固定残業手当を超える時間外労働については,所定
の計算式による変動残業手当が支給されるが,それ以外には別途規定
されている各割増率に基づいた割増賃金が支払われることはないと解
するに足りる根拠も存しない。

残業代の支払いについては本当に注意が必要な分野です。残業代請求を扱う弁護士に相談したほうが良い場合も多いでしょう。弁護士というのは不倫の裁判や逮捕された場合だけに活躍するわけではないということです。