北朝鮮メディア、アパート崩壊を報道
2014 年 5 月 19 日  ウォールストリートジャーナル
平壌市内アパート崩壊犠牲者の家族(17日) Associated Press
 【ソウル】北朝鮮は18日、平壌市内のアパートが事故で崩壊し、死傷者が出たと明らかにした。数百人が死亡した可能性がある。

 国営朝鮮中央通信がこうした災害を報じるのは異例。それによると、事故は5月13日に発生し、「人命被害」が出た。ただ、死者や負傷者の具体的な数は報じていない。韓国政府当局者は、この建物は最近建設された23階建てのアパートで、100世帯近くが住んでいたとみている。

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 北朝鮮は救助作業は17日に終了したとしている。同通信によれば、何人かの高官が遺族や市民に謝罪し、金正恩第1書記は事故への懸念から「一晩中起きていた」という。同通信が配信した写真では、大勢集まった人々の前で深く頭を下げる当局者が写っていた。このニュースは北朝鮮の主要紙にも掲載された。

 自国のネガティブなニュースを公に報じるのは北朝鮮では極めてまれだ。当局者らが国民の前で謝罪したのは、事故が口コミで広まり外国メディアによって報じられることの影響を懸念したものとみられる。同国でもここ数年携帯電話の利用が増えており、国家が情報の流布を制限するのは難しくなっている。

 2012年4月、北朝鮮は衛星を軌道に乗せるのに失敗したことを認めた。以前にも失敗していたが、同国は成功したとしていた。脱北者らは、死者を伴う事故は頻繁に起きているが、国営メディアが報じることはないと述べている。

政府高官が平壌市内のアパート崩壊の犠牲者家族に謝罪した(17日) AP
 外向けの飾り棚のような役割を果たしている平壌での建物崩壊は、北朝鮮が示そうとしている経済発展のイメージに打撃を与えることにもなる。2年半前に金正恩氏が権力の座に就いてから、同国の建設プロジェクトは住宅も含めて、ペースを加速させている。

 今回の事故の原因は不明だが、同通信は国内保安機関のトップは建設工事に「手抜き」があったことを認めたとしている。北朝鮮は建設プロジェクトで兵士を使うことも多く、プロパガンダ目的から監督者が予定より早く完成させることが期待されている。

 事故はまた、国民の生活を心に懸けている指導者という国営メディアが伝える金正恩氏のイメージにも打撃になる。事故の影響を軽減させるためか、このニュースは政府が「人々の利益と利便性を優先させる」ことを目指しているとの文章で始まっており、救助作業を指示する上で同氏が積極的な役割を果たしていると指摘した。

 北朝鮮の国営メディアは自国についてはほとんど全て明るい話だけを報じるが、これとは対照的に、韓国の災難については必ず報じている。アナリストは、これは政権への支持を高めるとともに、韓国の方が人々の生活は豊かだとの見方に反論するためだと述べている。同メディアはここ数週間、300人以上が死亡した韓国客船の沈没事故について多くのニュースを伝えている。

 この事故を契機に韓国では、不十分な安全対策への批判が高まり、政府への抗議も強まっている。朴槿恵大統領は19日、国民向けの演説を行う予定で、この中では災害対策の改善策が打ち出されるとみられている。

 韓国統一省は、平壌の事故では「相当数の」死傷者が出た公算が大だ」としている。ある当局者は「建物の構造や設計から見て、崩壊した建物には各階に4世帯、合わせて92世帯が入っていたと推測される」と語った。


少しでもまともな国になる兆候ならいいのですが、死者の数も報道しないなんて・・・