マイリトル ~傷つかない生き物~
③
「今、私の目の前にある この地図は、紀元前700年頃の物です。」
教授は嬉しそうに語っている。
(その地図は、俺が見つけた物だけどな)
淳一は、心の中でそう呟きながら、教授の話を聞き流しながら見つめていた。 ブラックファラオが、わずかな期間ではあるが、エジプトを統治していた時の地図である。
考古学の分野から見れば、そんなに珍しい物ではない。何故なら、実際に書かれたのは 19世紀―エジプト文明礼讃時代に書かれたものである。
淳一は、とある小さな古書博物館で見つけ、
何の気なしに教授に見せた。 しかし、教授は異常なくらいに食いついた。淳一には、教授がメジャーなエジプト研究では、他の考古学者に勝てないので、壮大なエジプト文明の中で、わずか100年にも満たないこの時代に、興味を持っただけだと思っていた。
教授は、スイス生まれらしいが、英語も日本語もペラペラである。
淳一が、考古学に興味を持ったのは、少なくとも この教授の影響がある。