ボブとニックの旅物語
シャコバサボテン ⑥
「あいつらは、シャコの化け物じゃ。村に入った人間を食っとる。甲殻類じゃけ、こんな雪でも寒くない。黒い目で獲物をしっかり見つめて、しっぽのトゲで捕えてムシャムシャと やるわけじゃ。」
「なぜ ブラジルで雪が降ってる?」
ニックが言うと
「さあな、獲物をかく乱させておびき寄せたかったのじゃろう。奴らは、人間を食べられるとなると、美しく変身出来る。しかし食べる時も普段の時も あの醜い生き物じゃ。
今ある自分を受けいれられない 哀れな状態じゃ。まあ おぬしらは早く気付いて運が良かったのう、うはは」
ボブは震えながら、ズボンのジッパーをなかなか閉められずに、
「おい、い、行こう、早く逃げよう」
「ああ」
ボブは早足で逃げ出した。
ニックも後を追った。そして、
振り返った。
そこには、村も、汚いじじいもいなかった。
ただ ブラジル原産の花[シャコバサボテン](一時の美)が、一輪咲いていた。