The Last of Us Part II その2 | 誰がために金は減る

誰がために金は減る

とある人生の一端

 

“私たちの最後”を見届けました。疲れた。心が疲れました。
ストーリーはヘビーですし、バトルは神経をすり減らすので、疲労が急速に溜まるのですよ。
30時間弱でエンディングに到達したのですけれど、10時間そこそこプレイしたところで「そろそろ終盤か?」などと思っていました。体感的には2~3倍の濃度で楽しめるゲームです。

プレイヤーと呼応するように、画面内のエリーがまた辛そうなんですよ。
でも途中で投げ出す気には全くならないくらいのめり込み、ある時から「最後まで見届けねば」という使命感が芽生えました。

前回、エリーの復讐心に気分が付いていけない、というようなことを申し上げたのですが、ゲームを進めると次第に心境の変化がありました。
復讐心とは違うものの、このまま黙ってはおけないという熱い気持ちが沸々と湧き出てくるのですよ。エリーはこれより遥かに強い想いを抱いて、ジャクソンを発ったのだと気付かされました。
 

 

主なプレイアブルキャラクターが2人いまして、1人目は言わずもがな、前作でも活躍したエリー。2人目はアビーという女性です。
この2人は敵対関係にあり、それぞれの立場の視点で物語りが描かれる構図になっています。

正直なところ、当初はアビーに共感できる気がしませんでした。だって前作からすでにエリーたちに親しみがあり、その立場に共感してしまっているわけですから、その敵方に、あんなことをしでかした相手にどう理解を示せと言うのでしょう。
そんなキャラの目的を達成させなければいけない構成に絶望感すらありました。

ところがその出自が判明した時、その気持ちが少しブレちゃったのですよ。あの人の関係者か・・・って。これは前作のプレイヤーじゃないと気持ちが解らないんじゃないかなあ。
そこを掘り下げてきたかと天を仰ぎました。他のどんな事情があってもエリーたちの味方でいただろうに、これは恨まれても仕方がないな、と思ってしまったのです。
好感度が最底辺から始まった登場人物に対して、少しでも感情移入してしまった時点でまんまとしてやられたと認めざるを得ません。

それにアビーパートは前作のジョエルと重なる部分があって、色々と考えさせられました。
これは言ってもいいと思う範囲で例を挙げると、エリーがスピードタイプなら、アビーはパワータイプなので、ジョエルと戦闘スタイルが近いのはアビーです。
あと前作で何度となく出てきた梯子はアビーパートのみ登場します。ちょっとだけですけれどね。(ついでに言うと、アビーパートの方が苦戦する場面が多かったです)

やはりエリーの味方でありたいですが、アビーも気の毒な境遇だとは思いましたよ。
終盤などはエリー以上に過酷な運命を背負わされているような気さえしました。もしアビーとその周辺の人たちの掘り下げがもっと深かったら、ワタシは精神をやられて、しばらく旅に出たい気分になっていたのではないでしょうか。
 

 

サブキャラの中ではディーナが好きです。物事を俯瞰で見ることができ、エリーの良き理解者になって寄り添える人物ですね。
やや余談ながら、ジョエルの弟であるトミーの描かれ方が少し意外だったのですが、よくよく思い返せば前作でも短気なところを見せていたので、普段は温厚な一方で、感情に流されやすい人なのかも。で、後で考えを改めて反省するタイプな気がします。ファイアフライを抜けたのもそんな性格故かもと妄想してました。

ストーリーに関しては様々な解釈ができる結末だったこともあって、ネタバレを気にせず、いつかどこかで思う存分にお話したいですね。
他に言えることがあるとするなら、ワタシは少しでも温かい解釈をして、この物語りを閉じたいです。
 

 

ゲーム部分に目を向けますと、前作よりAIがかなり賢くなっていて、同行する仲間がこちらを妨害しないどころか、頼もしくなっていました。
それから登場人物一人一人に名前が付けられていて、戦場で倒れたモブ兵士に、別のモブ兵士が名前を呼びながら寄り添うシーンを度々目にしました。どんな登場人物にも人生があることを伺わせます。

前作は感染者のストーカーがかなり地味な存在だったのですが、本作は要所要所で登場します。ボス格の感染者を除くと、ストーカーが最も厄介でした。
味方が賢くなった分、ちゃんと敵も手強くなっていますよ。また、前作ほど感染者が火に弱くなくて、ビン(レンガ)&火炎瓶のコンボで一網打尽にするのが難しくなりました。

全体的に前作より難しくなった印象がありますけれど、難易度を低くして、アシスト機能を活用すれば、そのハードルはかなり下げられます。
前作と違ってイベント戦も含めて、全ての射撃でオートエイムが利用できるので、エイムで苦労する場面が無いのが非常に助かりますね。

武器にもいくつか変更や追加がありまして、特に大きいのがサイレンサーが追加され、しかもクラフトできるようになったこと。
銃火器は大きな音を出してしまうため、なるべくステルスで突破したい本作では使いにくく、前作では弓矢が欠かせませんでした。サイレンサーが追加された本作では、静かに銃撃できるようになり、実際に最も活躍した武器になりましたね。
反面、弓矢の価値がやや下がった感はありますけれど、物資が少ない設定でプレイした場合は、矢を再利用できる分、アドバンテージがあるのではないでしょうか。サイレンサーは耐久力が低いという弱点がありますからね。

バトルはメインメニューから何度でも遊べるようになりまして、ストーリーを進めていた時は慎重になり過ぎてステルスばっかりになっていたので、ここで派手に銃撃戦をしたり、爆弾系や火炎瓶だけで戦ったり、近接武器だけで戦ったり、挑戦的な戦法を試せます。終盤は武器も揃っているので特に楽しいです。
武器やキャラの強化だったり、手持ちの素材はそれなりの状態でスタートするのですが、ここもある程度は任意に設定できたらより良かったと思います。
 

 

これはワタシの思い込みかもしれませんが、エリーは圧倒的に有利な状況から一瞬の隙を突かれて相手の反撃を許してしまう場面が何度かあるのです。
ジョエルが主人公である前作ではそのような場面はあまり見られなかった(逆のパターンなら何度もありました)と記憶しているのですけれど、これは命のやり取りに対するエリーの甘さや迷いを示しているのかもしれません。

そもそもエリーは標的(と外道や感染者)以外の命までは奪いたくないというのが本音だと思うので、自分とエリーの身を守るためには手段を選ぶつもりのない前作のジョエルとはスタンスが異なるのでしょう。
むしろ、エリーに甘さや迷いが見て取れるところは、優しさと言い換えることもできて、それは救いなんじゃないかと思うのです。
 

 

あのあまりに見事な前作の物語りのその先は、とても受け入れがたく、ともすれば、見たくなかったと思ってしまうような続きでした。
ですが、ただ辛いだけの物語りでは決してないです。願っていた未来とは違いましたが、狂おしいほどの愛を見せてもらいました。

美しいグラフィックに、素材を更に活かす演出。恐ろしいほどの作り込み。やや独特な操作性を補って余りあるサポート機能。純粋なゲームとしての楽しさは申し分なく、ストーリーだけが少し引っ掛かります。
でも、ワタシはエリーやジョエルのことがこんなにも好きだったのだと気付かされたのですよね。些細なことですけれど、とても大切な気付きだと思うのです。

『ラスアス2』単体でもストーリーに付いていけないということはないと思いますが、前作をプレイすることを強くおすすめします。前作を知っているかどうかで、起きてしまった結果の受け取り方がまるで違うはずです。
もし前作を知らずに『ラスアス2』をプレイしたという人がいたら、是非とも前作の偏屈で不器用で、鬼神となって雄々しく戦ったジョエルをご覧になってほしい。