『サニーサイドエッグ』荻原 浩 | 誰がために金は減る

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とある人生の一端

前作『ハードボイルド・エッグ』の続編です。
個人的には待望の続編でした。


この小説はたいそう笑わせてもらったんですよ。
『ハードボイルド・エッグ』を読んで以降、荻原浩の作品は片っ端から読ませて頂きました。


アタシはこれほど声を上げて笑った小説を他に知りません。
誰だったか「小説で笑わせることは、泣かせることよりずっと難しい」という趣旨の発言を聞いて、とても納得したのですが、泣ける小説は枚挙に暇がないほど思い当たるのに、笑える小説は非常に稀有な存在であることに気付きます。


本作も前作に負けず劣らずの快作。
探偵業を営む、最上俊平の理想は常に、レイモンド・チャンドラーが生み出したハードボイルド小説の探偵、フィリップ・マーロウだけど、現実は凶悪事件とは掛け離れた、迷子のペット探しがメインのしがない町探偵です。


今回は美人の依頼人による行方不明のロシアンブルーの保護。
そして、前作で痛い目にあった助手に新メンバーが加入。


かと思ったら時期を同じくして、またしてもロシアンブルー捜索の依頼が入る。
依頼人は如何にもな感じの怖ーいおじさんたち。


その怖いおじさんたちは3日以内に連れて来いと脅してくるし、一向にロシアンブルーは見付からないし、近頃世間を賑わせている凶悪事件の犯人に間違われて誤認逮捕されちゃうし、助手の様子がなんだかおかしい。


実際にこんな目にあったら、気が狂いそうになるところを最上俊平は実に勇ましく、ユーモアたっぷりに物語りを紡いでいきます。
前作で最上俊平に心惹かれた読者は、この『サニーサイドエッグ』も胸を熱くすること間違いなし。
勿論、全くの予備知識0でも何の問題もありませんので、こちらから読んでも全然OKです。


本人は不本意ながらも、ペット捜索の腕と知識、経験は前作より格段にパワーアップしていて、板に付いてきていますよ。
理想とは異なる現実に腐ることなく、かと言ってそれを諦めることなくフィリップ・マーロウを追い続けている姿が泣かせます。


時には貧乏くじと知りながらも、臆することなくそれを引き抜く。
もっと賢くズルく生きることもできるのに、欲しくて堪らないであろう金銭より、一文の得にもならない情を取る。


強く、逞しく、貧相で、情けなくて、優しく、かっこいい、最上俊平の活劇第2弾は、またしてもアタシの心を掴んで離しませんでした。