蝉の声。

アスファルトから出て来る陽炎がハッキリと目に映る。

場所は広島。
とある鑑別所。

罪は傷害
法律や世間は『少年』と見ている彼は15歳。
晴れて解放された。


右を見て左を見て…
空を見上げた。

ハッキリと感じる喜び勇みの解放は『外は外で不自由なんだな』と感じる第一歩。

静かに進む。
速度が上がる
駆け出す。
焦りを隠せない程の全力疾走は昔に見た景色を取り戻そうとする…まさにソレ。
タクシーに乗らない
電車にも乗らない
バスは…勇気がない。


16:30ジャストの釈放から2時間が経過している。

たどり着いた場所は教会。事前に知らされていなかった教会の人間には突然の訪問者である。

庭先で数人の子供達と遊んでいる一人の女性に対し…

『あのぅ、ただいま…』。
声を出してみた。

振り返る女性はシワ一本一本が素敵な、そしてそれまでの苦労を想像させる…シスター。

何も言わず
両手を広げる。
満面の微笑みで。

両の手の中に静かに歩きだす少年。


その少年、捨て子也。