さて、盗み聞きをしたヤンキー兄やんは、2日後、三条夫人の元にやって来ると、文句を言い始めました。「お袋、雁乃のこと、しっかり見ておいてくれないと困るぜ。そりゃ夕霧はお勉強は出来るけど、身内同士の結婚だと、家の繁栄につながらないやん?光にクレームつけられたらどうするよ?」


「そんな、今までほったらかしにしてた癖に。私も知らないわよ。メイドの噂話を真に受けるんじゃありませんよ」

「全く、どうすれば、傷物にせずに済むのやら。困ったな」と、ブツブツ言いながら、帰って行きました。



その後、やって来たのは夕霧くんです。雁乃ちゃんに会えないかな?と能天気にやって来ましたが、「ちょっと、お祖母ちゃんの所にいらっしゃい」と呼び出されました。

「あなたと雁乃のことで、息子が怒ってるの。雁乃に会わせる訳にはいかないわ。ごめんなさいね」

「そんな...」夕霧くんはショックを受けて、屋敷内の自分の部屋に引き上げました。いつもは開いている雁乃ちゃんの部屋に鍵が掛かってます。



と、扉の向こうから、「空を飛ぶ雁も、私みたいに寂しいのかな...」と言う声が聞こえました。皮肉にも、二人を引き裂こうと言うヤンキー兄やんの言動が、ネンネの雁乃ちゃんの恋心を目覚めさせてしまったようです。



「雁乃ちゃん?ここを開けて」夕霧くんは声を潜めて呼び掛けますが、雁乃ちゃんは独り言を聞かれたのも恥ずかしかったので、扉を開けることは出来ませんでした。



さて、ヤンキー兄やんは、冷泉帝に嫁がせていた娘の里帰りに乗じて、雁乃ちゃんを自宅に移すことにしました。秋好ちゃんに敗れたお姉ちゃんの話し相手と言う名目です。



お迎えの日、乳母の手引きで、二人は久しぶりに会うことが出来ました。「おじ様に嫌われるのは怖いけど、雁乃ちゃんを諦めるなんて出来ない!雁乃のことが好きだ!」夕霧くん、男らしく告白です。



「こんなことなら、自由に会えた時にもっと会っておけば良かったよ」「ホント、私もそう思うわ」



「てことは、僕のこと好き?」この辺り、夕霧くんもまだまだです。光くんならもうキスして、胸くらいは揉んでます。

雁乃ちゃんもこっくりうなずきます。ええ、中学生の恋愛です。



日も暮れてそろそろ、ヤンキー兄やんが来る頃です。「姫様~、どちらですか~?」屋敷内が騒がしくなって来ます。

「構うものか」夕霧くん、雁乃ちゃんをしっかり抱き締めて放しません。遂にメイドの一人が隠れている小さな恋人達を発見します。



メイドは「あら嫌だ、姫様のお相手が六位の浅緑の方なんて。身の程を知りなさいな」


夕霧くん、日頃気にしていることを言われて、ショックのあまり、雁乃ちゃんを抱く腕を緩めてしまいます。お坊ちゃん育ちなので、打たれ弱いのです。



「君を想って血の涙に染まった服を浅緑と言うなんて」「こんな不幸に見舞われるなんて、どんな想いで染まった服なのかしら」

別に服は、紅く染まったりはしていないのですが、中学生ながらに、歌を詠み交わして、あわれ、恋人達は引き裂かれたのでした。



【教訓】夕霧くん、遂に勇気を出して告白です。男ってヤツは、追い詰められないと思いを口に出来ないようです。告白は難しいですよね。光くんや、夕霧くんのようにイケメンなら、自信持って言えるかも知れませんが...。顔の見えない出会い系では当たって砕けるしかありません。それを気が多いとは言わないで~。