<注> この読み物は『記憶の音色』収録と同じものです。
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猫妖精(ケットシー)について
人間世界の並行世界であるアヨガンには猫妖精(ケットシー)が暮らしている。
あるイベントで遭遇した、こびん屋シロと名乗る彼の話によれば。
人間界の猫は、死ぬと猫妖精としてアヨガンに転生をする。
そしてしばらくアヨガンで暮らし、また人間界の猫に転生するという。
転生の時には人間界の猫、猫妖精、お互いの記憶はほぼ消えてしまうらしい。
(まれに記憶の断片をおぼえている場合もあるようだ)
彼の工房やその周囲は猫妖精たちにとって居心地が良いらしく、いつも何体かが、まるでそこに暮らす飼い猫であるかのように自由気ままに過ごしているそうだ。
その姿は様々であり、人間界の猫の姿の時もあれば、二足歩行をする人形のような姿の時もあり、また、光球のような姿でふよふよと浮かんでいるときもあるという。
また、転生だけではなく、猫妖精として人間に干渉することもある。
選ばれた猫妖精は人間界に向かい、主に夢の中に干渉して導きの手助けをする。
(たとえば日本の場合は年末年始、お盆といった時期が多いらしい)
ごくごく稀にではあるが、こびん屋が人間界に行商をするとき、アイテムに宿り人間界に向かうこともあるそうだ。
「人間界での寓話や言い伝えではどうかはよくわからないが、アヨガンではそういうことになっている」
いま目の前の机にある「猫妖精のランタン」という“こびん”を買ったとき、彼はこのような話をしてくれた。