最近は自然災害が多いせいか、以前よりも国民の防災意識が高まっていると感じます。
防災グッズを詰め込んだ非常持ち出し袋なんかもよく売れているそうです。
キャンピングカーでの一年旅を計画しているときに気になったのは、知らない土地で自然災害に会い、動けなくなったらどうするかということでした。
特に平成18年に豪雪によって福井県で自動車1500台が立ち往生し、死者を出した件が念頭にありました。
地震や大噴火、津波などもありますが、それらの瞬間被害を避けるにはキャンピングカーに翼でもつけて離陸するしかなく、それよりもそれらの災害によって孤立した場合に、救助が来るまで生き残れるかということが気になっていました。
そこで防災グッズを持っていくことを検討したのですが、よくよく見れば防災グッズと言われるもののほとんどはすでに旅の持ち物リストに入っているものばかりで、それもその量は持ち出し袋の比ではありません。
食料は2週間分持っていますし、衣服は全季節用を積んでいます。薬なども自宅と同じ量持っていますし、リネン類も十分。情報収集のためのテレビやPCから、布団やドライヤー、洗剤、爪切りといったこまごました生活雑貨まですべてそろっています。
キッチンのコンロにつないで使うカセットボンベも積んでいますので煮炊きにも不自由しません。
そう、キャンピングカーは究極の防災グッズなのです。
むしろ自走できる分、自宅よりも防災に適しています。
ただし、そうはいっても無補給ではいつかは干上がりますので、防災を意識して買い足した品目もありました。
まず、予備の燃料です。
キャブコンに使われる小型トラックは地域配送用ですので燃料タンクが小さく、燃費が悪いのに60Lしか容量がありません。
給油寸前のタイミングで災害が発生したら、ほとんど残量がないこともあり得ますので、20Lのポリタンクに軽油を入れて積んでいました。
燃料があっても豪雪の渋滞などで立ち往生したら意味がないと思われるかもしれませんが、多くのキャンピングカーではFFヒーターという燃料を使う暖房装置が備わっており、暖を取るのにも燃料が必要です。FFヒーターは大変優秀で、一晩で1Lほどしか燃料を消費しませんので20Lもあれば十分です。
また、現在は太陽光パネルの発電量が上がったり大容量のリチウムイオン電池が普及していますので、キャンピングカーの電気は自活できるところまでに来ていますが、当時の電気設備では曇りが3日続くとかなりヤバくなりますし、ましてやエアコンを回すことを考えればまったく電気が足りません。
豪雪時などは、太陽光パネルをせっせと除雪しても発電量はかなり下がると予想できます。
その場合、車のエンジンを発電機代わりにしてアイドリング充電をするわけですが、そのためにも燃料は必要です。
次にラジオです。
情報収集にはネットが一番ですが、地方では常にネットにつながるとは限りませんし、特に災害時はどうなるか分かりません。テレビも電波が入らない地域が多く、まったく頼りになりません。
クルマにはラジオがついていますが、トラックのラジオの受信感度なんてあてにできませんし、ラジオを聞くために少なくともアクセサリー電源を入れなければなりませんので電気のムダ遣いです。
そこで、何十年ぶりかに電池式のラジオを買って持っていきました。
次にカセットボンベです。
昔のキャンピングカーは大容量のプロパンガスのタンクを積んでいましたが、現在はカセットボンベをキッチンのコンロにつないで使う方式が主流です。コンロがないクルマはカセットコンロを使いますので、やはりカセットボンベが必要です。
カセットボンベは意外ともちますので通常であればなくなってからコンビニに駆け込むという運用で十分ですが、防災を前提にするとそうはいきません。
後述する水に関しても、川や雪から水を採った場合、一回沸かさないと変な病気にかかりそうですので、そういう意味でもカセットボンベは命綱の一つです。
そこで常に6本のカセットボンベを積んでおくことにしました。
予備燃料と合わせると、ベッド下の収納には可燃物・爆発物を恐ろしい量積むことになり、激しく追突されたら終わるな、とも思いましたが、駐車場で寝ている夜中に追突されることもなかろうと割り切ることにしました。
最後に水です。
当然ですが、水は生命活動に一番大切です。
メシを食わなくても1か月くらいは持ちますが、何日か水を飲まなければ死んでしまいます。
CRUISE には常に2Lのペットボトル4本の他に70Lくらいの水を積んでいました。
が、それだけではどうにもなりません。飲用や最低限の炊事で一日20L、風呂に入れない中で衛生的に暮らそうとすれば一日に30~40Lは必要です。
つまり水だけは救助が来るまで備蓄でしのげるものではなく、どんな状況でも現地調達しなければならないのです。
豪雪にはまったのであれば、雪をチマチマ溶かせばどうにかなりますが、他の災害ではそうはいかず、川も濁ってそのままでは沸かしても飲めないかもしれません。
そこで高性能のろ過装置を持っていきました。
以上、これだけ備えれば二週間くらいはどうにかなるだろうと思っていました。
実際には災害に遭遇せずにムダになりましたが、災害対策なんて保険のようなものですので仕方ありません。
最後に、東京限定の話になります。
ご存じのように一年旅が終わってすぐにキャンピングカーは売りましたが、このまま防災グッズとして持ち続けるかという考えが一瞬よぎりました。キャブコンクラスはほぼ家ですので、防災時にキャンピングカーがある安心感は計り知れません。
一方で、東京でキャンピングカーを維持するのは容易なことではありません。
駐車場代は私の地域でも月3万円、都心であれば8万円とかします。
そもそもキャブコンクラスを停めさせてもらえる月極駐車場はほとんどなく、私は住んでいる賃貸マンションに頼み込んで旅の準備期間だけ停めさせてもらいましたが、ずっとということになると断られるでしょう。
何しろ高さが3メートルもありますので隣接している家の日照や塀の上からのぞき込まれるのではないかということ、キャンピングカーをツタって家に侵入されるのではないかというような心配があるようです。
持ち家の方も、カーポートの屋根を上げたり、窓から何も見えなくなったりということがあると思います。
実際に東京でキャンピングカーを停めているのを見たことがありませんし、旅先では品川ナンバーのキャンピングカーというだけで珍しがられたりしていました。
また、普段は普通にレジャーグッズとして使うというのも難しいものがあります。
地方では都市部でも15分も走ればキャンピングカーを停めてゆっくりできる場所が見つかりますが、見渡す限りビルが立ち並んでいる東京では1時間半くらい走らなければそういう場所にはたどり着けません。
キャンピングカーの出動は即ち旅行であり、「空いた時間にちょっとリラックス」というノリでは使うことができませんので、すぐにめんどくさくなって使わなくなってしまうでしょう。
ですが、よくよく考えれば東京ではそもそも大げさな防災グッズが必要ない、という結論に至りました。
一次資料に当たったわけではありませんが、おそらく国の防災予算の半分は東京に割いているはずです。
東京は皇居に向かって放射状に道路や鉄道が走っていますが、横の連絡は環状線といういつも渋滞する道路しかなく、横方向には大変行きづらい構造をしています。
例えば、私は東京の南の大田区に住んでいますが、同じ大田区の羽田空港には四苦八苦しないと電車ではいけませんし、逆側の世田谷区に行くには環状八号線の渋滞をノロノロと走っていくことになります。
で、数十年前に環状七号線の地下に地下鉄を作るという話が持ち上がり、大いに期待していたのですが、結局環七の地下には巨大な地下神殿のような調整池を作ってしまいました。環状線の渋滞解消は国や都の優先課題のはずですが、それよりも防災対策が勝ったということです。
確かに首都が壊滅したら日本は終わりですので仕方ありません。
だからと言って東京で災害が起こらないということではありませんが、過去に何度も悩まされた大火災も現在は様々な対策を取っていますので、江戸期や大正時代の大火災のようにはならないでしょう。ちなみに江戸時代の標準の道幅は2mくらいで建物もすべて木造ですので、そりゃーよく燃えるはずです。
復旧においても国中の資源を総動員し、米軍とかも大挙押しかけますので、一次復旧は最長でも一週間程度でしょう。
ですので海抜が20m以上で鉄筋コンクリート造の2階以上にお住まいの方は、家でゲームでもしながらジッと待っていた方が私はいいと思っています。
ただし、東京の食料在庫は二日分しかないそうですので、自宅に食料だけはため込んでおく必要があります。
災害でお困りの地域の方はうらやましく思われるかもしれませんが、東京都は民生が極めて弱く、平素から住民に何にもしてくれませんので、せめてそのくらいの特権がないと割に合わないと思っています。