テーマが迷走している本ブログですが、前回の「宇宙の話」が好評いただきましたので、調子に乗って宇宙シリーズを書いてみたいと思います。
我々の住む宇宙は不変のように思えます。
確かに宇宙的なスケールや時間は人間の物差しをはるかに超えるものですので、そう思っていても何ら問題はありません。
実際に長年宇宙は不変だと思われて来ました。
が、本当は宇宙は我々が思うよりも躍動的で、生き物のように姿形を変えているのです。
分かりやすい例では、有名なオリオン座の肩にある一等星・ペテルギウスは、ごく近い将来に大爆発を起こして消えてなくなると言われています。その爆発は相当に大きなもので数か月から1年くらいはペテルギウスがバカでかく光るようです。
世紀のリアル花火を見たい方はこれから毎晩空を見上げてその時をお待ちください。
まあごく近い将来と言っても10万年以内ということですが・・・
では宇宙全体ではどうなのか。
天文学の基礎的な課題として、地球からそれぞれの星までの距離を知ること、それぞれの星の色から温度を推定することがあります。
その膨大なデータを検討すると、近くの重力関係のある天体は別にして、どうやらすべての天体が地球から遠ざかっていることが分かってきたのです。それも地球から遠い天体ほど速いスピードで遠ざかっているらしいのです。
何でそんなことが分かったかというと、救急車が通り過ぎるとサイレンの音程が低くなるドップラー効果です。
遠ざかるモノは音波の周波数が引き延ばされるからなのですが、光も波の性質がありますので、遠ざかるモノは本当の色より赤っぽく見えます。
え? やっぱり地球は宇宙の中心なの?
と思ってしまいますが、地球を中心に空が回っているという天動説が自意識過剰だったと分かって頬を赤らめて以来、地球がごくありふれた星の一つということは常識ですのでそれはありえません。
そうなると宇宙全体が膨張しているとしか考えられないのです。
風船の表面にマジックで点々を書いて風船を膨らませると、どの点もお互いに遠ざかります。
つまりどの点を中心にしても遠くの点ほど早く遠ざかるのです。
それも宇宙はものすごいスピードで膨張しており、その速度は光の速度を超えています。
光の速度を超えているということは、地球から放った光が永久に追いつかないということであり、向こうからの光も地球に届かず、つまり情報が全く届かないということになりますので宇宙の端っこは観測不可能なのです。
さて、膨張しているということは時計を逆回しにすれば一点に収束していくわけで、宇宙には始まりがあることが分かりました。
これが有名なビッグバン理論というものなのですが、宇宙は不変であるということが常識だった時代、この説は物笑いの種になり、ビッグバンという名前もからかわれて命名されたそうです。
顔を真っ赤にしたビッグバン派は、その証拠として宇宙誕生時の大爆発で放たれた熱みたいなものが今でも宇宙全体に残っているはずだと予言し、その後「マイクロ波背景放射」と言われる熱を観測、ビッグバン理論はほぼ確定的になりました。
実際のビッグバン理論はもう少し複雑で、ビッグバン後38万年以前の状態はよくわからないそうですが、おおざっぱに「宇宙は一点からの大爆発で始まった」といっていいと思います。
ビッグバンによって宇宙が誕生して現在は138億年ほど経っているそうですが、それでは今後はどうなってしまうのか。
普通に考えれば、もし宇宙にある物質全部の重さがある程度以上を超えていればその重力によって宇宙はいずれ膨張をやめ、縮み出してまたいつかビッグバンの状態に戻りますし、重さがそれ以下であれば勢いは弱まるものの膨張を続けるということになりますので、研究者はどっちなんだろうと悩んできました。
が、そんな生真面目な研究者全員がすッ倒れるようなことが最近分かってきました。
なんと宇宙の膨張は加速しているらしいのです。
何かを爆発させるとその影響はしばらく続きますが、エネルギーが拡散するにしたがって弱まっていくというのが真っ当な結果です。
それが弱まらず、むしろ加速しているとすれば燃料を投入し続けなければならないわけですが、そのエネルギーが見当たりません。仕方なくその未知のエネルギーに「ダークエネルギー」と名付け、研究者が躍起になって探していますが、現時点ではその正体はまったく分かっていません。
実は、宇宙には理論的に存在するはずのエネルギーや物質の5%しか見つかっておらず、残りの95%を探すのが宇宙物理学の今一番ホットなトピックのようです。
それでは、宇宙の膨張が加速し続けるとどうなるのか。
「そんな宇宙の果てのことなんてどうでもいいわっ!」と思ったあなた、あまいあまい・・・
宇宙全体が膨張しているということは我々が住んでいる空間も膨張しているということであり、今は観測できないくらいの膨張であっても、加速していけばいずれは恐ろしいスピードで身の回りの空間も膨張することになります。
そして膨張がある程度の速度に達すると我々の体はバラバラになります。
と言っても、スプラッター的に手足がもがれて血が噴き出るというような感じではありません。
「宇宙の話」でも書きましたが、モノを構成する一番小さい粒を素粒子と言い、素粒子同士は主に「強い力」と呼ばれる力によってくっついています。いわば接着剤ではなく磁石同士がくっついているようなものです。
身の回りの膨張スピードがある程度に達すると、この「強い力」が膨張の勢いに負けて磁石がバラバラになります。
つまり私たちの体は素粒子レベルでバラバラになるのです。
ですので安心してください、血は出ません。
体だけでなく、地球や太陽を含め、宇宙にある全物質が素粒子一個一個に分かれて薄いスープのようになります。
さらに、お互いの素粒子がもう物理的な相互作用を起こさないほど離れ、宇宙は何もない「暗闇」の状態になります。
あー、怖っ。
宇宙のことを考えると人ひとりの人生なんてどうでもよくなるのが困ったところです。
どうせバラバラになるなら女風呂でも覗きに行こうかと思うかもしれませんが、そうなるのは少なくとも数百億年後、もしかしたら数兆年後かもしれませんので、早とちりすると刑務所に入るハメになります。
しかし最近よく思うのは、このような宇宙物理学とかは、もう産業に転用できないほどの高みに上っているのですが、どうやって研究費をねん出しているのでしょうか。
そっちがむしろ不思議です。