いやー、すごいですね・・・
現代にこのようなことが起きているのが信じられません。
戦況は毎日ジワジワとロシアがウクライナを切り取っているようですが、逆にロシアの負けは確定的のように思えます。
戦争は政治の延長ですので勝ち負けは殴り合いの結果ではなく、政治目標を達成したかどうかで決まります。いろいろなメディアが評論しているように、ロシアの当初の政治目標は、侵攻と同時にウクライナが降参して親ロシア政権を立て、西側の制裁が始まる前に既成事実化してしまうということでしょう。
もちろん練りに練られた大掛かりな戦争ですので、そううまく行かなくても2日間、最悪でも10日間で占領というあたりまでは計画に入っていたと思います。しかしそれもかなわず、西側の制裁が効き始めても占領できていないという状況は想定していなかったでしょう。ソ連時代なら作戦立案者と参謀総長あたりはもう行方不明になっている状況ですが、今はどうなんでしょう。
第三次世界大戦か!という話がありましたが、米欧がロシアをSWIFTからの締め出し、ロシア中央銀行との取引停止を宣言したことは、ハイブリッド戦においては宣戦布告と同じだと思いますので、その時点ですでにロシア vs 自由世界の事実上の第三次世界大戦は始まっていたと考えていいかと思います。
ハイブリッド戦とは、戦車や戦闘機の戦いだけでなく、情報戦や心理戦、サイバー戦などを組み合わせて戦う戦争のことです。経済制裁も痛めつける程度なら「制裁」と言えますが、現在の制裁のレベルは短期間でロシア経済の崩壊、ひいては政権転覆を狙う「経済戦」と言える強度のものだと思います。
そしてロシアがその第三次世界大戦にアッサリと負け、すでに敗戦処理の段階に入っていると感じます。負けは負けでも、どのような状況に持って行けば一番損害を少なく負けられるのかという線をロシアは模索しているのだと想像しています。
このまま押せばウクライナを占領して政権を転覆し、親ロシア政権を立てることは可能でしょう。しかしその政権を世界が承認することはあり得ず、維持していくことはとても無理です。それどころかロシア本体の経済が崩壊する危機にあり、制裁解除まで見越した「うまい負け方」をロシアは今後の駆け引きで探らなければなりません。
ただし、それはもしプーチンが正常であればの話であり、ホントに精神に異常をきたしているかは分かりませんが、読みの甘さや作戦の雑さを見ると少なくとも誇大妄想に陥っているのではないかとは感じます。老年期の豊臣秀吉なんかも同じですが、権力の座に長くつくと誇大妄想になって行く人は多いのではないでしょうか。フランスの大統領は「プーチンは人変わりした」と言っていたそうですが、ホントにそうだったら収拾がつかないことになるのかもしれません。
ちゃんと「うまい負け方」を計算してくれることを願うばかりです。
それにしてもずっと疑問に思っていたのが、ロシアがナメ切っていたウクライナがかえってロシアを手玉に取り、一時的に国を失う可能性があるにせよ、おそらく最終的には勝利を収めるような見事な立ち振る舞いを演じ続けていることです。こう言っては申し訳ないのですが、士気は別にしても、ウクライナがそのような技量を持っていたとは到底思えません。
例えば、ロシアの戦車群にウクライナのオンボロ戦車で立ち向かっていればあっという間に全滅したと考えられますが、一種の非対称戦を徹底し、携行式の対戦車ミサイルで一つ一つロシアの戦車を破壊していったことは、それで戦力バランスが変わるほどでないにしろ、士気高揚や国際世論を味方につける時間を稼ぐのには大きな役割を果たしたはずで、小国の防衛戦争の手本のような戦い方だと感じます。
が、その謎はANNだかJNNのニュース映像で氷解しました。今回のウクライナ侵攻は遅くとも1月にはかなりの確信をもって予想されていたことで、2月にはアメリカが対戦車ミサイルをドッサリ持って顧問団とともにウクライナに乗り込み、ウクライナ軍を訓練していたようです。ここからは私の妄想ですが、その後も綿密に米英軍と連絡を取り、情報戦や国際世論戦を含むウクライナの戦争指揮は、米英がとっているのではないかと想像しています。それだけでなくサイバー戦においては、米英が直接ロシアを攻撃しているのではないでしょうか。
それにしても、プーチンはいったいどういう状況に持って行こうとしているのでしょうか。前述のように当初の政治目標を達成するのはもう無理です。そうなると、いったんウクライナ全土を掌握してから交渉を開始し、進攻前に既に実効支配していたクリミア半島と東部の親ロシア地域の正式な割譲と引き換えに「特別な温情」をもってウクライナを撤退、制裁も解除してもらうというあたりなのでしょうか。それであれば戦勝のテイも作れますのでプーチンもカッコがつくでしょう。
しかし、それは強盗に入り、いったんは100万円を盗んだけど90万円は返すから許してくれという話であり、それを許せば中国も同じやり方であっちこっちに手を出しそうですので西側が認めるとも思えません。
ウクライナ+西側としてはそれに色を付けて戦争賠償金でも払うならまあいいだろうという線かもしれませんが、もし戦争賠償金が付けばロシアの敗戦が明確になり、強い指導者を求めるロシア国民はプーチンを引きずり降ろすでしょうし、今までの行いが悪すぎますので裁判で極刑を宣告されたりすることも十分にあり得ます。それであればプーチン個人としては核使用も含めた一か八かの賭けに出た方がマシであり、北朝鮮と同様に、その状況は核兵器を持つ専制主義国のリスクとして自由世界がもっとも恐れるところです。
いやいやそれだけは勘弁して欲しい・・・
その辺は米英も予想していると思いますので、現在は水面下で米英とプーチンが交渉しまくっているのではないでしょうか。この1~2日はロシア軍の大進撃も西側の追加制裁もないので、そんな感じがします。米英はプーチンの亡命と安全の保証という誘い水も出してヤケクソになるのを何とかなだめていると思いますし、そうであって欲しいと思います。
他にも側近や軍によるクーデターかプーチンの拘束という可能性もあり、もちろんKGB出身のプーチンはそのことは十分に予想して予防をしていると思いますが、本当に側近や軍が決意すれば防ぎようはなく、それもかなりいい解決法です。バイデン大統領も暗示的にそのようなメッセージを発していましたが、今はすべてが駆け引きですので真意は分かりません。
あるいは中国が最近微妙に反ロシア側に重心を寄せてきていますので、仲裁者を名乗り出て寸劇を演じる準備をしているのかもしれません。それはそれで解決の可能性は高そうですが、中国の影響力を高めるとその後の東アジア情勢が不安定になるので黙っていてもらいたいものです。
その辺の水面下の動きや各国の思惑は、50年後くらいにならないとホントのことは分かりませんので想像するしかありませんが、とにかくプーチンのヤケクソだけは避けてもらいたいものです。
もう一つ注文を出すとすれば、この騒動がどう終結するにせよ、ロシアと中国の結びつきが強くなることは日本にとってとても危険です。そうならないように、うまい落としどころを米英の優秀な方に考えていただきたいと思います。