妻は最近

知り合った男女に

「ご夫婦ですか?」

と訊くと

「パートナーです」

きっぱり言い切られることがあるという。

夫婦ではない。

婚約者でもなく恋人でもない。

「それ以上の詮索はゲスだ」

なぜか予防線を張るような強い言い切りで

面の皮が象の尻のような妻でもそれ以上は聞けないらしい。

 

私は自他共に認めるゲスだから

男女の関係があるのか? なぜ訊かないのか

妻に尋ねるが妻は首を振り

「はぁ?」

と眉根を寄せ話題を変える。

自分だけゲス卒業を宣言したかのような見下す態度に

私は少しだけ寂しかった。

 

ある晩。

別室にいる私を呼び寄せ、妻は

「これ観てよ!」

ある通販サイトの掃除機のCMを私にみせた。

掃除機のCMだった。

掃除機の買い替えを検討していたからだろう、私も観てみる。

 

「夢グループ」

という会社のCMだった。

掃除機の説明を聞きながら私も

「あ、この商品良いんじゃない?」

と互いに着地点が見えつつ、CMを観ながら

ある思いが頭にこびりついて離れない。

説明する社長に対して

妙齢の女性が大げさにシナを作り身体をよじらせ

「ん、もぅ! すっご~い♡」

商品の良さをアピールする。

互いの呼吸があった絶妙のやり取りが生々しい。

恰幅の良い絶倫系社長と艶めかしい女性の二人で

CMは進行する。

 

「これって社長とあいじ……」

言葉にしてしまうとゲス確定になってしまう。私は言葉を飲み込む。

自認していながら往生際が悪く、一歩が踏み出せないのは昔からだ。

 

さっそくネットで夢グループを検索した。

すると

「夢グループ CM 社長 愛人」

のワードが上位に引っかかる。

ゲスはお前だけじゃない! 

パソコン越しにそう励まされたようでなんだか安心する。

 

少し経ったころ

 「またやってるよぉ」

妻が笑いながら私を呼ぶ。

掃除機の説明でそうゲラゲラと笑うものではないだろう。

 部屋を覗くと

例のお二方演じる「夢グループ」CMであった。

観ると今度は高枝切りハサミの説明だった。

 

 女性タレントさんが

「すっご~い♡ でもぉ、お高いんでしょ」

腰をくねらすたびに妻は

がはは、と手を叩く。

「これって間違いないよね」

妻はあえてすべてを言い切らず同意を求める。

「まぁ、そう見えるよね」

私は検索ワード上位にあがった言葉を反芻し

合いの手を打つ。

 

何事も極めることは難しい。

ゲスの頂きは遙か遠くだが

共に歩む者がいるのは心強い。

 

先日、町の自治会長七名が集まる会が支所であった。

私も若輩者ながら地域自治会長の一人として参加した。

 

いくつかの議題の前に、愛媛県庁職員の方より

各自治会長に報告があるという。

「2024年。しまなみサイクリング」

についての報告だ。

 

来年2024年の10月日曜日の1日。

朝六時より昼十二時まで、高速道路しまなみ海道を今治から尾道まで封鎖して

サイクリストにしまなみ海道を解放させて疾走してもらうイベントだ。

 

二年おきに実施されている。

 

数名いた県の職員は説明を終えて

「何か質問なければ」と一同を見回し

いや、あるはずなかろうという確信の元、退席の為、腰を浮かす。

このまま終了、ハイ、退室の流れの中、私は挙手をした。

 

ゲスとして一皮むけるためには、このまま終らせる訳にはいかない。

 

しまなみサイクリングの参加費用が一人

「ただ走るだけ」の一万数千円から

「記念品お土産付き」で三万を越える事実を県職員に確認する。

数千人の参加人数から計算すると

五千万から一億円になる。

(参加者が多かった2022年は交通、安全に関して改善点があり2024年は参加者を絞るらしい)

 

私は県職員に尋ねる。

これだけのお金が動くのに舞台となる大三島など各地域に対して還元はないのか?

地域防犯街灯の電灯交換費用が千円上がった、こりゃ大変だ、どうしよう? まだ待ってくれ

など数千円、数万円の費用捻出に困窮している。

「住んでみたい田舎ランキング№1」

と話題の今治市のこれが現状であり、おそらく日本全体の問題であろう。

それは承知しているが何か県として

配慮はないのでしょうか?

サイクリング開催日は朝から昼間で高速道路が封鎖されているから

観光業を営む自分は売上減少だ。

それはかまわない。

ふだんのリモーネはサイクリストで恩恵を受けているのも事実だからだ。

宿泊業などもその恩恵の範囲に入るだろうが、恩恵外の

一般地域住民までがサイクリング開催当日、側道に立ちサイクリング参加者に旗を振ることを「お願い」されるのはやりすぎではないのか。

 

ゲスとして半人前ゆえ照れや遠慮があったし、

普段声帯を使うことが少ないので上手く伝わったのか分からない。

 

思わぬ質問なのか県職員は顔を見合わせ

面倒くさい事を処理する役目であろう、若手の職員さんが立ち上がり説明を始めた。

要約すれば

「皆さんが普段住まれている地域。これだけ素晴らしい環境のしまなみ海道、大三島を私達、愛媛県職員は日本全国、世界に日々発信しアピールする努力をしております」

たった6時間の開催時間であっても数年に渡る丁寧な仕事の積み重ねでやっと実現に至る。

各関係者の尽力は聞かなくともわかる。

 

県の見解としてはアナタ方、島民全員、名誉市民でございます。それ以上の何を欲しますか?

要はそういうことか。

日本のみならず世界からしまなみサイクリングに参加する人が多い。

その舞台の中にいるアナタはもっと誇りに思ってください!

ということなら、人口減少に伴う自治会維持の費用問題も誇りで乗り切ってくれい! という解釈でよろしいのか。

街灯や地域水路舗装やら市道景観の維持が気持ちで乗り切れるならどこの地域も疲弊はしないし、もうそんな時代ではない。

10月後半の早朝はまだ薄暗く街灯が必要だろう。

地域の維持管理の費用にプラスαを欲する心根は卑しいのでしょうか?

いえいえ、薄暗い中、「県道」をひた走るサイクリストさんにもし事故があった場合の責任の所在は「県」にあるとか言うつもりは一切ございません。

 

 

同席する地区役員などの

「面倒くさい訳分からん奴」

空気を読み私は以降の質問は辞めた。

このような場で意見を言うクレーマーもどきは今までいなかったのだろう。

私も交付金の仕組みなど理解が乏しいし

県職員から明確な返答も解決策も提示される筈がないだろうし

私自身のゲス性根も脆弱だから

ここでおしまい。

 

できれば駐車場に停めている私のダイハツ箱バンの

少し開けている窓に県職員の方々が個人的に自分のお財布からそっと現金を投入、寄付していただければ

僥倖の極みでございますぅ。

という一言も追加できなかった。

 

そこで当ブログを読んだ

上浦淑女の皆さん! 

大三島の未来の為にぜひ力を添えて頂ければ幸いです。

難しいことではありません。

中村知事に向かって

「ん~もう! 知事ぃ! そこをなんとかぁ♡」

そう訴えて頂ければ良いのです。

参考は「夢グループCM」

いつかまた、知事とお会いするその時までに

私も「社長!」に相応しい貫禄を身につけたい所存でございます。

以前、ラジオ番組に呼んで頂いた時のショット。

 

ちなみに「夢グループ」掃除機購入しました。

ヒタチさんと比べるとヘッド部分が重く小回りが利き辛いが

吸引力は充分。

ゴミ捨ても雑な自分にはやりやすい。

ヒタチさんの掃除機との相互使用を続けるつもり。