息子が右足を捻挫して松葉杖となった。

全治二ヶ月。

 

ママさんが集まった花見の最中の出来事で詳細は妻も分からない。

息子に訊くが

「OO君が転びそうになったのを咄嗟にかばって」

共に転倒し右足を痛めた、というが息子にそんな反射神経が

伴っていないことを知っているのでその説に私は懐疑的だ。

 

息子の通院で隣の島の整形外科に通ったりと

私の予定も狂い始める。

それから数日後。

右足親指付け根辺りに違和感が……。

まさか

「痛風?」

前日ランニングマシーンで走ったフォームが悪かったのかも?

そう思いたかったが

疑念は翌朝の激痛と赤く腫れ上がった右足付け根を見て確信となった。

病院に行くべきだが、その日は

県議会議員の選挙立ち会いで朝八時から夜八時まで12時間投票所に拘束される。

 

痛風経験者によると病院に行っても痛み止めを処方してもらうだけで

痛風の治療は腫れ痛みが治まってからになるのは知っていたから

コロナワクチン接種でもらったロキソニンを飲んで選挙立ち会いをやり過ごす。

 

約三週間前の血液検査では尿酸値は問題なかった。

だがこの三週間が激務だった。

年度末ゆえ、リキュールの製造量、販売量、売上の詳細報告など

毎年のことだから事前に準備をして報告を済ませたが面倒な作業だ。

正直、三月の記憶がほぼない。

案の定、ある口座のパソコン記帳がまるまる三月と四月と抜けていた。

 

今年は地区自治会長になったので様々な業務が私に加わった。

書類を作って配布(私が作った書類ではなかったが)修繕箇所が発覚、回収して修繕しコピーして各地区組長さんに再配布。

間の悪いことを繰り返すストレスが溜まる。

今期リキュール等の加工品の準備を四月中に目途をつけておかなければならないが

二日に一度は自治会の仕事に追われ予定していた作業の半分も進まない。

妻は私に任せきりなので、私が一人でやりきるしかない。

 

酒も飲む。

ビールやストロング系ではなく

アルコール度数4%程度でプリン体ゼロを標榜する銘柄を飲んでいたから

多分大丈夫かな、と過信していた(自信はなかった)

「ヤマザキ式節酒メソッド」

は脆くも崩壊した。

息子と共にボクシングジムにも通うようになった。

若い男子とグローブをつけて身体を動かすのが楽しすぎて、ついやり過ぎてしまう。

喉も渇いてしまう。

乾いた喉をアルコールで潤したいが、少量の水で我慢する。

脱水状態に近いまま水分を取らずに寝ると翌朝体重が落ちているのが

年甲斐もなく嬉しい。

それも身体に良くなかった。

 

痛風から四日後には足を引きずらずに歩けるようになった。

同じ頃、息子もギブスを外し松葉杖は不要となった。

だがその期間、親子揃って右足を引きずっていた。

「仲良し親子」

と知人からからかわれる。

 

だが息子の怪我の回復が思わしくない。

ギブスを外すのが早すぎる、と医者に諭されたが

もう、痛くないと言う息子の言葉を尊重したのが裏目となった。

別の病院で診て貰うと剥離している箇所があるが、怪我をした日にちから

考えるととっくに完治している頃だと言う。

再び足を固定する日が始まる。

 

私も再発こそしないが、右足付け根のジンジンが蘇る時がある。

自治会の仕事で人様の家に上がることも増え

痛風明けの正座は辛かった。

また私がトイレに入ると我が家の四匹の猫たちが一緒になだれ込む。

狭いトイレの中18本の足がせめぎあう。

風が吹いても痛いと呼ばれる痛風だから

猫の尻尾が触れても当然、激痛。

でこぼこの樹園地を歩くのも声がでる程、痛かった。

 

しばらく親子仲良く節制と自制の日々と腹をくくろう。