地域の役回りで今回の参議院議員通常選挙における期日前投票の管理者となった。

朝の八時過ぎに投票所となる役場の分室に到着した。

私以外の関係者はすでに揃っていた。

投票箱の施錠を確認したり書類に目を通す内に開始時刻になる。

八時三十分の時刻を確認し私は立ち上がり用意された紙を読み上げる。

「ただ今から参議院通常選挙の令和4年7月○日における期日前投票を開始します」

 

宣言したはものの、都会と違い投票者がなだれ込むことはなく、ゆったりと時は過ぎて行く。

時計を見る度にため息が私の他、二名の立会人、役場職員からもれる。

このまま夜の八時までじっと座り投票を見届けるのが今日の自分達の責務なのだ。

本日の管理者(立会人)の選任における報酬額は拘束時間で割ると

各政党が掲げる

「全国最低労働賃金の引き上げ時給額」

を遙かに下回るのだが、この実情に声を挙げる政党は、残念ながら見当たらなかった。

昼食の弁当代は自費。

一日中、座っているだけで金が貰えることに感謝しろ、ということか。

年金生活者ならまだしも現役世代はちょっとしんどい。

自治体に任せているとはいえ、言及しない政治家がいないことに不安を感じる。

 

しかし収穫もあった。

杖で来場し投票する高齢者もいて、一票の重さを肌で感じた。

これは政治家の方にもぜひ知ってもらいたい。

 

もうひとつは個人的だが、空調の整った室内では身体の負担が軽いこと。

私の部屋はエアコンがないので冷水シャワーに半裸に扇風機という三種の神器で

これまで夏を耐えていたが、エアコンはやはり良い。

 

アルミの投票箱に吸い込まれる投票紙を見ながら

いつの日か、ネット投票が導入される未来を想像する。

ネット投票における投票の伸びが与党に有利とならない限り実現は難しそうだが。

 

お世話になっている方が多数、投票所に現れて一票を投じていく。

マスクにワイシャツ姿という普段とは異なる出で立ちのせいなのか、

誰も私と気付かない。赤べこのように首を上下して一票の感謝を必死に伝えるが

避けられているのか、誰も目すら合わせてくれない。

 

投票者の足も間延びした夕刻。

見知った者同士の会話の種も尽きた頃、立会人の一人から

私の素性を尋ねられるが、掘り下げても何も出てこない、と見切られたのか会話は

早々に終る。

よく言えば透明感のある人物像。

ぶっちゃけ影が薄い。

わかっている。

そんな影の薄い私の書いた、少し前の助成金をテーマにしたブログが島で話題(プチ炎上)になっている、らしい。

 

体裁を気にして心配する妻に

「リモーネは関係ないと言えばいい」

と私は開き直るよう提言する。

 

「他人が読むことを心掛けて、文章を書きましょう」

「毎回、誤字が見受けられますが投稿前に推敲はされないのですか?」

等といった指摘はあるが内容について言いたいことがあるなら直接、

私に言ってくれ。

俺はここにいる。

逃げも隠れもしない。

膝突き合わせ、とことん腹を割って話し合おうじゃないか。

いや、そうするべきだ。

酒なら俺が用意しよう。

一杯呑んでヒートアップしたって良いじゃない。

12オンスのグローブもヘッドギアもあるんだ。

青春の残渣って奴を一緒に燃やし尽くそうじゃないか。

何かあっても酒のせいにするから大丈夫です。

だって酒造会社だもん。

猫たちは餌のおねだりしかしないし

子供は猫が糞掃除を命ずる時しか私に話しかけてこない。

妻にいたっては偽造テレカを売りつけようと付きまとうイラン人を見る目で

僕を蔑むんだ。

ねぇ僕の声は届いてますか?

僕の姿は見えてますか?

ついには先日、妻が運転する車で出かけた時、

私が出先で置いて行かれる事態まで起こってしまったのです。

スマホを車内に置いて駐車場の料金支払いをしている間に、子供を助手席に乗せた車は発車してしまい

私は絶望とともに車を見送りました。

施設の方に電話をかりてコールするまで妻は、後部座席にいるはずの私の不在に気が付かなかったのです。

なんということでしょう!

 

夜八時になった。

私は再び立ち上がる。

「これをもちまして参議院議員通常選挙の期日前投票を終了します」

当日、私が発したおもな言葉は開始の宣告と合わせて、以上であった。

 

後日、安部元首相が凶弾に倒れた。

安部元首相と宗教団体との関連をほのめかす

供述を容疑者がしているらしいが

全容はいまだに不透明だ。

根拠と実行の距離が遠すぎる。

 

世の中に不満を抱えた者が自死の覚悟を決めて

投票所にガソリンをぶちまけて全員道連れの放火をしても

「痛ましいけど最近増えてきたね」

世間が納得する時代が来ているのではないか。

その時に道連れになるのはあなたかもしれない。

ネット投票は意外に早く実現するかもしれません。

信じるか信じないかはあなた次第です。

 

都市伝説で有名な関暁夫さんが地元高校生のために

未来へ向けたチャレンジについて講義するため来島されたようだ。