2014年に取得した酒造免許。

実は今まで毎年、更新の手続きをしていた。

 

三年間連続で規定の数量を製造し

記帳含めた経営状態も健全で

国税庁で行われる毎年の品質検査で

「優」あるいは「良」と評価されること。

 

以上が「「永久免許」へ切り替わる条件だった。

 

最短で言えば2018年には切り替わった筈だが

そうは簡単にはいかなかった。

 

2016年と2018年の集中豪雨による土砂災害で

栽培していた畑が流され、柑橘の収量が激減したり

先行投資で赤字になったりで

三期連続でクリアするのは難しかった。

正直、半ば諦めていた。

 

先に挙げた条件に加えて提出書類がある。

高速道路で今治市役所に出向き市民税の滞納がない証明書を発行してもらう

(島の役場では様式をダウンロードできないという理由で発行はできなかった)

また県税の未納がない証明書も市役所の側にある愛媛件地方局に出向き

発行してもらう。

共に酒税に特化した証明書だから受付けた役場の職員は皆

「初めて見ました」

と目を丸くする。

今では時間の節約のために、前年度のコピーを見せて

「今年度のこの証明書が欲しい」

と伝えることにした。

 

加えて税務署から送られてきた書類に今年度の月ごとの実績と、来期の月ごとの予定製造数量も書き込む。

そしてリキュールの需要状況なる作文がある。

数字の記入は面倒だが、この作文は苦にならない。

今期一年を振り返り、また今後一年の予測なりを考える

「行き当たりばったり」の私にとっては良い機会だからだ。

 

更新の書類が届き、作成し提出した数日後、税務署の酒類指導官より慌てた声調で電話があった。

「リモーネさん、もう三期連続で条件をクリアしているんで永久免許に切り替わります」

永久免許に切り替わるにも各税金の証明書は必要だったので、

更新手続きを取り下げる書面と永久免許に切り替えの

書面合わせて二枚を送るから必要な箇所に記入して税務署へ提出してほしい、とのこと。

ちなみに国税局から毎年「優」の評価を得るのは大変なことなんですよ、と言われた。

販売しているお酒でも「優」評価を当たり前にように得ているわけではない、らしい。

私は毎年の数量やらの書類は作成しなくて良いのか、尋ねると

「ええ。もう必要ありません」

「あの需要の状況とかの作文も?」

「必要ありません」

私は一年を考える良い機会だったのにと落胆した声で漏らす。

すると電話口で哄笑が弾けた。

冗談だと受け止められたらしい。

思えば失笑、苦笑ばかりで税務署職員の素で聞いた笑い声は初めてだ。

作文も「テレビ放送の影響で売上がどうたら、寒波の影響でレモンが激減だの、コロナでなんちゃらだの」

内容もマンネリ化していたのも事実だ。

税務調査の時などに、作文の内容に対し

「大変だったですね」

などと感想は言われたことはあったが、良い頃合いだった。

 

テレビでは連日、ロシアとウクライナを報道している。

日本では春が訪れているがウクライナでは極寒のなか、

戦禍に耐えている人々が映像で流れる。

収束して欲しいが長引きそうだし、何かの始まりにも思え

他人事とはとても考えられない。