地域の草刈りがあり、小雨の中、決行した。

その数日前、同じ町内のお婆ちゃんから、自宅前に流れる水路の清掃と草刈りを依頼された。

地域草刈りの時に、ついでに水路の清掃をしてほしい、とのことだが

結構な長さの水路で地域草刈りの前日、リモーネのスタッフと草刈りと水路清掃した。

 

水路に垂れる草を刈り、水路に落ちた草をスコップで山側の放任園に放る。

マムシに怯えながらナメクジやミミズ、ヒルまでも潜む山盛りの草を

狭い水路に身を置きながらスコップでしゃくり上げ続け

「強くなったもんだ」

と振り返る。

この手の生き物は悲鳴をあげたいほど苦手なのだ。

東京にいた頃なら想像しただけで、卒倒するシチュエーション。

 

後日、頼まれたお婆ちゃんに会うと

「○○さんが綺麗にしてくれて助かったわぁ」

と私とは別の町内の人の名前を出して感謝の言葉を述べた。

その方は地域では人格者と尊敬され、風貌も福々しい。

だから全部美味しいところを持っていくのも分かる。

それが人徳なのだろう、と貧相な自分の顔を浮かべて納得した。

私は言下に否定するのも大人げないと思い、聞き流したが

リモーネのスタッフも手伝ってくれたのだから、やんわりとでも

「ウチの従業員にも手伝ってもらい事前に私がやりました」とでも

言えば良かった、と後悔すると夜、どっと疲れた。

 

似た出来事があった。

大三島でダックスフンドが迷い犬で保護されている、と駐在所の奥さんから妻にLINEでお知らせがきた。

追加の情報で我が家の近所で保護されたらしい。

ダックスフンドを放し飼いにしている年配の方に覚えがある。

妻から連絡を受けて、私がその方を訪ねると

やはり数日前からダックスフンドが帰ってこないという。

私はその足で駐在所へいくが不在。

迷い犬を保護しているなら役場(厳密に言うと殺処分所への第一ステージ)かと思い

連絡するとダックスフンドは隣島の警察署へ移送されたとのこと。

隣の島の警察署へ連絡すると特徴からして、どうやらそのダックスフンドに間違いない。

私は事情を説明し担当の方の名前を聞き、飼い主の名前を伝えた。

飼い主宅へ行き、隣の島の警察署で保護されていると話し、電話番号と担当者名を書いた紙を手渡した。

私が引き取りに行ってもよい、と提案するが息子の職場が隣の島だから、明日仕事帰りに寄らせる、との返事。

後日、無事にダックスフンドは帰ってきた。

たまたま近所の方と会った時にダックスフンドの話になった。

「お宅の奥さんのおかげでわんちゃん帰ってきたぁ! 言うて喜んどったよ」

年配の方が感謝の弁を近所の方に吹聴しているようだ。

え? 妻なの? 私じゃなくて……。

別に感謝がほしくて起こした行為ではない。

別にいい。

別に良いのよ。

でも妻は私に情報を伝えて、動いたのは私自身なのに。

心に吹いた隙間風が春を告げる。

 

広域な人間関係という意味で私は妻よりかなり劣っている。

挽回する気もないが、放置していても状況が好転することはないだろう。

影が薄かろうと存在感がなかろうと支払い請求が律儀に届くのが癪に障る。

「あ、忘れてた! じゃ今回から結構です」

って感じで免除にはならない仕組みに腹が立つ。

 

そんなモヤモヤを抱えていたが、ある日水路のおばちゃんが訪ねてきて

大仰なお礼を私に述べた。

なんでも妻経由で正確な情報が流布したようだ。

普段はトイレに入っていても妻から電気を消されるくらい

存在感のない私。

「はいってます」と訴えると

「気配消しすぎ!」

と逆切れされる理不尽に耐えた日々も少しは報われたか。

 

ちなみに「ヤマナメクジ」なる生き物と大三島に移住して初めて遭遇した。

詳細は省くがたまげた。

ネットで検索すると「ヤフオク」で出品されているではないか。

どうかしてる。

都会の人が購入してその辺に逃がしたら、と

考えるとぞっとする。