素晴らしい言葉に出会いました。

その言葉は今も私を支え苦難を前にした時に心のよりどころとなっています。

幸い、まだその言葉を使う機会には恵まれていませんが、きっと皆様のお役に立てると信じております。

今日は皆様にその魔法の言葉を伝えたいと思います。

よろしいでしょうか。

 

あれは十年ほど前のことです。

日頃の研鑽のおかげか、あるイベントにリモーネが呼ばれました。

リモーネが参戦するには分不相応なほど歴史もあり集客も多大なイベントです。

勿論ふらりと立ち寄り来場しても

出店する様々なお店回りで一日が充分楽しめるイベントです。

舞い上がった私は就農してお世話になった方々に

来場の誘いをしました。

会場までの交通費は負担となりますが

入場料など一切かかりません。

公言こそしませんでしたが、来場いただけたなら

サプライスも用意しておりました。

皆様はリモーネがステージを上げた事実に目を細め破顔してこう言いました。

「行けたら行くよ!」

当日、私は数百人の来場者で賑わう会場のブースの中で

慣れない接客を、こなしがらも島民の方々を心待ちにしておりました。

終演しても見知った島の方々は誰も来ませんでした。

私は局地的な天候不良で島をつなぐ高速道路が不通になったのか、

あるいは乗り合わせた島民の方々の車が何か不慮の事故にあったのではないか?

不吉な予感でいてもたってもいられません。

対称的に妻は落ち着き、いやなぜか焦る私を嘲笑までもする始末です。

翌日、普段通りに農道を往来する島民の皆様を見ながら

無事と安全を確認し

「なにか不測の事態があったのだろう」

自分は安堵しました。

 

それから、幾度同じやり取りがあったでしょう。

 

そんなある日、私はネットニュースを観ながら愕然としました。

ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞して

授賞式に参加するのか? 記者の質問に対しこう言ったのです。

「行けたら行くよ」

ああ、私を高揚させ落胆させた言葉が世界共通の認識だったとは!

むしろ世界が大三島に歩みを寄せた歴史的な瞬間と万感の思いで

私は飼い猫の尻を何度も叩き、逆襲に遭い引っかかれた

手の甲から血を流しながらも満足しながら確信しました。

世界がやっと大三島に追いついた、と。

あくまで噂ですが関西地方では

「相手の誘いを断る」

スマートな大人の常套句」として

この言葉が使われるらしいのですが真意のほどは定かではありません。

 

検証のために誰か私を誘ってくれたら良いのですが

なぜか誰も私を誘ってくれません。

なので、これだけは言えます。

私は今、ボブ・ディランよりも極上の孤独を味わっている。

いつの日か、誰か、私を誘ってくれたら言ってやろうと決めています。

「行けたら行くで!」と。

アナタも「面倒くせぇ」時には、ぜひ使ってみてください。

ありがとうございました。