泡沫少女とイデアの少年 大歳祐介 PHP
 
友人が気になっている本ということで自分も購入して見ました。
 
購入して手に取ったとき、カバーがまるで古風なハードカバーのようで、それでいて可愛らしかったので、どれだけでもう引き付けられました。
 
話の主体は、誰もが一度は考えたであろう“永遠”の命についてです。
 
本書は、“有限”の命を持つ人間たちの中で、唯一“永遠”の命を手に入れてしまった少年と双子の兄、また少年たちを大切に思う人々と、
“永遠”の命をもつ人々の中で、唯一“有限”の命をもつ少女と育ての親、不思議な少年との出会い。
 
二つの時間軸の物語が交互に語られ、徐々に真実が明らかになっていく物語です。
 
ストーリー構成もミステリー小説かくやといった、見事なものですが、自分が良いと思ったのは、それぞれのキャラクターに人生があって、考えがあってそれ故に対立し、共に歩み、、、、キャラクターがちゃんと生きていたことです。
小説でも、アニメ、漫画、映画でも自分は、キャラが立っているかに重点を置きます。意識してそればかりを見ているわけでもありませんが、面白い物語には生きたキャラクターが必ず現れるからです。
 
永遠の命という非現実的なファンタジーですが、あとがきに書かれていたように、これはありふれた、身近にある物語なのかもしれません。意見や生き方が対立したとき、正義や悪では割り切れず、どちらの主張も間違っているとも正しいとも言えません。正しい答えなどはなくて、結局は自分の信じるように生きるしかないのかもしれません。人間は基本死に恐怖を抱く生き物だと思います。(基本というか大多数というか、難しい話ですが、難しい話はとりあえずその辺に置いておきましょう。)
大切に思う人間がいる、大切に思ってくれる人がいる、争う相手にもそういう人がいて、無責任に考えたらそんな相手を傷つけて、争うことなんてバカバカしくて、それでも人間は争います。大切だから、譲れないから争わなくてはいけない。そんな悲壮感に満ちた内容が7、残りは、その中でも逞しく、ささやかな幸せを探し出し、ほのぼのする内容でした。
 
自分の信じる答えも、自分の中だけで生まれるものではなく、人と関りや環境が重要なわけで、本書では命をテーマにしているだけあって、相当な重みがあります。数学のようなきっぱりとした答えがない分、理解していてももどかしさがどうしても残ってしまいます。
自分はラストに感じました。詳しくは言いません。読んでください。
 
以上。
 
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