こんにちは!
大変長らくお待たせいたしました。
第一回目の今回は、当インタビュー活動についてアイデアをくださった、越陽二郎さんのインタビューです。
人材会社、TalentExの代表でいらっしゃる越さん。日本において、コンサルティング会社に勤められたのちに、KDDIグループのタイ拠点立ち上げに携わり、タイに駐在。その後、独立し、タイ・バンコクにてTalentExを創業されました。
現在では、IT業界向けの求人サイト、「JobTalents」、日本語人材に特化した「WakuWaku」、人材管理クラウド「HappyHR」の3つのサービスを提供されています。
ではさっそくインタビューを見ていきましょう!
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-お仕事について教えてください
人材関係の会社でそれに関する事業をやっています。
3つのサービスを主に提供していて、JobTalents はIT業界向けの求人サイトです。ソーシャルリクルーティングといわれるSNSを活用した事業ですね。
WakuWakuは日本語の話せるタイ人に特化した日本語人材のダイレクトリクルーティングサービスです。
最後のHappyHRは2つとは性格が違って、現地企業向けのシステムで給与管理、税関係のフォームを出したりするクラウドのソフトになります。これは会社の人事の人が複雑なシステムを使わなくてもシンプルにソフトを使って、給与明細を従業員のモバイルに送信し、電子媒体で給与明細の配布をしてしまうものです。
-ありがとうございます。JobTalentsについて質問させてください。
越さんが起業される前からタイには求人サイトがありましたが、もともとあった求人サイトとJobTalentsのちがいはなにでしょうか。
タイで日系企業がやっている人材関係のサービスは人材紹介でした。これは一対一で紹介業者が求職者と会ってあなたはこの企業、この仕事があってるよといった形でコンサルティングするものです。
そこではスクリーニングがされるので求人側の希望と合っていない人材を排除できます。求人側としては会社に合った人材だけを紹介してもらえることになりますね。
だけど、求人サイトをだしてたくさんの中から選びたい企業もあります。
求職者としても何百、何十件のなかから自分の好きなものを絞り込んで希望する企業を決めたい人もいます。
そこでインターネット上で行われる求人サイトの出番です。
この事業はタイでもいくつかありました。ただ、ITのエンジニアに特化したのとか日本語ができる人に特化したものがなかったですね。ここに需要があると考えたのです。
例を出すと、アマゾンはなんでもいろんな商品がそろっていますよね。でも今服が買いたい人にとっては、とにかくファッションだけのサイトがいいんだとか思うわけですよ。
こんな感じに、ニーズが細かくなっていくとそれに特化して、それだけを集めたほうが充実したサービスになります。
仕事に関しても同じです。
もちろんなんでも載っている、なんでも募集できるサイトもいいけれど、タイのサイトで日本語人材を探そうとか、ウェブのエンジニアを探そうと思ってる人にとったら、全体の中で探すよりもそういう特定の人だけを集めた求人のサイトのほうが使いやすくていいんですよ。
これがまだまだタイではなかったサービスで、やっていく余地のあるところだと思いました。
縦でいろんな職種、業種ごとにやっていくことが大事なんですよね。ここがタイにもともとあった企業との違いですね。
-なるほど。もともとタイの人材媒体の業界は一緒くたにやっていたが越さんは細分化して、業界ごとにやる事業を始められたのですね。
そうです。
ある意味、僕がファーストプレイヤーで、インターネットの求人サイトがタイになかったら、すべての求人情報を載せたアマゾン的な感じでやったと思います。
だけど、それは10年も20年も前のプレイヤーがやっていました。
参入するときに、今あるものをひっくり返さない。
つまり横綱がいるならその地位を奪うんではなくて、じゃあこの横綱にはここの分野を頼んだよとする、だけど僕はその横綱ができない、満たせないニーズを対象にしていこうと考えています。
タイで起業している身でタイの仕事を奪ったってしょうがないですよ。タイ人ができないようなところをやっていくのが意味のある経営ですね。
-ありがとうございます。
最初にタイで起業されようと思ったときにはもう、タイの人材・求人媒体の事業で満たされていないニーズがあることに気づき、目をつけていらっしゃったのですか。
これは僕の起業の経緯を話しながらお答えしますね。
まずタイには駐在で来ました。そこでKDDIグループの立ち上げをやっていましたが、もっと自分で挑戦してみたいと思い始めたんです。
また、東南アジアでバックパッカー、NGOのボランティアを昔やっていた経験からこの地で勝負してみたいと思って、会社辞めて、自分の事業を始めました。
起業前の駐在に来た時に、まだ人材関係の業界には良くできる余地がある、そこを変えることで社会をよくしていきたいっていうのがありましたね。
とまあでも、これはちょっときれいすぎるストーリーですね(笑)
実際は駐在員をやめることが最初決まりました。駐在のとき、本社とぶつかったり、やり方に納得できなかったり、自分ならもっとこうできる、ああしたらいいとかありました。
けれど、給与を会社からもらっているのだから会社の言うことを聞かなきゃいけなかったです。
それが自分には合わなくて辞めました。
辞めて、留学しようとか現地就職しようとかも考えたけど、駐在時代とおなじ悩みにぶつかるだろうと考えました。
そこで自分でやるしかないと決心したわけです。
何をやるか決めてなかったけど、インターネットの立ち上がりを見てきて、これからタイで盛り上がるなと感じはありましたね。よしそこでやってみようと考えました。
それから、ユーザーヒアリングしたり、こういうサービスはニーズありますかって聞いたりしていました。
でも最初は今と全然違うことをやろうとしていました。
そのころ起業して、あんまりお金がなかったので、投資を受けられる事業をしようと考えました。
当時、お金の集まる事業は基本eコマースだったんですよ。最初の3か月くらいはそれを考えていたんですけど、タイでそれをある程度軌道に乗せるのには、3年かかることが分かりました。そのあとインドネシア、ベトナムなどに広げるころには同じものができているだろう思いました。
僕の起業の大前提は、「タイで日本人として僕のやれることをやって、タイ人の人が苦手なこと、それまでタイになかったものを作る。そのあとそれを彼らに任せる。そして僕は違うところでまた新しく始める、といった風に東南アジア全体でやっていくこと」でした。
だけど、eコマースは物流とかが絡んできて、素早く発展させていくことは難しい。だからやめました。
そして、独立して3か月ですべてが白紙になってどうしようとなりましたね。もう一回事業を洗い出してみました。
FacebookとかGoogleみたいにリモートでできちゃう、タイじゃなくてもいい事業は違うと考えました。
人が現地で必要なものをやりたい。
すると不動産、旅行、人材関係が浮かび上がってきました。
3つの業界では営業は多くする。しかも拡大しようと思ったときに、人さえそこにいれば事業ができるものです。
僕は学生時代に人材関係の事業はやったことがあったので人材に目を付けました。
なので、最初から人材関係の会社を興そうとは思っていなかったですね。
-なるほど。しかし、「駐在時代のときのような悩みが現地採用などでも起きそうだから」という理由だけで、リスクの高い起業という選択をすることは難しいと思います。なにか勝てるという勝算があって起業されたのですか?
やることは決まってなかったし、勝てるとは思っていなかったですね。だけど、自分でもできるんじゃないかなと思っていました。
学生時代に起業を試みたことがありましたが、資金調達、事業戦略などの知識がなかったので断念しました。
その後、コンサルで働いている中で会社はどういう風に回ってて、事業をどのように精査して、実行していくのかというのはみえてきました。
タイに駐在して新しい事業立ち上げるというときに、コンサルではやっていなかった、身をもって事業をする部分をやりました。提携先を見つける、開発をする、営業してお金売り上げていく、経理で処理して、人を雇ってというのをやりながら、自分でも経営できるのではないかと感じ始めていましたね。
最低限踏みだすだけの力はついたかなと思い起業しました。
起業することは難しくありません。けれど、そこでちゃんと続ける、成功させることが難しいです。
じゃあどこまで修行したら起業して良い経営できるのか。そのときはありません。
経営者は経営していく中で鍛えられていきます。
-ありがとうございます。社会人経験が起業に繋がったのですね。
そうですね。
あと、起業するかどうかって実力と自信の総合値で決まると思います。
学生時代にスキルとかなくても自信のある人は起業するし、「自信はそんなにないんだけど、20年ビジネスマンやってきてできるんじゃないかな」と思って起業する人もいますね。自信と実力のバランスです。
僕は実力に関して、2,3年くらいしか働いていなかったので、そんなに実力があったわけじゃないんですけど、たぶん自信のほうがありました。タイに来て、「あ、俺でもできるんじゃないかな」というふうになって、起業を決心しました。
-なるほど。では、今、日本人がなかなか起業しない状況に対して、若い人は会社を興すべきだと思いますか
したくない人にけしかけて起業しろよと言っても仕方ないと思います。
経営者とか起業家って異常な人たちですよ。ましてや起業家は特に。みんながする必要ないです。
ただそういう人が増えたほうがいいのは間違いない。けれど、失敗したくないと思っている人はやめたほうがいい。「失敗するかもしれないけどその先に自分の人生があると思うんです」という人は起業すべきだし、応援したいです。
僕自身は、いままですごく苦労したし、つらい目にあって、今もまだまだ苦しい中にあるけど、それでもやってよかったと思います。自分の人生を生きてるな、と感じています。
だけど、起業はやりたくないなとか怖いなって思っている人に無理やりやらせてもダメ。起業で失敗しても大丈夫なんだと思えることが大事。
僕の場合、タイの雰囲気がそうさせてくれました。この国にいるとなにかあっても生きていけるかなって思えますね。服がなくても死なないし(笑)貧しい中でも楽しく生きている人がたくさんいるので。
日本に起業を志す人が少ないのは、日本の雰囲気が失敗したら終わりだとか人生どん底だとか思わせるようになっているからだと思います。その点、タイは違いますね。
-ありがとうございます。では、起業したいと思っている人は日本ではなく、海外で始めたほうがいいと思いますか。
それは違いますね。日本人は日本で起業するのが一番。
銀行から外国人はなかなか金を借りることができないです。わけのわかんない外国人には融資できないですよね。だから株式で応援してくれる人から投資を集めなきゃいけない。
資金集めに関して日タイでの差はすごいですよ。僕的には日本でやるほうが圧倒的にやりやすいと思います。
-なるほど。では越さんが起業されようと思ったときに日本に帰る選択肢はなかったのですか。
なかったです。
起業のやりやすさを比べたらタイより日本だけど、僕の場合は、起業して成功したくてタイを選んだわけじゃない。自分が帰国子女だとか、学生時代の生きざまから考えたときにやっぱり海外は自分の人生のステージだと考えていました。そこが出発点です。
それで、海外でどうやって生きようかと考えたときに、起業にするか勉強するか考えたときに起業を選んだ。けして有利な状況ではないけれど、たぶん自分の人生はここにあると考えました。
-今後のビジョンのことについて質問させてください。
WakuWakuについてなのですけど、日系企業が多く進出している、ミャンマー、ベトナム、マレーシア、シンガポールにも日本語が喋れる東南アジアの人に対してのニーズがあると思います。今後の事業として、タイ以外にも目を向けていらっしゃいますか。
それはありますね。来年にはできるかなと考えています。
日系が進出したから現地でほしいっていうのもあるし、一方でそういう国から日本に人が欲しいっているのもあります。この動きはすごい勢いであります。
なので、もちろん東南アジア全体、また、ヨーロッパ、中東にも拡大を考えています。世界中に日本語話せる人って結構いるんですよ。東南アジア、ロシア、メキシコ当たりの中南米、ヨーロッパにも話が上がってきていますね。
-ありがとうございます。では、お仕事の中でやりがい、面白みは何ですか。
月並みですけど、だれもやっていなかったこと、今までなかったことを作って、お客さんに喜んでもらった瞬間は最高ですね。
WAKUWAKUだったら、前まで何十人、何百人いる中から日本語しゃべれる人を探すのが一苦労でした。けれど、日本語ができる人だけで集めた求人サイトがあるのですよと言って、提案して、見せたときにいいサービスですねと言ってもらえるとありがたいです。
ほかにもクラウドの給与管理ソフト作っていて、今までの給与計算するソフトと何が違うのと聞かれることがあります。
そのとき、「従業員のモバイルに給与明細を送信するので、今までみたいに毎月それを印刷して、配って、管理する必要ないのですよ。」と説明し、「毎月税務署に行って社会保険の書類とかを何時間も待って出しに行く、あれいらなくなりますよ」と言うと、「すごい!!」みたいなかんじで喜んでくれてうれしいです。
誰もやっていないのを作るのはそんなに簡単じゃないからこそうれしいですね。
それでお客さんが喜んでくれるのもうれしいし、さらに従業員が事業に愛着を持ってくれたり、誇りを持ってくれたりすることがもっとうれしいです。
-ありがとうございます。しかし、誰もやってないことで需要のあるものってすごく見つけることが大変ですよね。どのような取り組みをされているのですか。
それはテクニカルに、分析するとか市場調査、競合調査とかもありますけど、とにかく何回もやり続けること、バッターボックスに立ち続けることですね。
大体起業しようとか新しい事業始めようと思うとすでにやっている人がいることが多いです。
そこであきらめたりせずに何回もチャレンジすることが必要です。実践し続けること、フロンティアに立ち続けることで見つかることもあります。
Happy HRがそうです。前線に立ってビジネスをしていく中で、「給与計算のソフトはもうあるが、税、社会保険料の支払いもできるものがない」ことに目を付けました。また、新しい技術を生かしたり組み合わせたりする可能性も考えたりできます。
あとは、そもそも数やらなきゃ当たんないですね。どんな起業家だって、新たな事業を考えては、失敗しています。その中で、見えてきたもので新しいものが見つかったりしますよ。
-最後に、やりたいことが見つからない学生に向けてメッセージをお願いします。
やりたいことはやりながら見えてきます。
今やっていることを恥ずかしいと思ったり、やばいと焦ったりする必要はないです。3、5年やっていく中でやりたいことが見えてくればいい。それまではいろんなことを経験するのが人生。
一つやりたいことを絶対見つけないといけないと思わず、いまそれが面白そうだからやってみたいと思うことに気軽にチャレンジしていくべきです。
まず、誰しもが内省をしたらこれがやりたいという確たるものがあって、それに合う会社があるっていうのが幻想です。100万人いて100万人がはっきりとやりたいことを持っていたらおかしい。そんなにみんな人生やりたいことが明確にあるわけじゃないです。
けどそれがあるっていうふうに信じ込んでいるから、やりたいことが分からないと言って悩むことになる。たとえ見つかってもそれにぴったり合う会社が必ずあるわけじゃないです。
人生がきれいなストーリーになるというのは思い込み。
そこに気づければ前に踏み出しやすくなると思いますね。
やりたいことがないということはダメなことじゃない。やりたいことがわかんなくても、今こういうものを持っていて、興味があって、これをやってみたい。これでいいと思います。
悩んでいるのはどっかに答えが待っていて、その答えを見つけなきゃいけないと思っているから。正解はないです。人生に正解はない。自分のやりたいことにも正解はないです。
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いかがだったでしょうか。以上が越さんのインタビューです!
タイという異国の地で起業された越さん。
その背景には駐在時代の悩みや、タイの雰囲気が越さんの背中を押してくれた過去、"タイ人ができないようなところをやっていくのが意味のある経営"といったモットーがあったのですね。
特に僕が越さんのお話で心打たれたのは"やりたいことがないのはダメなことじゃない""いまそれが面白そうだからやってみたいと思うことに気軽にチャレンジしていくべき"という部分ですね。
このブログを始めた理由がやりたいことがないのをダメだと思ったからなんですけど、それが覆されてしまいました笑
しかし、心が楽になりました。
いままで、仕事としてやりたいことを探さなきゃと面白くもない就活関連のウェブやブログを読んでいましたが、いま面白そう、楽しそうと感じるこのインタビュー&ブログをどんどんやっていいんだと思いました。
この先、面白そうなことがありそうでワクワクしています。
みなさんもどうぞ純粋に、自分の興味が惹かれるもの、始めたいことに全力を注いでいきましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
では次回投稿までお待ちを!
和田航季

