ガレージをツバメさんたちに開放しているお父さん。

 

広いガレージの天井には、新築からリフォームまで

10軒ほどのツバメのお家があります。

 

 

初めてお邪魔した日。

 

「あれ?さっきまでここにひながいたのに、

 4羽いたはずが1羽になってる」

 

「あ~あそこにいるわ。巣立ったんやな。

 今日が巣立ちの日や」

 

と、ご自身の体調のことよりも

ツバメの話をしてくださいました。

 

 

その後も、訪問のたびに、大きくなっていくひなたち。

どんどん巣立っていきます。

さらに、ちょっと出遅れたツバメたちが

巣を新築していました。

 

その巣を眺めながら

「今の気がかりはこの子たちが、

 群れに乗り遅れずに、仲間たちと

 帰ることができるかってこと」

と、ツバメの心配をしていました。

 

ツバメをわが子のようにかわいがっているお父さん。

ご自身の体調のことは多くを語りません。

なので、いまひとつ、病状がつかめません。

 

なんとなく、いつもしんどそうなお顔を

されているのですが、「しんどい」とは

おっしゃいません。

「動いている方が調子がいい」

と言って、外仕事などもされていました。

でも、ちょっと無理をされたようです。

 

 

数日間、起きるのも大変な状況でしたが、

だんだん落ち着いて、またツバメを見に

ガレージに出てこれるようになりました。

 

先日の新築物件でも、子育てが始まっていました。

 

「動いていないとね・・・

 動かなくなったら、あっという間な気がして・・・

 だから、昨日、起き上がれなかったんだけど、

 なんとかして起き上がったんだ。

 そしたら、今日は動けるよ。」

ツバメの巣を見上げながら、話してくださいました。

 

 

ご自身の病状を理解し

「最期は一週間くらいで終わらせてほしい。

 家族が納得してくれれば、それでいいんだ。」

そうおっしゃっていたお父さん。

 

全てのツバメを無事に見送りたい。

そのためにも、なんとか動いていたい。

そんな思いが伝わりました。

 

全てのツバメが無事に巣立てますように。

 

庭先では、お母さんが大切に育てた

きれいな花たちが、ひなとお父さんを

応援しているかのように、

元気に咲いていました。

 

 

今日はこの曲です。

 

その命が走り出す為に

数えきれないほどの

 

走者たちが繋いできてくれた

一本のバトンには

 

握りしめて窪んだ跡や

何度も落とした傷

 

生き抜いたその証を受け取って

 

この坂道を

駆け上がるんだ

 

 

 

ツバメもお父さんも「バトン」を渡していきます。