世間様はGW。長い人は9連休だという。
もちろん仕事が”水産仲卸業”である左衛門佐に長期連休なんてものは無い。
それでも、今回は2連休を2回も取ることが出来た。
普段ほとんど連休の無い左衛門佐にとっては
2連休でもそれはもう、とても嬉しいものである。
さて、そんな貴重な休日を有効活用すべく、
キス釣りに行ったり(釣果は聞くな)
愛艇や水槽やイケスのメンテナンスをしたりと
珍しく精力的に動いていた。
そんな中、放置してあった海中イケスも引き上げ、
いつ活き餌用のアジやサバやキスが大量に釣れてもいいように
綺麗に掃除してメンテナンスをしていたのだが、
ふと見ると船のデッキの上を何やら小さな生き物が
うにょ~~んと動いているのを見つけた。
こうした作業をしているとイケスに着いて一緒に上がってきた
小さなカニやエビ、小魚、貝などがデッキの上に散乱することになるので
そんな小さな生き物たちが日光にさらされて死んでしまわないように
海水をかけながら海に戻す作業をするわけだが、
こうした生き物たちの中には何やら正体不明な軟体生物とか
とにかくいろんな生き物が上がってくる。
しかし、左衛門佐が見たそのうにょ~~んな軟体生物は
随分お久しぶりではあったがとても見慣れた生き物だった。
タコだ。
まだ頭がパチンコ玉より小さいマイクロサイズ。
あまりに小さすぎて種別の判別が出来ないが
左衛門佐の勘ではなんとなくマダコではない気がする。
おそらく浜名湖でよく見かけるテナガダコの仲間だと思う。
頭の大きさが左衛門佐の爪半分ほどしかないタコの幼体。
浜名湖のGWは毎年凄い数のタコ狙いの船が出船し、
まさにカオス状態になっていたのだが今年はそうしたタコ狙いの船も少なかった。
タコが釣れなくなったからだろう。
マダコ含めこうしたタコの幼体は昔は浜名湖に本当にたくさんいて、
左衛門佐も浜名湖の畔に居を構えたばかりの頃はその珍しさから
こうしたタコの幼体をよく短期飼育したものだ。
船のイケスや陸上の大型イケスの中にガラスの瓶をズラリと並べて
その中にタコの幼体を1匹ずつ入れて観察し、
少し大きくなったら浜名湖に返していた。
そう、オオクワガタを飼育している人が菌糸ビンずらりと並べて
幼虫を飼育しているのと似ているかもしれないね。
(メダカサイズのクエの稚魚もこうやって研究観察していた)
今ではこうしたタコの幼体もめっきり減ってしまった。
まあこれだけ魚が減っても相変わらず
遠州灘のシラス漁が ”昔通り” 行われている以上、
それも当たり前。
遠州灘のシラス漁を辞めない限り、
今後こうした水産資源が回復することは決して無いだろう。
たった2kgのちりめんの中に、おびただしいほどの数が混獲されたタコ、イカ、エビの幼体。
シラスの漁獲の為だけに、天文学的な数のタコやイカ、エビ、他魚種の稚魚が犠牲になっている事実をみんなが知るべきだと思う。
さて、左衛門佐に捕獲されたこのタコスケ。
あまりに可愛いので久しぶりに飼育意欲が湧いてきた。
というわけでキュービック水槽稼働。
タコスケがマイクロサイズなのでこの水槽で十分である。
さっそく牡蠣殻にくっついて擬態。
凄いね。
本当に牡蠣殻の一部みたいだ。
こうした擬態はタコの専売特許である。
ただ、じつはタコやイカなど軟体動物の飼育は
海水魚飼育の中でもとても難しい。
難易度で言えば最上級クラスである。
特にイカはタコよりさらに難しく、
一般家庭の飼育設備や技術では長期飼育はほぼ不可能に近い。
専門の水族館ですら即死させることがあるほどだ。
それでも中にはアオリイカやコウイカの長期飼育に成功し、
公開している超凄腕のアクアリストさんもいる。
左衛門佐も、「ほえ~、マジで凄えな!!」と感心することがある。
タコはイカに比べれば難易度が下がるが
それでも一般的な海水魚に比べるとかなり難しい。
理由は、タコが大食漢で喰い散らかした餌で水を汚す上に
自身も大量のアンモニアを排出し、
そのくせ水質の悪化に敏感で居心地が悪くなると
水槽から脱走して自殺するからである。
おまけにタコはほぼ活き餌しか食べない。
大好物のカニやアサリなどの活き餌が必要になる。
また高水温にも弱く、水槽用のクーラーで水温を保つか、
もしくは部屋ごとエアコンで冷却するかの選択を迫られる。
海水魚を飼育したこともないような素人では120%無理である。
大好物のカニを追うタコの幼体。だが残念、今回は逃げられてしまった。
海水魚の飼育経験が豊富な左衛門佐でも手を焼くほどの難易度だが
今回はタコがまだ超マイクロサイズであること、
夏が来て水温管理が難しくなるまでの短期飼育ということで
久しぶりにタコの飼育に挑戦してみた。
左衛門佐の場合、家のすぐ目の前が浜名湖という環境下にあり、
頻繁に天然海水を入れ替えることが出来る利点があるからだ。
しかし、じつはこの恵まれた環境下においてすら
タコの飼育は容易ではない。
いくら天然海水を無限に汲めるといっても
いつでも好きな時に飼育に使用できる海水を汲めるわけではないのだ。
例えば台風が来て大荒れ、
いつまでも水溜まりのような酷い赤濁りが収まらなかったり、
大雨が降って極度に塩分濃度が低下していたり、
シラス船が給油時にこぼした油が大量に浮いていたり、
大量のプランクトンが発生して赤潮になったり、
ターンオーバーによる苦潮が発生したりと、
浜名湖の天然海水が使えない状況になるときが多々あり、
(これが人工海水と違い、天然海水の安定しないところ)
そのために条件の良いときに採取した天然海水を
陸上イケスなどで循環させてストックしておく必要がある。
タコは海洋生物の中でも非常に知能が高く、
普通の魚類を飼育するのと全く違った魅力があるため、
アクアリストの中にはタコにどっぷりハマってしまう人もいる。
左衛門佐的にはタコの飼育は魚を飼育するというよりも
わんことかにゃんこを飼う感覚に似ていると思う。
左衛門佐もこの子を無事に浜名湖に返すまで、
タコの飼育を楽しみたいと思う。
どうやらこの小さな牡蠣殻の隙間を自分の棲み処と決めたようです。