前回の ”~生態編~” に続き、
今回は” ~採集編~” 。
クエの飼育を楽しむにはまずクエの幼魚がいなければ始まらないので
海に行って小さなクエを釣ってこよう。
いざ!!水槽に投入するクエの子供を捕まえに行こう!!
※①~クエの釣れる場所~
天然個体のクエの幼魚を手に入れるためにはまずクエの幼魚が居る場所に行かなければならない。
具体的に言うならばまず、
①神奈川県より西の
②太平洋側の外洋に面した
③黒潮に近い
④潮通しが良くて水が綺麗な
⑤漁港や岩礁帯
である。
この5つの条件を全て満たした場所ならほぼ間違いなくクエがいる。
①は残念ながら東北エリアより北になると
ほぼハタは居らず、ソイになってしまうので諦めるか、
ハタの代わりにソイを飼育してみよう。
最も重要な条件は②である。
外洋に面していること。
クエを採集しようとした場合、
②の条件が外れると途端に採集が難しくなる。
クエは湾奥エリアにはあまり居らず、
特に大都市に近い大阪湾や伊勢湾、東京湾などで狙って採集するのは難しい。
ただ、こうした場所でも他のハタの姿は見られたりする。
例えば伊勢湾奥の名古屋港ではクエの姿はほぼ確認出来ないが
キジハタはよく釣れたりする。
(現地ではキジハタをアズキマスという)
しかし、クエの場合は②の条件を満たすだけで
採集の確率が飛躍的に向上するのでどうしてもクエが欲しければ
時間をかけてでもこうした場所へ行くことをオススメする。
例えばここ浜名湖の新居海釣り公園みたいな場所。
遠州灘に面し、潮通しが良くまた湖なので幼魚の生育に適している。
(外洋に面した大きな漁港の中なども穏やかなのでクエの幼魚が定着しやすい)
特に今切口付近はテトラ帯や岩礁帯も多いので根魚も着きやすい。
クエの幼魚がよく釣れる浜名湖の新居海釣り公園。意外にも浜名湖はクエの幼魚が生息する全ての条件が満たされている。
海釣り公園のある今切口の大曲りを出ればそこはもうクエの産卵場がある遠州灘だ。
天然クエの幼魚を確実に採集するにはクエがたくさん居る場所に行くのが一番手っ取り早い。
※②~クエの幼魚が釣れる時期~
もうこれは確定条件として決まっている。
クエの産卵期が夏だからだ。
飼育に適したその年産まれの”当歳魚”を狙うのだから必然的に時期は秋になる。
干潮時の磯場でタイドプールにいるサイズの小さな稚魚~幼魚をタモで狙うなら8月でもいい。
10cm前後の最も飼育しやすいサイズの幼魚を釣りで狙うなら
年や地域によっても産卵時期に差があるが基本的には9月、10月、11月の3か月である。
12月によく採集できた年もあるので水温次第では年内なら採集は可能だ。
水温の下がる厳寒期はクエの食欲が極端に落ちるためあまり釣れない。
春は一応釣れるのだがその代わりちょい大きめの越冬個体になる。
(クエは冬季はあまり成長しないので最初から90cm水槽準備してるならこれでもいい)
なので水槽で飼育するのに適した小さなサイズを狙うならやはり秋。
ここ浜名湖でも9~11月はハタの幼魚ラッシュである。
毎日のようにカワイイ何かしらのハタの幼魚の顔を拝むことが出来る。
7~8cmほどの浜名湖産クエの幼魚。60cm水槽で飼うならこれぐらいのサイズから始めるのがいいかもね。
※③~クエの採集の仕方~
その① 磯採集でタモで掬う。
磯採集に適した海岸が近いなら8月頃にタモで掬って採集できる。
むやみやたらにガサらずにタイドプールの中をじっと観察し、
クエの幼魚が居るか居ないか確認しよう。
基本的にハタの子供は警戒心が薄いので
人間が見ていてもあまり気にしない。
もしクエやハタの稚魚や幼魚がいれば海草の周りを人目も気にせず
ホヨホヨ~と泳いでいるはずだ。
ここ浜名湖でも秋に桟橋周りでじっと水中を観察していると
クエの幼魚がウロウロしているのを見かけることがある。
両手に小さなタモと大きなタモを持ち、
追いかけて捕まえるのではなく、
小さなタモで追い込んで捕まえる。
岩の隙間に逃げ込まれないよう、
焦らないでゆっくり誘導しよう。
ハタの子供はそんなに動きが速くないので
捕まえやすい魚種だと思う。
この採集方法だとかなりサイズの小さいクエやハタの幼魚を捕まえることが出来る。
より小さなサイズが欲しい人は釣りよりも磯採集でやってみよう。
その② 港で釣る。
たぶん条件を満たした場所でこの方法で採集するのが一番手っ取り早い。
メバリングやアジングのようなミニワームを使ったルアーで狙うか、
メバルやカワハギ用の胴付き仕掛けを使った餌釣りで狙う。
大事なのはどちらの方法で狙うにせよ針は返しを潰し、
さらにヤスリをかけた完全なバーブレス仕様(かえし無し)にすることである。
食べる魚を釣るのではなく、飼育する魚を採集するために釣るので
せっかく釣ったクエの子供が死んでしまったら
わざわざ海まで行った意味がガチで無くなってしまう。
針は完璧なバーブレスに仕上げておこう。
バーブレスならば口ではなく口の中、
すなわち食道に針が刺さった場合でも魚へのダメージを最小限に出来る。
先の長いロングノーズプライヤを持っていこう。
ホームセンターで売っている工業用のものは太いので
釣り具屋で売っている細身の針外し専用のロングノーズを準備しよう。
ジグヘッドを使ったルアーで狙う場合は
フックをメバル用など超極細のものを使用し、
やり方はネットでよく紹介されている
キジハタゲームなどを参考にするとよいと思う。
クエのレンジはほぼキジハタと変わらないと思うからだ。
左衛門佐は2歳魚を狙うときはこのやり方でやる事が多い。
この釣りの良い点はどうしても餌釣りの針よりもフックが太いので
多少口には傷がつくものの、
胃袋までリグを呑まれて魚を殺してしまう危険性がほとんど無いことである。
バーブレスにさえしておけば、
釣れたらほぼ確実に家まで活きた魚を持って帰れる。
当歳魚を餌で狙う場合、
左衛門佐がよくやるのはカワハギ用の胴付き3本針仕掛けに
活きた小エビや小ハゼを付けて釣る方法である。
当然針はかえしを全て潰してバースレスにする。
針が小さくてやりづらいがかえしは完全に無くしておこう。
これを岸壁に沿って落とし、ゆっくりと歩きながらこまめに誘ってゆく。
アタリがあったら即アワセで口に掛ける。
絶対に送り込んではいけない。
口の中ならバーブレスにしておけばロングノーズプライヤがあれば
かなり奥までいかれてもほぼ助けることが出来るが胃袋までいかれたらアウトだ。
助けることは難しいので絶対に針を呑まれないようにしよう。
せっかくクエの幼魚を釣っても針を呑まれて殺してしまっては何にもならない。
クエの幼魚が釣れたらあらかじめ水を汲んでおいたバケツの中で針を外す。
やりにくければ魚を掴む方の手をしっかりと水で濡らしてから触ろう。
大気中で乾燥した手で絶対に触らない。
タオルでくるんで触るなど”問題外”である。
魚の表皮はデリケートなので人間の体温でも火傷をする。
魚に触るときはかならず魚と自分の手の間に一枚、水の膜を張った状態で触るのが基本である。
クエはかなり丈夫な魚だが水槽で飼育する魚の取り扱いは十分すぎるほど注意しよう。
クエの生息条件を満たした場所でこれらの方法で釣っていると、
クエ以外にも他の種類のハタの子供もよく釣れてくる。
実際のところクエの幼魚が釣れる確率は地域によってかなり変わってくる。
しかし西日本の太平洋岸ならば数の多い一般的な近海産ハタ6大種、
クエ、マハタ、オオモンハタ、キジハタ、アカハタ、アオハタのどれかには
必ずぶち当たるはずだ。
ヤイトハタ、アオハタ、オオモンハタの幼魚。ハタはどの種類でもカッコイイし、
飼育する楽しさはクエと何ら遜色はない。
ここはキジハタはよく釣れるけどクエはあまり釣れんな~とか、
この辺りはアカハタとオオモンハタばっかだよ~とか
そういう偏りはどうしてもあるのでクエに拘らないならば
地域によって釣りやすいハタの子供を飼育すると良いと思う。
カサゴと違ってハタはどの種類でもカッコイイし、
(ガッシーはカッコ良くはないけどカワイイんだよね!!)
飼育するうえでの魅力はクエとなんら遜色はない。
どの種類でも釣れたハタの子供を大切に育ててやるのがいいと思う。
ここ浜名湖ならクエ以外にもマハタ、アオハタ、オオモンハタの幼魚がよく採集できる。
左衛門佐も複数の水槽で毎年いろんな種類のハタの子供を飼育して楽しんでいる。
浜名湖で採集されたマハタの稚魚。
大きな目、白いストライプが可愛いマハタの幼魚。
カワハギ狙いのアサリの剥き身に食ってきたマハタの幼魚。
警戒色MAXの当歳魚。マハタはストレスを感じるとこのようなまだら模様になる。
かっこいいマハタの当歳魚。この体高の高さ、幅がマハタの最大の魅力だ。
マハタは浜名湖でクエを狙っているとクエよりもよく採集できるハタの一種で、
体色は地味だが幼魚にはカワイイ白い横縞があり、
水槽の中でもよく動き、人にもよく慣れ
体高があって見映えもするのでとても飼育に適したハタだ。
他のハタより目が大きいので愛嬌のある顔立ちをしている。
細身で精悍なクエとは対極に位置するハタで、
クエに優るとも劣らない魅力がある。
クエが”海底の王”ならマハタはまさにその名のとおり”ハタの王”という感じだ。
細身のハタが好きならクエ、幅のあるハタが好きならマハタと、
ハタマニアの中でも好みが分かれると思う。
クエに比べると少し神経質で水質や水温の変化に敏感というか
病気にかかりやすい気もするが決して飼育が難しいというほどではない。
以前左衛門佐が飼育していたマハタの幼魚。
非常に近い種にマハタモドキがいる。
これがまたよく似ていて特に小さな個体は判別が難しい。
よく尾から2番目の縞がハッキリしているか不明瞭かで見分けるようなことが
言われるがこれには個体差があり、
この幼魚サイズだとマハタでもハッキリしている個体もいれば
マハタモドキでも不明瞭な個体もいるのであまりアテにならない。
最も確かなのは尾びれの後端に白い縁取りがあるかどうかだが、
これまた幼魚のときは見づらくてオオモンハタほどハッキリしていないので
色の着いたバケツの中などでガン見して
よく確認しないとわからなかったりする。
もう水槽で飼育する際は全てマハタとしてしまってもいいんでないかと思う。
6~7cm、ちょうど水槽飼育に適した大きさのマハタの幼魚。カワイイ顔に似合わずやはり縄張り意識が強く、これも2匹同時飼育は出来ない。
幅のある当歳魚。クエよりも体高があり、体色は地味でも水槽内で非常に見映えがする。
オオモンハタは近海産6大ハタの中でも最も遊泳力があり、
水槽の中でも最も動きの多いハタである。
オオモンハタを飼育する際は必ずしも隠れ家は必要ないかもしれない。
近海産のハタにしては珍しく、尾びれが丸くない。
尾びれの後端にとても目立つ白い縁取りがある。
あずき色のスポットがとても可愛いハタである。
オオモンハタの幼魚。見た目は可愛いがこれまた縄張り意識が強く、同族はもちろん他のハタとの混泳は難しい。
以前左衛門佐が飼育していたオオモンハタの幼魚。
マハタとオオモンハタの幼魚。残念ながらこのペアも同時飼育は出来ない。
アオハタはアカハタと並び、底ベッタリ系ハタの代表である。
なので魚形はカサゴを少し細長くしたような感じ。
あまり動きが無く、隠れ家から出てこない個体もいるので
水槽で飼育するなら魚が観察しやすい隠れ家にした方がいいかもしれない。
ハタなのでやはり縄張り意識はあるのだが
他の種に比べると混泳させやすいハタである。
アオハタ同士やアカハタ、キジハタとなら
質の良い隠れ家をたくさん用意してやれば十分に混泳は可能。
マハタとのペアでも混泳に成功したことがあるので試してみる価値はある。
ただ、ダメだと思ったら魚がボロボロになる前に離そう。
ハタは相性の悪い魚同士は何度やっても上手くいかない。
浜名湖で採集したアオハタの稚魚。
アオハタの幼魚。小豆色の斑点とやや青味がかった横縞がある。
以前左衛門佐が飼育していたアオハタの幼魚。
キジハタとアカハタも地域によってはよくお目にかかり、
採集しやすいハタなのでオススメだ。
キジハタはオレンジの斑点が、アカハタは赤の縞模様が可愛く、
水槽で観察していてもとても楽しいハタだと思う。
ここ浜名湖ではこの2種は何故か数が少なく、
珍しいというほどではないがクエやマハタに比べると目にする機会は少ない。
浜名湖産キジハタの幼魚。オオモンハタと違いスポットは全てオレンジで背中に特徴的な黒くて大きな斑点がある。
地域によっては近海産6大ハタ以外にも珍しいハタが釣れることがあると思う。
特に南のエリアでは珍しいハタが簡単に採集できたりする地域もあるだろう。
もしそんなレアなハタが釣れたらぜひ飼育してみてほしい。
左衛門佐もここ浜名湖でいつかホウキハタ、イヤゴハタ、カケハシハタなどの
ゴールド系ハタが採集できないかな~なんて思いながら今でもハタの採集を楽しんでいる。
ホウキハタとカケハシハタは水産試験場浜名湖分場のデータによると
今まで浜名湖で確認された記録が無く、
もし採集出来たら浜名湖では初確認ということになる。
やや深海性の強いハタだけに採集は極めて難しいと思われるが
ここは魔境・浜名湖。
何が捕れてもおかしくない。
そんな夢を持ちながら採集するのもまた楽しいものだ。
浜名湖で採集したヤイトハタの幼魚。ここ浜名湖ではコモンハタ、シロブチハタ、ノミノクチなども確認されている。
非常に珍しい浜名湖産スジアラの幼魚。沖縄など温帯水域に生息するこのハタもごく稀に浜名湖に出現することがある。
※④~釣れた魚の保管~
さて、運よくクエやハタの幼魚が釣れた場合、
持ち帰るまでの保管の仕方も大事である。
まかり間違ってもビクやスカリの類を使用してはいけない。
ビクやスカリのネットは魚の体表に人間が想像する以上の大きなダメージを与えるため、
絶対に使用不可である。
エアレーション(ブクブクね)の効いた容器で保管しよう。
ただ、ハタの幼魚が釣れる時期はまだ暑い時期なので
水温が上がらないように容器の中の水はくどいぐらいにこまめに変えよう。
凍らせたペットボトルを浮かせて水温を下げてもいい。
またさらに運よくハタが複数釣れてしまった場合、
容器の中でしばらく喧嘩しないか観察しよう。
ほぼダメージ無く釣られたクエの場合、
いきなりバケツの中で他のハタに噛みつく可能性がある。
釣られたショックでおとなしくしてくれていればよいが、
元気な子だとバケツの中で無双してしまうことがあるので
その場合は容器を分けるなどちょっと工夫しよう。
魚が小さいので容器自体は小さめでもよいが、
その代わり2セット、3セットぐらいあると
いきなりバケツの中が修羅場になっても焦らなくてすむ。
海から家までが長距離で時間がかかる場合は道中水温が上がらない工夫をしよう。
まあ車の場合はしっかりエアコンを効かせていればまず大丈夫だと思う。
ハタの種類は高水温にはそこそこ強い種が多い。
せっかく釣ったクエの幼魚。なんとしても良い状態で持ち帰ろう。
さて、無事にクエの幼魚を家に連れて帰ったら
いよいよ水槽に投入である。
次回は”~飼育編~”ということでクエを飼育するうえでの
注意点を解説したいと思う。
かっこいいクエの飼育はとても楽しいよ!!



