忙しい釣りの合間を縫って水槽のクエのために
老体に鞭打ってせっせと浜へ繰り出して小エビを採集してくる左衛門佐。
ゼエ、ゼエ・・・。
こ、こんなんじゃ左衛門佐の体力がもたんぞ!!
さて、そんな水槽の主であるクエちゃんは今日もタコツボの中で
餌の小エビが落ちてくるのを待っている。
エビ、落ちてきませ~ん。。。
ところでこのクエという魚。
釣り人ならばほぼ絶対にその名を知っているというほど知名度の高い魚である。
しかし、その馴染みの無さからほぼ普段の釣りには関係ない!!
という人がほとんどなのではないだろうか。
「はい、俺いつもクエ狙ってます!!」
なんて人も相当の沖釣り師か、ごっつい磯釣り師以外にはいないだろう。
にも関わらずこのクエという魚が注目されるのはその旨すぎる食味ゆえである。
違う魚をクエと偽装して販売してしまった!!という偽装事件が起こるほどの
”超高級魚”であるこの魚は白身魚の中では、
「究極の美味。」
とランク付けされる、最上級の食味をもった魚である。
はっきり言ってこの魚の食味を上回るほどの白身魚は日本近海にはほぼ存在しない。
クエを釣ってみたいという人はほとんどいなくても
クエを食べてみたいという人はたくさんいると思う。
そんな全くもって身近ではない魚の研究をして何になるのか?
という疑問を抱きつつも左衛門佐は10年以上前から
浜名湖におけるこの魚の生態と習性を観察してきた。
理由の一つはそんな貴重な魚の稚魚や幼魚が浜名湖にはわんさといたこと。
そしてもう一つの理由はただ単純にこの魚がカッコ良くて好きだったからである!!
左衛門佐が今まで浜名湖で採集したクエの稚魚や幼魚は数百個体にもなる。
もちろんその全てを飼育したわけではない。
せいぜい40~50個体ぐらいだ。
しかし、水槽で飼育しながら観察する中でいくつか解ったことがある。
最もよくわかったことはその食性だ。
もちろん左衛門佐が飼育したことのあるクエの稚魚や幼魚は全て浜名湖産、
しかもほとんどが1cm強~10cmまでの小さな個体ばかりである。
ただ、浜名湖は湖でありながら海水という、
全国でも極めて稀な環境下であるのであくまでも浜名湖産の個体の・・・
という注釈はつくのだが。
左衛門佐が来たので期待してタコツボから出て餌を待つクエの幼魚。
左衛門佐の調査飼育で得た結果によると、
天然のクエの稚魚・幼魚が最も好み、旺盛に捕食する餌はエビとイカである。
エビ大好き。
しかしこれが不可解なことに、
浜名湖産のカサゴが主食としているカニは何故か食べない。
与えても見向きもせず、与えたカニは食べられることなく
ずっと水槽の底を這いつくばっている。
左衛門佐は特に釣りものが無い時期、
カサゴの穴釣りをするのだが、
釣ったカサゴをイケスに入れておくと120%の確率でカニを吐き出している。
浜名湖のカサゴの主食はカニなのだ。
カニ嫌いだけどエビは大好き。
甲殻類全てが好きなワケじゃない。
そしてもう一つ。
イカ大好き。
浜名湖には今となっては貴重なアマモ場がたくさんあり、
そのアマモにはたくさんのヒメイカが着いているのだが、
5cm以下の小さなクエの稚魚や幼魚はこのヒメイカを好んで捕食するのだ。
浜名湖沖の沖根で産卵されたクエの卵はふわふわ漂いながら仔魚となり、
上げ潮に乗って浜名湖へとやってくる。
ほとんどはこの仔魚の状態で他の魚に食べられてDEADするのだが、
運よく生き残ったクエの仔魚は浜名湖にたくさんある藻場へと定着し、稚魚となる。
(しかし、何故か極小クエがよく採集できる海藻はアマモでは無い)
ここでヒメイカやコシマガリモエビなどをしこたま食べ、
5cmを超えると今度は岩礁帯や岸壁、漁港周りなどをウロウロするようになる。
先日左衛門佐が桟橋で見かけた個体もこのように藻場を離れ、
岩礁帯で餌を捕りながら成長している途中の個体だ。
(もちろんウチのタコツボに入ってる子も。)
このサイズの個体は魚食性がそれほど強くないように思える。
小ハゼを与えると食べる。
・・・食べるのだが。。。
なんというか、そこそこ腹一杯なら食わないんじゃないかな?
って感じ。
明らかにエビやイカを食う時に比べるとテンション下がってるように思える。
コイツかよ~って。
結局、先日捕って与えてみたネンブツダイも食べなかった。
眼中にも無いって感じ。
小さなヒイラギが捕れたので与えてみたがガン無視。
海底の帝王は小さな頃からプライドも一人前らしい。
魚は食べるには食べるが美味しいものを選ぶようだ。
腹が空いていると凄い勢いで食べるがお腹一杯になると見向きもしなくなる。
ON/OFFはとてもはっきりしている。
クエはハタの仲間の中では比較的よく動く魚である。
浜名湖でよく見かけるハタ類の中ではオオモンハタ、マハタに次いで3番目に動きがある。
順番でいくとこんな感じ。↓
オオモンハタ>超えられない壁>マハタ>クエ>キジハタ>アカハタ・アオハタ
クエはオオモンハタのように常に回遊して泳ぎ回るでもなく、
アカハタやアオハタのように底ベッタリでもなく、
お気に入りの縄張りというか住処の上をホバーリングしている。
そして障害物に沿ってツィ~と泳ぎながら餌を探している。
マハタも同じような動きだがクエよりも上層まで、
より遠くまで動くが瞬発力はどちらもそれほど大したことはない。
それでもマハタの方が若干射程距離は長いと思う。
やっと餌にありついたぜ!!
この魚を飼育していてとても良いことは見た目が非常にカッコイイことである。
まあヒラメやマゴチがカッコイイと映る左衛門佐の美的感覚はオカシイので
普通の人には理解できないかもしれないが。
以前、10cmほどのマハタを比較的長く飼育していたことがある。
ハタ類が好きな左衛門佐は、
「なんつーカッコイイ魚なんだ。」
と毎日惚れ惚れしたものだが、このクエもマハタに負けす劣らずカッコイイ魚だ。
特にこの子のように12cmもある立派な個体を飼育したのは左衛門佐も久しぶりなので
(12cmが果たして立派かどうかは別として)
マジマジとこのサイズを観察してみて、いい魚だな~と思う。
こんな巨大魚の子供を育む浜名湖の環境は貴重なんだな~と再認識。
この環境ができるだけ長く保たれるよう、願うばかりだ。