昨年飼育していたハタの子供たちを浜名湖に返してからずっと空いたままになっていた水槽。

 
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今年はまたこの水槽で研究の再開もかねてヒラメを飼育しようと思っている。
 
ヒラメはマゴチと並び、左衛門佐が愛して止まない最も好きな海水魚の一つで、なぜか子供の頃からこの平たく変な顔をした不思議な魚が大好きで仕方なかった。
 
でも名古屋育ちの左衛門佐にとって身近な海といえば名古屋港。
よくて知多半島であり、少年の頃の左衛門佐にとって憧れのヒラメとマゴチはとても遠い存在だった。
初めてヒラメとマゴチを釣った日の感動は今でも昨日のことのように覚えている。
 
浜名湖の畔に居を構えて十数年。すぐ目の前にヒラメとマゴチがわんさかいるという環境を活かし、幾度となくこの2種の魚の飼育と研究を繰り返してきた。
 
とくにヒラメについては素人飼育ながらまだ透明な浮遊生活状態の仔魚を着底させ、2~3cmの稚魚まで育てる方法も確立した。
 
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左衛門佐がまだ1cmにも満たない透明な仔魚から育てたヒラメの稚魚たち。
 
水槽という狭い環境下でヒラメの生態が全て見えるわけではないが、それでも飼育を重ねることによって釣りに繋がる多くの情報を得ることができた。
 
最も大きな発見だっだのはヒラメの餌に対する選り好みである。
その当時飼育していたヒラメ(多分飼育当時で20cmぐらいだったと思う)に大きさの違う3匹のキスを同時に与えるという実験を何日か(多分5日ぐらいだったと思う)にわたって繰り返してみたことがある。
キス(大)はヒラメの口には入るが飲み込むにはちと辛いサイズ。
キス(中)はちょうど1匹でお腹が満たされるかなという人間から見て最適だと思われるサイズ。
キス(小)は3匹ぐらい食べないとお腹が満たされないんじゃないかというサイズ。
 
この実験を行う上で重要なのはヒラメをお腹の空きすぎた状態にしないということである。
あまりにお腹が空きすぎた状態だと餌のキスを入れた瞬間に反射的に目の前の餌に食いついてしまい、実験にならないからだ。
 
これは驚きの結果がでた。
ヒラメは実験を行った全ての日において、キス(小)から食べた。
実際にヒラメを飼育してみるとわかるが、ヒラメはかなり詳細に餌を観察し、どれを食べるか吟味してから捕食する。
 
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小さなヒラメの幼魚。水槽で飼育しながら観察するにはこれぐらいのサイズからが最適だ。
 
もちろん1匹だけ投入した場合は当然大きなキスでも食べる。
しかし、大きすぎる餌は数時間後、未消化のまま吐き出してしまうことが多かった。
これはおそらく1匹で満足するような大きな餌は胃に大きな負担がかかるからであろうことが推測できる。
ヒラメは理想とするならば1匹の大きな餌で胃を満たすより、小さな餌をたくさん食べて胃を満たしたいのだろう。
 
これをヒラメ釣りの格言である「ヒラメ40」という言葉に当てはめてみると、釣りの格言としては正しいがヒラメの生態を表す言葉としては間違っていることになる。
すなわちヒラメは飲み込むのが遅い魚だから40秒かかるということ自体が間違い。
ヒラメの理想とする大きさの餌を捕食するのにかかる時間はいつも1秒か2秒である。
一口でバックンチョと飲み込めるサイズの餌がヒラメにとって理想の餌の大きさなのだ。
 
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口に入るからといって必ずしも胃袋まで入るとは限らない。
 
しかし、厳しい自然環境下ではいつも選り好んでいられるほど餌が豊富とは限らない。
大きな餌しかいないとか、好きじゃない種類の小魚しかいない状況では選り好みしている場合じゃないこともあるだろう。
 
そしてこの餌を選り好みするヒラメの習性が”ヒラメが群れる”大きな理由になっているのだ。
ヒラメが群れることに対して懐疑的な人もいる。
もちろんヒラメは捕食者であるのでイワシやアジのように身を守るために群れるワケではない。
ヒラメには自分にとって理想とするサイズと種類のベイトがあるのでそれに近い小魚の群れが通るとそれを追いかけていく。
一般の人が思っているよりずっとヒラメは遊泳力のある魚であり、ベイトの群れを追って回遊することで知られている。
単純に自分の気に入ったベイトの群れを追いかけていると同じようにこのベイトを気に入った他のヒラメ達もぞろぞろと付いていき、群れになるとワケ。
 
これを踏まえるとより大きな餌を使うことで大きなヒラメが釣れる可能性が高くなるのは間違いない。
大きなヒラメほど「一口サイズ」のベイトの大きさが大きくなるからだ。
釣りの場合は後で未消化で吐き出すかどうかなど関係ないし、とにかく針が掛かるレベルまで咥えてくれさえすればいいので40秒待ってでも魚が掛かればいいという考え方からするとヒラメ40という格言は的を得ていると言えるだろう。
 
もちろんサイズだけではなく小魚の種類も非常に大きな選り好みの理由になる。
上記の実験をしたヒラメと別の個体を飼育していたときに、キスとアジを同時に投入してみたことがあるが、このときはいつも必ずアジの方から先に食べた。
もちろんこの結果だけでヒラメはキスよりもアジの方が好きだと言う気はないが、少なくともこの個体には好みというものが確実に存在したので選り好みができる状況にある場合はヒラメは好きな方の餌に食いつく生き物であるのは間違いない。
 
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ヒラメの目は驚くほど細かく餌となる小魚を観察している。
 
もうひとつ。
 
ヒラメは食べる餌だけでなく居場所にも強いこだわりを持っている。
浜名湖で流し釣りをしている釣り人なら皆、嫌というほど知っていると思うがヒラメの好ポイントと呼ばれている場所では潮さえよければいつもヒラメが釣れる。
左衛門佐にも1番ミオに100%近い釣果率を誇る必殺の場所があるが、「ここ、いつもヒラメ釣れるなぁ。」と思うような場所は誰にでも一つや二つはあるはずだ。
 
ヒラメはカレイに比べると何と言うか・・・局地的な場所を好むというか、まんべんなくいるというより同じ場所にまとまっている傾向が強い。
1匹のヒラメが居心地が良いと感じる場所は他のヒラメにとっても良い場所と感じるのだろう。
 
この傾向は既に稚魚や幼魚の頃から現れていて、底着したばかりの1cmほどの稚魚は泥質の底を好むのだが浜名湖の場合、非常に狭い水域にまとまって出現する。
3cmほどまで成長すると今度は砂質の浜へと移動するのだがある時期になるとまた特定の浜にだけそこらじゅうにウジャウジャいるといった感じでやはり大量に出現するのだ。(注:もちろん全て天然魚。浜名湖では6月下旬~7月上旬にかけて海浜公園で養殖稚魚の放流が行われるが天然ヒラメの子供が大量に出現するのはいつもこれよりも前。)
ヒラメの仔魚はゆらゆら漂いながら生活をしているのでこのように狭い水域にまとまって着底し、出現するのは不自然に思える。
現に同じ底物のイシガレイやマコガレイの稚魚は表浜名湖のあらゆる砂地で大量に出現し、そこかしこで姿が見られるのだがヒラメの稚魚に関しては同じ時期にかなりの砂浜で調査したにも関わらず、他の浜では単発的にしか採集できなかった。
 
浜名湖におけるヒラメの産卵についてはまだ未知な部分も多いのでまた新たな発見があったらこのブログでも紹介したいと思う。
釣り上げたヒラメの卵巣をみる限り今年はまだ産卵を意識した個体は少ないように思える。
 
今年飼育するヒラメの成長速度や捕食行動の様子については動画をアップして考察したいと考えているのでこういうのが好きな人は楽しみにしていただきたい。