お経というのは、こうも人を眠くさせるモノなのか・・・
・・・と俺はつくづく思った。
般若心境(心の中でこう呼んでいる)は未だやまない。
霊魂を呼び出す儀式というモノは、案外時間がかか-
パタッ・・・
! えっ、なに!?
・・・霊が宿った合図!?
桜木さんはふっと・・・倒れた・・・。
安らかに、眠りに就いたような顔で・・・。
・・・やすらかに・・・ねむったような・・・
「痛みさえ感じなかったでしょう・・・頭部を正確に一撃で打ち抜かれてますから・・・」
「あぁ、奴ら【Rippers】一味の殺り方だ」
・・・・・・・・・・・・
あの事件のとき、刑事やら鑑識やらが、そう話していた。
アイツの死相・・・とでも言うのか、
顔は至って、「安らか」だった。
・・・・・・まさか、死んで、ないよな?
一抹の不安がいやでもよぎる。
額には嫌な汗がにじみ出ていた。
「-桜木さん? 桜木さん!?」
揺さぶっても目を覚まさない。
息の漏れる音も、聞こえない。
「桜木さん・・・? 起きて!」
「うっ・・・」
・・・起きあがった。髪が顔に掛かる・・・。
そして-
「あ、れ、アタシ・・・男に、撃たれて・・・意識を、失って・・・」
邪魔な髪をどかした・・・。
・・・・・・・・・美波の顔。
南郷 美波【ミナミ】、まさにその人。
一瞬、泣きそうになったのをこらえた。2人とも。
「・・・レ、ン? ・・・アタシ、一体-?」
「美波・・・!」
「ねぇ、ここっていった-えっ、ちょ、急に抱きつかないでよ!?」
無意識に、抱きしめていた。
-し、下心はないからな・・・!
「・・・く、苦し・・・は、離しなさいってば!!」
「ぐぁっ!」
突き飛ばされた。
ケンカしたときみたいに。
「で、ココどこ? 何このカッコ? アタシに何があったの? ・・・全部説明しなさいよ、レン!」
懐かしい、あの怒り顔-
・・・って、えっ? セツメイ?・・・
「何も、知らないのか?」
「知るわけないわよっ!」
怒りを通り越して、もはや困惑の表情である。
ほんとに何も分からないようだ・・・。
まさか・・・死んだイキサツを本人に話すコトになろうとは・・・。
-オカルト研究会のヤツに話しても、信じないぞ。
俺は、隠し立てせず、素直に白状した。
別れたとき撃たれて死んだこと。
美波の親に叱責されたこと。
裁判で犯人は極刑となったこと。
美月と出会ったこと。
「そう・・・だったんだ」
「あぁ」
「-寂しかった?」
「-お前もだろ?」
ドキッとした様子。
時々見せる困り顔。
「えっ、べ、別に-」
「“別に”ってコトはないじゃん」
「・・・寂しくなんてなかったんだから・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
そして、俺は、本題に移った。
美波に会えると分かったときから、話そうと決めていた。
-俺が、“予見者”であることを。
「美波-」
「ん、なに?」
「じ、実はさ・・・」
「・・・・・・・・・知ってたのよ」
「実は俺・・・へ?」
な、何を知ってるって言うんだ?
「レンがフツーの人じゃないって」
-今度は俺が困惑の表情を浮かべることになった。
続