「・・・また出ない」
「いいんだって、無理なら」
「いやっ、ゼッタイ会わせるんだから!」
さっきから電話にかじりついてる美月。
何をムキになってるかというと・・・
『ちょっと考えてみたんだけど・・・』
何?
『・・・ちょっとの間なら、会わせてあげられるかも』
だれ、に・・・?
『その美波さん』
・・・・・・まさか・・・・・・
・・・・・・いくら“力”があっても、死んだ人にはもう-
『会えそうにないならこんなコト言わないよ!』
・・・アイツに・・・
・・・あえる・・・
・・・どうしたら・・・アイツに?
『よぉし、この美月ちゃんにドーンと任せなさいっ!』
「元気付けるためにハッタリ、かましてくれたんだろ?」
「ち、ちがうちがう」
(違うわりに妙に慌て顔だぞ?)
「でも、しばらく連絡取ってないからなぁ・・・協力してくれるかなぁ・・・」
「-で、一体誰に電話してんの、さっきから?」
美月はちょっとコッチを向いただけ。
意識が握っているケータイに戻る。
「知り合いの霊媒師さん、の娘さん」
「れ、れ、レーバイシ?」
「そっ」
短く返事して、耳を澄ます。
「ん~・・・あっ、やっと出たぁ、もしも~し!」
都合のいいことに
店内には、俺たちと高弘さん夫妻以外誰もいない。
大声を上げてもとがめる人はいなかった。
「ひっさしぶり~、元気してた?」
ただ、美月の声が頭に響くらしく、高弘さんが顔をしかめている。
しかし、「お客さんの笑顔のためなら、死をも覚悟するマスター」、
それを自負する高弘さんは作り笑いをしていた。
「で、なんですぐ出てくれなかったの?・・・え、ちょうど霊媒中だった・・・?」
-美月が遠い世界の人に見えてきた・・・。
「ふんふん、そう・・・その依頼人さんも大変な人生だったんだねぇ・・・」
・・・は、話が見えてこない・・・。
「生き別れた姉妹と再会したのは霊媒を通して・・・何か感動的・・・」
うんうん・・・ってどこがだよっ!!
「-うん、お仕事頼みたいんだ。・・・え!いやいや、ちゃんと依頼料は出すよ!」
律儀だなぁ、美月。俺なんかのために-
「親しき仲にも礼儀あり、だよ。桜木【サクラギ】ちゃん。依頼人にちゃ~んと出させるから」
・・・前言撤回。
「-うん、今度の土曜日に会える?・・・オッケー!依頼内容はそのとき話すネ」
いくらぐらいだろう・・・依頼料。トホホ・・・
「じゃ、そこんとこ、よろしくっ!」
・・・? 妙にどこかで聞いたことある台詞だ。しかも最近・・・
電話を切った美月の顔は、とても嬉しそうだった。
「アポ、頂きましたっ!」
「あ、ありがとう・・・妙なことにならないといいけど・・・」
「ん?何か言った?」
「・・・べつに」
最近メモをつけだした俺は、
土曜日 レイバイ 自腹
小さめの字でこう書いた。
『なんか暗号みたいな書き方』
そう、か?
メモを見られていたようだ。
それはともかく、
アイツに会える。かもしれない。
その期待で胸が溢れていた。
続