―場数を踏むたび「サイファー」の強さが目に付くようになった。
ひたすらに強い。
味方でさえも欺ける自由な飛び方をしていた。
金の為に飛ぶ心構え、それでいて気品さえ感じられる機動。
歴史が許したならば、彼こそが「鬼神」になっていたかもしれない。
1989 12/20 B7R, Belka
轟音が響き渡る円卓―
鳴り止まないアラート―
<<―よし、十二分のデータが取れた。貴君らの協力に感謝するよ、ブルーン隊>>
<<…なんだ、コイツら本当に訓練機なのか…?>>
<<「無心で飛ぶ飛行機」って噂だけど…あれはもはや無人じゃないかしら…?>>
<<あのパイロット…それに僚機も…ベルカ出だけあって恐ろしい腕だ>>
訓練機・ホークで散々追い掛け回されたベルカ兵達は思わず感嘆する。
隊長機の以外のHUDに投射される[SHOT DOWN]の文字。
私が「落とした」のが一機、残りの二機はサイファーの「手柄」だ。
相手側の隊長が意地を見せ、結局「落とせなかった」のだ。
<<番犬達もご苦労だった。報酬は期待していい>>
妙に機嫌よくイーグルアイが無線で話しかけてきた。
<<ただの機動データ集めにそんな報酬が?>>
<<若い人材にキッチリ教え込むには、現行機では古すぎる。
高度なマニューバに慣れさせる意味もあって訓練機の改良が必要なのだ>>
<<俺らはオンボロのF-1で扱かれたんだがなぁ>>
<<ガルム、あれは良い機体だろ。操舵が素直で>>
そんな他愛も無いことで無線を無駄遣いしながらヴァレー基地への帰路に着いた。
1989 12/20 Valals Air Base, Ustio
『よう相棒、調子はどうだ?』
「いつも通りさ」
戦闘機を降りるときは決まって一言交し合う。
大抵地上でも二人で行動していた。
旧宗主国出身の兵を諸手を挙げて歓迎する人間の方が少なかったし、
私もラリーも人見知りだった。
それが、私たちの日常だった
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