データを信頼することの問題点
データや数字をもとに様々な判断をしようとするのは、
ビジネスの世界では当然求められることです。
しかし、厳密な科学的なデータと、それ以外には、信頼性という
意味で大きな違いがあることも十分に理解しておく必要があります。
特に、経営的な判断のために集められるデータには、
そういう類のものが非常に多く含まれているのですから。
ここでひとつ、当たり障りのないアンケートを例に考えてみたいと思います。
これはキリンビバレッジさんが販促企画として行ったもので、
【無糖の紅茶はおにぎりに合う】 アリ 91%
この調査方法は、
量販店店頭および企業内社員食堂等での試食試飲会にてアンケートを実施。
しかも、119,118人に聞いたと書いてあります。
おそらくはどこかの広告代理店が立てた企画なのでしょうが、
まず、そもそもこの調査は、目指す結論ありきとなっています。
そうすると、調査をする側は、別にやらせをするつもりもなく、
厳正に調査をするつもりであったとしても、自然と、望む結果が出るように
行動をしてしまうものです。(これは科学実験においても生じる問題です)
まず、調査をする側は、
アンケートでの聞き方などの設計において、そのような誘導をしてしまいがちです。
ここは私の想像ですが、たとえば、
「おにぎりと無糖の紅茶はあうと思いますか? アリだと思う。 そうは思わない。」
と訊いたとすると、YESかNOで聞かれるよりも、はるかに 「アリ」と答えやすくなります。
しかも、どちらともいえない、や わからない といった中間回答の選択肢がないですから、
どちらかを選べと言われれば、やはり、「アリ」にする人が増えると想定されます。
(アンケート調査では、3択、5択などを使うのが一般的です)
さらに言えば、「キリンの午後の紅茶が」ではなく「無糖の紅茶がどうか」と【一般化】して
聞くことでも「アリ」と答える率を高めることができます。
このように、不正ではなく、ちょっとした”工夫”をするだけでも、回答を望む方向に誘導することは
容易なことです。(※今回の実際の調査のやり方がどうだったかはわかりません)
しかも、調査をするときに、「主催者」が試食や試飲をさせて、その場で聞いていると
すれば、食べたり飲んだりさせてもらった人が悪い回答を書くのには、心理的な躊躇が出ます。
さらにいえば、主催者がどのような答えを期待しているかが分かっていますから、よほどのへそ
曲がりでもないかぎり、別に自分の主義主張にかかわるような回答でもないですし、アリと答える
方向に流れていくことが想像されます。
このように、人が介在して得られるデータの場合、
(この場合は、特に、調査する側も、調査される側も人なので二重ですね)
データそのものの信頼性については、かなり疑ってかかる必要が出てくるわけです。
別にこれは特殊なケースではありません。
よく政府機関や、新聞社やNHKが行う世論調査などは、その典型ですね。
上記の調査はまあ当たり障りのないものでしたが、これらはそういうわけにはいきません。
消費税に対する意識調査、原発に対する意識調査などなど。
データを重視することは悪いことではありませんが、
その問題もしっかり頭に入れておくべきでしょう。
ところで今回たまたまこのアンケートを題材に使わせてもらいましたが、
販促手段としてされていることに別に目くじらを立てているつもりも、
問題だと言っているわけでもありませんので誤解なきよう^^。
(私も、無糖の紅茶なら、おにぎりに合わなくもないだろうな、と思いますし)
しかし話はそれますが、この販促企画、その狙いほど効果を上げているんでしょうかね?
亀梨くんの魅力をうまく使った方が、よいCMが作れたのではないかと。