「五輪書」に学ぶ その2
宮本武蔵は「五輪書」の中で、
「ひとりで10人に勝ち、千人で万人に勝つ道理に何の差があろうか。」
と述べている。
つまり彼は、(自分のように)すごい能力の高い兵士を訓練して育て、
その数を増やしていけば、それを軍隊での戦いにも適用できる。
つまり「個人レベルの戦い」を、「組織レベルの戦い」にまで適用できると考えている。
・・・と書くと、すでになんかおかしいと思いますよね? 今回はここにツッコミを入れてみます^^
ランチェスターの法則では、
一騎打ち型の接近戦の場合、単純に兵力数の差が残存数。
(例;A軍500人対B軍300人なら、500-300=200がA軍の残存数)
B軍が勝つためには、200人以上増やすか、武器の性能を1.7倍以上(3/5以上)にすると考える。
つまり、個人の能力差はほぼ無視^^ 兵士の数と、武器性能。
また戦国時代で考えても、
豊臣秀吉は、圧倒的な兵力差で戦に挑んだ。
常に敵の5~6倍の戦力を用意。
しかも小田原城攻めのように、
短期ではなく長期間にわたる戦に持ち込み、
より確実に兵力差で勝てるようにした。そりゃ負けません(笑)。
また織田信長は、鉄砲や三間槍などの、より有利な武器を利用して勝利を収めてきた。
いずれも「個人の能力」に依拠する戦い方ではない。
むろん個人の訓練が不要なわけではないが、
しかし、武器性能>個人の錬度、 そして 兵力差>個人の錬度
である。
また、宮本武蔵クラスのスーパーマンを千人も育てることが果たしてできるか?
時間・費用・人材など、すべてにおいて実現困難だろう。
このことは 営業組織の作り方も全く同じ。
たくさん人を採用して使い捨てにしろ、教育なんかするなと言っているのではない。
優秀な、あたかも社長の分身になるような営業マンを育てようとするのではなく、
そのかわりに、一定の人数、武器、戦い方などを工夫し、もっと現実的に営業力強化すべきということ。
実は、ここを勘違いしている経営者も少なくない。
ちなみに、宮本武蔵は、自分の後継者をひとりもまともに育てられなかった。
無理だと思う。それが現実。
「ひとりで10人に勝ち、千人で万人に勝つ道理に何の差があろうか。」
ここに、宮本武蔵の限界がある。
宮本武蔵は現代に置き換えると、天才バッターだが経営・指導者には向かないタイプか?^^