カシンです。これは、アタシ(50代)が考えたいことを書いているブログです。

今週は「性別ってなんだろう」を書いてます。前回は「外見と性別」について。

外見で言えば、「性別なんて股間を見ればすぐわかるだろう」と思われる方もいるかもしれません。

これがあからさまに難しいのが、性分化疾患です。「出生 4500 例に 1 例」とされるので、日本の年間の出生数をざっくり 100 万人とすると、毎年 200 人くらいでしょうか。

日本小児内分泌学会「性分化疾患の診断と治療」(2016 年、PDF ファイル)。
http://jspe.umin.jp/medical/files/webtext_170104.pdf

「普通と違う」のをまとめて「性分化疾患」と呼ぶので、具体的には多種多様です。外側と内側が違う場合も多いです。つまり
  • 外性器は女性型なのに子宮も卵巣もない
  • 外性器は男性型なのに子宮や卵巣がある
これはほんの一例です。ただ、内と外が一致しない場合もあるくらいだから、性自認の文脈では下半身と脳が一致しない場合があるのもアタシは納得です。

ときどき勘違いされることがあるのが、女性アスリートが「男性」の話。性自認の話とはちょっと違います。もともと外性器が女性型で、女性として育てられた人。スポーツしてたら筋肉ついた、と思ってたら、実は本人も知らずに、体内にあるのが卵巣ではなく精巣で。その男性ホルモンで成長につれて男性化が進み。国際大会で染色体検査して、初めて「アナタは始めから男性でした」って言われる…。
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今回はこちら、2010 年の学術論文の簡単な紹介です。無料公開されてます (露骨な画像注意)。


稀な性分化疾患の中では比較的多い、「21-水酸化酵素欠乏症の 46,XX 性腺異形成」について。

性染色体型は女性で、体内には子宮も卵巣もあるのに、外性器が男性化します。特にこの論文では、外性器がほぼ完全な男性型の場合です (ただし、生殖細胞は卵巣にあるので、陰嚢は空です)。

女児として育て、乳幼児のうちに外性器は女性型に手術してしまうのが、標準的な医学的対応です (将来、子宮も卵巣も機能して、子作りが可能になる場合もあります)。

一方で、他の選択肢もあり得る、というのが、この論文の趣旨です。

つまり、同じ疾患がありながら、何らかの事情で男児として育てられ、性自認男性で成人し、(女性と) 結婚して性生活もある人も実はいる、というわけです (外性器も、見た目だけじゃなく、実用になる)。

子供は作れません。しかし、手術で作った性器よりも、自然な感覚がある分、性生活の満足度は高い。ただし、健康に男性として生きるためには、どこかの時点で体内の女性型生殖腺を取り除くことになります。

本人の性自認が、親の意向 (育てられた性) に相関する、という報告もあり、興味深いところです (ただ、この疾患の場合でも、育てられた性と、のちの本人の性自認が一致しない場合はあります)。

親の協力が得られるなら、幼児の時点で決めずに、手術は本人の意向を待ってはどうだろう。といった趣旨の論文です。

現在は技術的に不可能だけれども、そういう「男性」から取り出した卵で子供を作ることも、将来の可能性としてはあるかもしれない、と、ちらっと書いてもあります。

「性別」ってなんだろう、の、「生物学的」「染色体的」意味も、思ったよりややこしいというお話でした。
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お読みいただきありがとうございました。

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