これまで約200台に取り付けて頂いている、おはゆに61製電圧可変型MOSFETレギュレター。お陰様で多くのユーザー様にご好評を頂いています。現在、W1クレージーズ様にもお取り扱いいただいております。

しかし、一部のユーザー様から、レギュに装備しているヒューズが切れるとの申告を頂いています。その場合は設定電圧を下げて解決する場合もありますが、それでも解決しない車両があります。

ヒューズは10Aのものを用いています。

理由はWのダイナモの定格出力が100Wだからです。

100Wということは、12V出力で、100÷12＝8.33Aながれるため、10Aで切れるようにすればよいと考えたからです。メインのヒューズではなく、あくまでダイナモ出力の上限を定めるためのヒューズです。

ノーマルのレギュレターにはカレントリミッター機能が付いていますので、そのようなヒューズは付いていません。当レギュにはその機能の代替としてヒューズを設置しているのです。市販されているザップ〇トさんのICレギュはヒューズなしで販売されていますが、私の知り合いの業者様は私と同様にヒューズを取り付けたうえでリリースされています。

本ブログを読んで、そのICレギュをお使いの方は、レギュ出力部にヒューズをお付けになることをお勧めします。ダイナモに過負荷をさせても、ダイナモを保護できません。

私のW3では、開放式でも密閉式でも鉛バッテリーの場合は一度もヒューズが飛んだことはありません。設定電圧は14～14.5Vです。

これで夜間、灯火類を付けて、ブレーキを踏みながらウィンカーを付けるという最大負荷をかけたときでもヒューズは飛びません。

ただ、ショーライバッテリーを取り付けた時は14Vで無灯火状態でもヒューズが飛びました。満充電で使用開始しましたが、それくらいの電圧でダイナモから10Aも出力させるのは嫌だと思い、それ以降リチウムイオンバッテリーを使うのはやめました。

バッテリーによって、充電電流が大きく変わることを知りました。

さて、マツレギュユーザー様の一部から、鉛バッテリーもこの10Aヒューズが切れるとのご申告がある場合があります。

その場合の対応は以下の通りです。

①設定電圧を下げていただく。

　これまで13.5～8Vくらいまで下げてヒューズが飛ばなくなったという事例もあります。

②車両の負荷を確認いただく。

　ヘッドライトのW数を大きくしている場合、ライト点灯時にダイナモ出力電流が10Aを超える場合があります。W数を小さくしていただくこともご検討いただいています。

③バッテリーの状態を確認いただく。

　充電電流が大きい場合があります。バッテリー容量を大きくしているとその可能性があります。電流テスターがないと測定できませんが。Wの場合は9AHバッテリーを使用されている方がいます。そのバッテリーでも全く問題なく使える車両もありますので、それがNGというわけではありません。ただ7AHバッテリーが標準装備の車両ですので、それに戻すということも選択肢としてお示ししています。

④車体配線の状態を確認いただく。

　車体配線の劣化等でリーク電流が流れている可能性があります。ただ、どこかでリーク電流が数Aも流れていたら、発熱して電線が変色していたり、少々発煙しているようにも思います。

原因がどこかにあると思います。

レギュは電流は制御していません。あくまで電圧を制御しています。

設定電圧をＡボルト、バッテリーも負荷の一部と考え、車両全体の負荷をＢオームとした場合、大雑把に計算すれば、オームの法則により、Ａ÷Ｂ（A/B)がダイナモ出力電流が求まります。

よって、出力電流が大きくなって10Aヒューズを断としてしまう場合は、出力電流を小さくするため、分子であるＡを小さくする（設定電圧を下げる：上記対応①）か、分母であるＢを大きくする（負荷を小さくする：上記対応②～④）、を対応としているのです。

しかしながら、10Aヒューズが切れた場合にユーザー様にご心配やお手間を取らせてしまっているため、何か改善できないかなあとはずっと思ってきました。

そこで、今回その対応を改めて考えてみました。

ヒューズをどのように設ければ良いか、です。

以下、現在の検討結果です。

①ヒューズの劣化防止の観点

　長期に渡ってヒューズの劣化が少なく寿命保証するためには定格電流に対する低減が必要ということが分かりました。推奨する低減係数は 0.5～0.8。

定常電流≦0.5～0.8×ヒューズ定格電流

ヒューズ定格電流≧定常電流／0.5～0.8＝1.25～2×定常電流

定常電流を100W/12V=8.3Aとすると、ヒューズ定格電流＝10.4～16.7A

②品質規格の観点

　ULは、アメリカに本拠を置く試験・検査認証を行う企業。UL規格を持つ製品は試験合格品のため、安心・安全・保障が約束されています。ディレーティングを考慮した場合の定常電流は下記計算式から算出できるとのこと。

・電流ディレーティングはヒューズの種類や安全規格によって適用される値が変化する。UL認定製品の多くは75%を適用している。

・温度ディレーティングはバイクで使用する場合は1～0.98程度と想定。

温度ディレーティングを0.98とすると

ヒューズの定格電流≧　1.1×100W/12v÷（0.75×0.98）＝12.5A

①と②を鑑みると、ヒューズは12A～15Aが適当ということになります。

現在設置している10Aは、安全上問題になる値ではないものの、厳しい値だったように思います。

さて、上記で検討してきたヒューズは普通のヒューズです。

それとは異なるスローブローヒューズという選択肢があることも最近知りました。

モーターなどの誘導負荷に電気を流す場合、突入電流が流れます。この突入電流は非常に大きい値であり、普通のヒューズではすぐに切れてしまいます。そこでこのような回路を保護するためには遅延性をもつヒューズが用いられます。それがスローブローヒューズ（直訳すると、遅く溶断するヒューズ）です。

ヒューズの値を超えると容易に溶断するヒューズではなく、数倍の時間切れません。当然ずっとそのような電流が流れると切れますが、起動時など大電流が瞬時流れる場合には切れないという特性を持っています。

それを使ってみるということも検討しました。

実際、10Aヒューズが切れたというユーザー様がこのスローブローヒューズを使ってみたところ、同じ10Aでもスローブローヒューズでは切れなかったという結果が得られています。

その方は、ライトのW数をアップし、バッテリーも9AHにされています。10Aの普通のヒューズでは切れてしまってお困りでしたので、いい結果が得られたと思います。

そこで、10Aのスローブローヒューズも選択肢になるかな、と思いました。

ただ、少し引っかかるところがあります。

そもそもスローブローヒューズは、誘導負荷に対して使用するものです。

この図の右側はスローブローヒューズの特性図です。

タイムラグとは遅延を意味します。

バイクの負荷は基本的には抵抗負荷ですので、ヒューズには通常型を使うのがセオリーだと思います。スローブローヒューズも良いとは思うのの、本来は抵抗負荷に使うべき普通のヒューズを用いる方が定石かと思っています。

ただ、現在使っている10Aヒューズはミニ平型です。この仕様では12Aはありません。15Aならあります。

ガラス管ヒューズだと12A仕様があります。スローブローヒューズはガラス管型なので、ヒューズフォルダーをガラス管仕様にしておけば、両者の入れ替えも簡単にできます。ただ、ガラス管12Aは通販では簡単に入手できますが、近くのホームセンターでは売っていないと思います。

選択肢①　入手容易性を考えると望ましいのは、ミニ平型の15Aです。

選択肢②　ヒューズの許容値を考えると望ましいのはガラス管12Aです。その場合、スローブローヒューズの10Aに交換することも容易です。

さて選択肢①か②か、悩みどころです。

こちらに続きます。