セミトラのMOSFETを故障させてしまった車両に取り付けていたマツレギュ。これも同時に故障したとのことでした。元々XS650で順調に稼働していたところ、TX650に移設したところ現象が起きたそうです。
セミトラの故障原因は既に考察したところです。
ここでは電圧可変MOSFETレギュレター(マツレギュ)の故障原因について考察してみたいと思います。
XS650,TX650系は、XS650SPを除いて、レギュレターの種別はフィールドコイルプラスコントロールタイプです。
マツレギュではTYPEⅡとしてリリースしています。
マツレギュでは電圧監視線(メインオンで12V加圧)の電圧が設定値を超えると発電OFF、設定値を下回ると発電ONをするよう設計してあります。要するにオンオフを無接点で切り替えて一定の電圧を出力するようにしているということです。チリル式レギュレターでは、それをリレーを動作させて機械的接点により行っています。機械的接点と電子機器による無接点の制御を比較すると、後者が圧倒的に安定して出力を制御できるのは容易に理解できると思います。
さて、そのマツレギュですが、今回の故障状況をお伺いすると、電圧のコントロールが出来ていない、つまり過電圧となりメインヒューズが飛んだ、とのこと。制圧できていないということは、上述した、設定値を超えると発電OFFの制御が出来ていないということです。
返送されて調査したところ、やはり制圧出来ていませんでした。試験装置から入力電圧を上げて行って15Vを越えても発電を止めません。
この原因は主に三つの素子の故障で現れます。
①ツエナーダイオード・・・一定の電圧を超えると電気を通す半導体
②トランジスタ ・・・指令信号が入力されると、電気を通すスイッチ(小電流タイプ)
③MOSFET ・・・同上(大電流タイプ) (表紙の写真はMOSFETの例です)
大概①か②ですが、今回は③でした。
①と②は、マツレギュ取付け時の配線方法や取扱いに起因して起きることがあり、順次対策を組み込んでいるところです。③はほとんど例がありません。
③が故障する原因はいくつかありますが、セミトラのMOSFETを壊した車両ですので、おそらく原因も同じではないかと思います。つまりノイズです。どうもXS,TX系は電源が相当ふらついているのではないかと推察します。実測してみないと断言できませんが。
電源が相当ふらつく=電圧が急に大きくなったり小さくなったり、変動が瞬時に大きく表れるということです。そうすると、マツレギュはそれに対応しようとして超高速でオンオフを行おうと”頑張って”しまいます。その頑張りすぎで壊れているのではないかと、かなり簡単に説明するとそういうことではないかと思うのです。
MOSFETのスイッチングロス、というやつです。単にオンオフを繰り返すだけならタフな電子部品ですので持ちこたえます。ただオンオフをするかしないか微妙なところで入力電圧がうろうろすると、オンオフの効率が急激に落ちてしまって発熱したりするわけです。電子部品にとって熱は天敵です。あるところを超えると、瞬殺されます。
ですので、電子部品を使っている装置は、それまで普通に動いていたのに急に壊れた、ということが起きるわけです。今回のマツレギュ故障も、おそらくそうかと。
その対策としては、セミトラと同様になります。XS、TX系はイグニッションコイル、コード、キャップを別車両用のものに取り換えることが望まれます。しかし、それはユーザー様にとってご負担となります。そこで、当方では電源電圧を安定させるためのフィルターを開発中です。
今回のユーザー様にはそれをお付けして返却します。
結果が楽しみです。
⇒ その後、順調に稼働しているようです。良かったです。