↑描くの遅すぎにも程がある。。
もうケーキの売り尽くしセールすら終わってる感じですけど、強引に上げました。お正月絵も、お正月気分がきれいに吹っ飛んだ頃に、上げると思います…
締め切りがある絵は本当に苦手です。
例によってフィクションです。
(そしてコメント欄は閉じてあります)
卒業後、総合病院の緩和ケアチームに配属されて、3度目の冬を迎えました。
↓2度目の冬
緩和ケアチーム。それは主に、もう助からない患者の心身のケアを行う部署です。
のんびりおっとり(言い換えるとぼーっと)してるけれど、トローンとした笑顔で周囲を和ませてしまうこの子にとって、ここほど適材適所な職場は無いのでは?とパパは最初、思ったのです。
でもこの子にとって、看護師のスタートアップはあまりにも険しい道でした。
慢性的な人手不足の中、日々ドタバタの中で仕事を覚えなければならず…しかも機転を利かせて優先順位を決め、仕事を回さなければならない。更に夜勤・早番・遅番がごちゃ混ぜ。そんな激務に耐えかねて人が一人、また一人去ってゆき、人手不足に拍車がかかる。…
どんくさくてうまく仕事を進められないから、残業も凄まじい。この子は翻弄され、性格のキツい先輩に叱り飛ばされ、頭が真っ白になり…悪循環にはまってゆきました。
通勤の間、勝手にぽろぽろ涙が流れるようになり、やがて心身が音を上げてパニック発作で倒れてしまった。
パパもこの子も、もう限界よね、無理やんね、と退職を覚悟しました。何度も何度も。
でもその度に、この子はいつのまにか立ち直って職場へ向かっていきました。
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そんな日々の中。この子はいつの間にか泣き言を言わなくなりました。それどころか、日々フットワーク軽く過ごすようになりました。
急に読書を始めたり免許を取りに行ったり(コロナ禍の間はさすがにじっとしてたけど)わずかな余暇を楽しそうに過ごす姿に、パパは「ようやく仕事を覚えて、ちゃんと仕事できるようになったんやね。すごいなあ、人間の適応力って。……」と安心していました。
つまり油断していました。
この子の心は突然崩れる。この事がパパの意識から抜け去っていました。
…実は、前触れがありました。
夜にこの子からパパにLINEが来て、この頃気が重くて無気力で、余暇に何もしなくなったというのです。
軽い鬱が入って来てる。。。このサインを放置してはいけないと直感したパパは、仕事のあとこの子の了解を取って部屋を訪ねました。
鬱は心の風邪。誰でもかかる可能性があって、それでいてこじらせると重く苦しむことになり、命にすら関わる。
一緒にお菓子を食べて、この子の話を聞きました。意見やお説教はせず、ただただ聞いて、時折話を少し広げてまた収めて、とにかく聞きました。
「…ありがとう、ちょっとすっきりしたよ。」この子の言葉に、パパはとりあえず安心したのですが…
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パパが工場で脚立に上っていた時、個人スマホの着信音が。見ると、あの子でした。何?何があった?!…
「もしもーし」
「……あ、、パパ?……ごめんね、、、…仕事中に……」
泣いていました。
「……私、今日、、、私、、、休んでもいいかな?…、、 ……○◆…*δ☆ξ……」
涙声を要約すると、心がキツい、とにかくキツい、パパなら(うつ病と強迫神経症の経験者やから)わかってもらえると思った、という事でした。
1日休みをもらった翌日、LINEで様子を伺うと「今日もしんどいけど、大丈夫。仕事いけるよ」とのことでした。
心が折れたきっかけは、(本人も言ってたように)驚くほど些細な出来事でした。
去って行く後輩へ餞別を渡す時間が迫る中、輸血バッグ(血が入った袋)の交換時間に…焦りが募っていた時、あ!その餞別、持ってくるの忘れてた‼︎そして場が「えーーーっ?」て空気になった。…たったそれだけのことでした。
問題なのは、それまでに積もり積もっていた過剰なストレスでした。
激務の中、後輩の4人のうち3人が退職。この子が多忙の中、仕事を手解きして来た子達でした。
看護師一人が受け持つ患者がまた増えた。しかも患者には最近よくいる、立場の弱い人に横柄に振る舞うアレな人達が混じっている。
ナースコール(患者が看護師を呼び出す)がかかってから行くのが遅いと怒る患者。ちゃんと世の中の情報に関心を払っていたら、看護師の仕事が大変なのは知っていて当然なのに、自分の無智をふてぶてしく看護師にぶつけるのです。(パパはそう思う)
そんなこんなをこらえつつ、人の命が懸かっている重い仕事をさばき続ける…当然、身も心も消耗していき、ある日、心の糸がプチっと切れる。
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今のこの子には、一つの希望があります。この冬が、看護師になって3度目、という事。つまりあと一息で、「総合病院勤務3年」のキャリアが手に入るのです。世の中で一人前の看護師として認められる一つの目安です。
もう少しで、一人前の看護師として新天地へ飛び出していける。収入は減るけれど、夜勤も急患もない看護師の職種だってある。
お世話になった人達には申し訳ないけれど、そんな人達だって、この子がつぶれたら同情してくれても責任は取らない。人には適材適所というものがある。やから、もういいよ。君はよくがんばったよ。。
そうは言いつつ、この希望を保険にして、このままあの病院に残るかも知れないし…パパはこの子に進退をゆだねる事にしています。
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先週この子に会ってみると、ちょっと出かけるね!…と言って、普段のあのトロトロ笑顔でドアを出ていきました。
この子の笑顔にだまされてはいけない。この緩い緩い笑顔の足元は、薄い氷の上をおぼつかなく駆け回っている事を忘れてはいけない、とパパは自分に言って聞かせるのでした。
「…ただいま〜。」開いたドアから吹き込む冷たい風と入れ替わりに、例のユルユルにこにこ顔が、クッキー持って帰ってきてくれました。
コロナ禍はオミクロン株が騒がれるまではひとまず収束気味でしたが、医療従事者への負荷が軽くなったわけでは決してありません。
クリスマスも正月もなく、限界すれすれで戦う全ての医療従事者に、心からお礼申し上げます。
今年もズージーをかまって下さった皆様、大変お世話になりました。本当に皆様優しい方ばかりで、和みと力を沢山頂きました。
来年もよろしくお願い致します。よいお年をお迎え下さい。