第12話『愛すべき者達のために....』
溝端「おっ!おえええええええ....」
迫田「バカモン!刑事のお前が吐いてどうする!」
溝端「すっ、すみません....」
迫田「しっかりしろ!」
ゴシップ週刊誌「まいじつ新潮」編集長の園子温と記者の菊池風磨が成田悠輔(ハエ怪人)により殺された翌日....
警視庁捜査一課の迫田孝也警部と、部下の溝端淳平巡査が現場検証に立ち会っていた。
園子温と菊池風磨の異常なまでに無惨な死体を目にした新人刑事の溝端淳平は、その凄惨さに吐き気を催していた。
迫田「それにしても酷いな....。一体どうやったらこうなるんだ?まるでアメリカのホラー映画じゃないか....」
溝端「おえっ....。おえっ....。この人達、相当恨みを買ってますよね....。きっと おえっ....。その誰かの犯行ですよ....。おえっ....」
迫田「おえおえ うるさい!そのくらい分かっている!」
迫田警部も溝端巡査もそれがゴルゴムの仕業だとは知る筈もなく、全く不可解な猟奇殺人事件だとふたりは思った。
????「いえ、ですからこれはゴルゴムの仕業で....」
制服警官「ゴルゴム?何を言っとるか!」
迫田「何だ!騒がしいぞ!」
制服警官「迫田警部、申し訳ありません!ちょっとコイツが....」
制服の警官が誰かと揉めていた。
警官と揉めていたのはまだ19くらいの青年で、青年は警官の静止を振り切って現場に入ろうとしてたのだ。
迫田「君!何を考えてるんだ!出て行きなさい!」
????「だから、これはゴルゴムの仕業なんですよ!」
迫田「いい加減にしたまえ!ゴルゴム、ゴルゴムと、ワケの分からない事を言うんじゃない!」
迫田にしてみれば、そう言うのは当然である。
ではその、現場に入ろうとしていた青年というのは....
南 光太郎(左)、白石 麻衣(右)
麻衣「光太郎、駄目だよそんな事しちゃあ!すみません!彼にはよーく言って聞かせますから!」
やはり、それは南光太郎だった....
光太郎「でも麻衣、これはゴルゴムの仕業なんだし....」
麻衣「もう!そんな事 今ここで言ったって仕方ないでしょ!」
光太郎「はい....」
光太郎と一緒に白石麻衣も居たが、光太郎は麻衣に怒られていた。
迫田「まっ、まあ....。君が彼に注意してくれるんだったら別に良いけど....。あっ、お嬢ちゃん、気をつけて帰ってね。(ニコッ!)おい男(光太郎)、貴様さっさと失せろ!💢」
光太郎「................」
迫田は早稲田大学卒の秀才で、準キャリアの警部である。
警視庁捜査一課きってのキレ者だか、麻衣には少し甘いのだろうか?
溝端「警部、鼻の下伸びてますよ....。あっ、鼻血も出てる....」
ポカッ!
溝端「痛てえ!(泣)」
溝端は余計な言葉を滑らせて、迫田にシバかれてしまった....
麻衣「ねえ、光太郎....。奈々未さんにはどう伝える?信彦さんの事....」
光太郎「こんな事、奈々未さんには言えないよな....。でもずっと黙ってるわけにもいかないし....」
麻衣「そうだよね....」
その後 光太郎と麻衣は、行きつけのハンバーガーショップに場所を移していた。
奈々未....
それは秋月信彦のガールフレンド、紀田奈々未の事である。
紀田奈々未は麻衣と同い年で17歳、現在高校2年生。
信彦と奈々未との出会いは今から1年以上前、喜多川ボクシングジムのエース藤ヶ谷太輔と、その取り巻きである今岡和寿と佐野勇斗の3人に絡まれていた所を信彦が助けたのだった。
後日 奈々未は、そのお礼を言う為に信彦を訪ねて来た。
奈々未「ごめんなさい!私ひとりでさっさと逃げてしまって....」
信彦「気にしないで....。それよりも君が無事で本当に良かった....」
奈々未「それから本当にありがとうございました!何かお礼をさせてください!」
信彦「いいよ、そんな事....。(笑)」
決して信彦は、奈々未に何か見返りを求めたわけではなかった。
しかしそれでは気が済まないとあまりにも奈々未が言うもので、ふたりで食事に出かけた。
だが信彦は、支払いは全て自分が行った。
奈々未「でも、それじゃあ....」
信彦「いいって!俺の方こそ君と過ごせて楽しかったんだから!それだけで本当に充分だよ!(笑)」
信彦としては、その一度きりのデートで終わるつもりだった。
しかし帰り際....
信彦「あっ、あのさ....。んと、何て言うか....。もしまあ君さえ良ければなんだけど....」
奈々未「それって、つまり....」
信彦「ぼっ、僕と!もう一度デートしてくれませんか!」
何とも格好悪い告白の仕方だった。
しかし奈々未はそんな信彦の優しさを感じ取っていて....
奈々未「はい....」
そして正式に、ふたりの交際が始まった....
奈々未「そう....。そんな事が....」
光太郎「信じられない話かもしれないけど、でもこれは本当の事なんだ....」
やはり、このまま黙っているわけにはいかなかった。
隠し通せるものでもない。
迷ったが光太郎と麻衣は、奈々未に全てを話す事にした。
奈々未は、信彦の身に起こった事に涙したが....
奈々未「私、信じる....。光太郎さんが言った事を....。それから信彦の事も....」
麻衣「奈々未さん....」
奈々未「信彦はきっと帰って来てくれる!だって私がそう信じなきゃ、信彦が可哀想....」
奈々未は麻衣の胸の中で泣いた....
光太郎「ごめん、奈々未さん....。僕のせいだ....。僕が信彦を巻き込んでしまったから....」
奈々未「ううん....。光太郎さんは悪くない....。麻衣さんだって悪くない....。誰も悪くなんかないよ。悪いのはゴルゴムなのだから!」
奈々未も現実を受け止め、信彦を信じ、そして彼女なりにゴルゴムと闘う事を決意した。
光太郎「奈々未さん。絶対に僕が、信彦を助け出してみせるから!」
バラオム「ハエ怪人、あまり目立つ行動はするな....」
成田「申し訳ございませぬ、バラオム様」
一方、こちらはゴルゴム神殿....
バラオム「物事には順序という物がある。以後、慎むように....。まあ しかし、中々見事だったぞ。それは褒めて使わす」
成田「ははっ!有難きお言葉!」
園子温や菊池風磨の命など、どうでもよかった。
ただ成田悠輔(ハエ怪人)は行動が軽率な部分が多々ある。
それをバラオムはたしなめたのだ。
バラオム「しかし、クモ怪人が敗れ去るとはな....。おのれブラックサン!」
人間に対しては見下して残虐なバラオムだったが、仲間(怪人)に対する意識は強かった。
バラオムはクモ怪人を爆砕したブラックサンに怒りを募らせた。
バラオム「仇は必ず取ってやるぞ、クモ怪人!」
ダロム(中)、バラオム(左)、ビシュム(右)
ビシュム「ダロム殿、シャドームーンは無事に搬送致しました」
ダロム「御苦労であった」
ゴルゴムは総本部であるゴルゴム神殿だけではなく、多数の研究施設や訓練施設を持つ。
それは東京都のみならず他県にも複数あり、シャドームーンこと信彦の蛹は宮城県仙台市にある研究施設に移された。
そこで、その後の経緯を見る事となったのだ。
バラオム「ここ(ゴルゴム神殿)に置いとくより、その方が安全ですからな」
ダロム「うむ。油断のならぬ者もおるでな」
ビシュム「特にあの男、剣聖ビルゲニア....」
三万年前の皆既日食の日に産まれ、かつて創世王に反旗を翻した剣聖ビルゲニア....
今でこそ創世王には忠誠を誓ったとはいえ、次期創世王になるというその野望はビルゲニアは捨てておらず、それはダロム達三神官も見抜いていた。
ダロム「シャドームーンの事、ビルゲニアには漏れぬようにな....」
バラオム「しかと....」
ダロム「シャドームーンの様子は如何かな?」
ゲイツ「順調にございます、ダロム様」
ダロムはテレパシーを使い、ゴルゴム仙台研究所(ゲイツ・ラボ)の所長であるドクター・ゲイツと会話をした。
ダロム「ではドクター・ゲイツ、シャドームーンの事、そなたに任せたぞ」
ゲイツ「はっ!大神官様よりお預かりしたシャドームーン、私の責任を持って必ずや復活させて見せまする!」
ドクター・ゲイツはダロム様大神官の信任厚き男だった。
ハーバード大学医学部出身の若き天才外科医で、ノーベル賞受賞も確実と呼ばれたが、怪しげな薬を開発して人体実験を行った事で医師免許を剥奪された。
そしてそれだけでは済まず警察から追われる身となり、そこへ手を差し伸べたのがゴルゴムだったのだ。
ゴルゴムとしては、ゲイツのような男は必要だと見なされたのだ。
ドクター・ゲイツ
ゲイツ「行き場を無くした私に新たな道を与えて下さったのがダロム様、この御恩は忘れませぬぞ」
更にゲイツはゴルゴムの秘術より、新たなる力も与えられていた。
つまりそれは....
ゲイツ「シャドームーンの覚醒をしかとこの目で見届ける事!それがダロム様の御恩に応える事だ!」
ゲイツもまたジーザス(ハイエナ怪人)と同様に、ダロムに心酔していた。
ゲイツ「皆の者、これより厳重体制でかかる!心せよ!」
ゲイツ・ソルジャー「ははー!」
ゲイツは助手である研究員達の他に、戦闘専門の戦闘員達を配下に持っていた。
ゲイツ配下のその戦闘員達は、通称 ゲイツ・ソルジャーと呼ばれていた。
十河「ひいっ!ビルゲニア様、お許しを!」
ビルゲニア「愚か者めが!あれ程シャドームーンから目を離すな!と命じておいた筈だぞ!なのに!」
こちらはゴルゴム神殿内にあるゴルゴムの闘技場....
ゴルゴムメンバーのひとりである十河氏真は、剣聖ビルゲニアにより激しい責めを受けていた。
十河氏真の本職は弁護士で、死刑反対派で通っていた。
しかし本心では、犯罪者なんぞは絶対的に悪で更生など出来る筈がない事くらい、十河とて最初から分かり切っていた。
ただその方が弁護士としての名を高め、金になると踏んでた為に死刑反対派となっただけで、正義感の欠片もなく純粋に私欲だけで被害者の無念を踏み躙る、醜き悪徳弁護士そのものだった。
その十河はビルゲニアに与しており、ビルゲニアよりシャドームーンの監視を命じられていた。
しかし大神官達にまんまと隙を突かれてしまい、シャドームーンを見逃してしまったのだ。
十河 氏真
十河「お許しを!どうか私めに、もう一度挽回のチャンスを....。何卒、何卒!」
ビルゲニア「フン。貴様のような役立たず、最早生かしておいても意味などあるまい。死ねい!」
十河「ひいいいいいい!」
ビルゲニアは能力無き者を嫌い、その者には容赦が無かった。
十河「たっ、助けてくれえええええ!大神官様あああー!」
逃れようと十河は一目散に駆け出した。
しかしそんな物は、全く無駄な抵抗だった。
ビルゲニアはひらりと宙を舞ったかと思うと、すかさず剣撃で斬りつけた。
十河「ギエー!ギエー!」
十河は身体をピクピクさせながら苦しみ悶えていた。
すぐには死ねぬようビルゲニアはわざと力を抜いていたのだ。
十河「ゲエエー!ゲッ、ゲギエエエー!」
十河の苦しむ様子を見てビルゲニアは、冷酷な笑みを浮かべていた。
ビルゲニア「何とも醜い....。そろそろだな、せめて奥義であの世に逝かせてやろう」
ビルゲニアは妖剣ビルセイバーを構えた。
ビルゲニア「ビルセイバー、ダークストーム」
ダークストーム....
風速200mの突風を起こす、ビルゲニアの必殺技である。
十河「あべし!あべし!うべべべ、えげろべ、べばべば、あろげげげ、ぼやげろぼばああああー!」
十河は肉片ひとつ残らず、粉々に消し飛んだ....
剣聖ビルゲニア(左)、国枝 一輝(右)
国枝「また技に磨きがかかりましたな、ビルゲニア様....」
ビルゲニア「こやつ如きに、つまらぬ....。私の狙いはブラックサン、そしてシャドームーンだ!」
国枝一輝ことヒョウ怪人はビルゲニア派の筆頭格で、言わばビルゲニアの副官的地位にあった。
国枝「それにしてもシャドームーンは、一体何処へ?」
ビルゲニア「まあ、それはとっくに検討はついておる。仙台のゲイツ・ラボだ」
国枝「えっ?」
ダロム達はビルゲニアを出し抜いたと思っていたが、実はビルゲニアには筒抜けだったのだ。
ビルゲニア「十河がしくじる事くらい最初から分かっていた。所詮 十河なんぞは駒、ただの目眩ましだ」
国枝「流石はビルゲニア様、お見事にございます」
では何故ビルゲニアは、シャドームーンの動向を知ったのかというと....
コウモリ怪人
ビルゲニア「御苦労であったなコウモリ怪人」
コウモリ怪人「お役に立てて何よりでございます、ビルゲニア様」
それはコウモリ怪人に探らせていたからだ。
コウモリ怪人、昨夜 俳優の鈴木伸之を襲って殺害したあのコウモリ怪人である。
実は鈴木伸之もゴルゴムからの誘いを受けていたのだが、鈴木伸之はそれを鼻であしらって断った。
その為ダロムは、コウモリ怪人に鈴木伸之の殺害を命じたのだ。
このコウモリ怪人は諜報役を得意とする怪人で、ダロム達三神官の命に忠実に従う。
しかし損得を第一に考え、必要とあらばダロム達と敵対するビルゲニアの命にも従う事も厭わない。
ビルゲニアは、そんなコウモリ怪人の性格を見抜いていたのだ。
ビルゲニア「また何かの折には頼むぞ。頼りにしている....」
コウモリ怪人「ははー!またのお引き立て、お待ちしておりまする」
国枝「してビルゲニア様、如何なされます?早速....」
ビルゲニア「まあ、待て。そう急ぐな。下手に動けば全て水の泡だ。暫くは知らぬふりをしておけ、よいな」
国枝「はあ....」
ビルゲニアは戦士としても一流だが、また優れた策士でもあった。
敢えて気づかぬふりをし、シャドームーンを泳がす事にしたのだ。
ビルゲニア「さてシャドームーン、覚醒めたその暁にはどう出るかな....」
ビルゲニアは、不敵な笑みを浮かべていた....
(続く)