第10話『BLACK!!変身!!』


ジェジュン「いい車乗ってるくせに、何をトロトロ走ってんだよ!(笑笑)」

小瀧「どうせショボい奴だろ。そんな奴が生意気してんじゃねえよ!(笑笑)」

ふたり組迷惑系ユーチューバーのジェジュンと小瀧望は、目に入った赤いスポーツカーへの煽り運転を開始し、その様子を動画に撮っていた。

ジェジュンと小瀧が乗っていたのは白の軽トラックであり、車のスペックは圧倒的にあちらが上....

しかしその赤いスポーツカーはややゆっくり目の安全運転。
対してジェジュン太刀はスピード違反も信号無視も日常茶飯事で、じわりじわりと車間距離を詰めていた。

ジェジュン「追い込んで、奴の顔拝んでやろうぜ!(笑笑)」

小瀧「泣いて、金出して謝るかもな!(笑笑)」


ジェジュン「おうおうおう!チンタラ走ってんじゃねえぞ!」

小瀧「コラア!早く行かんかボケェ!」

小瀧は窓ガラスを開け、赤いスポーツカーの運転手に暴言を吐いた。

ジェジュン「おい、コイツを投げつけてやれ!」

小瀧「ヘッヘッヘ!おうりゃあ!」

更に小瀧はまだ中身の入った飲みかけの缶ビールまで投げつけた。
それはスポーツカーに命中し汚れ、また傷も付いたかもしれない。

当然そんな事をされたら車を停めて怒って来る筈だが、ドライバーは何も言って来なかった。

ジェジュン「何だよ、ビビってんのか!」

小瀧「カァー!根性ねえなあ!」

ジェジュン達は煽り運転を止めようとせず、そのまま追い詰め続けていた。
それから暫くしすると前のスポーツカーは徐々にスピードを緩めてゆき、やがて高架下で停まった。

ジェジュン「停まりやがったな」

小瀧「さて、どんなのかな?」

ジェジュンと小瀧も軽トラックを停め、赤いスポーツカーの持ち主の顔を覗きに行った。

堀田 亜澄

ジェジュン「へえぇ。どんな抜け作かと思ったら、結構ベッピンじゃん!」

小瀧「こりゃいいぞ。面白くなりそうだ!」

赤いスポーツカーの持ち主は、堀田亜澄というキャリアウーマン風の若い美女だった。
大企業の秘書か何かだろうか?

ジェジュン「こんな車乗りやがって!お前、結構稼いでんだろ?」

小瀧「それとも金持ちのパトロンにでも買って貰ったのか?」

亜澄「................」

しかし堀田亜澄は目は虚ろ。
表情一切変えず、ジェジュン達の問いには全く答えなかった。

ジェジュン「おい!聞いてんだろ!何とか言えよ!」

小瀧「舐めてんのか!何ならその綺麗な顔に傷でも付けてやろうか!」

苛立ったジェジュン達は声を荒らげた。

ジェジュン(左)、小瀧 望(右)

ジェジュン「黙ってねえで何とか言え!」

小瀧「射てこますぞコラァ!」

ジェジュン達はこれまでにも嫌がる女性に散々絡み、その様子を面白がっていた。
しかしこの堀田亜澄はそんな様子を全く見せない。

その様子にジェジュン達は、自分達がコケにされてるのではと苛立っていた。

ジェジュン「コイツ、何にも言わねえぞ!キャー!とか何とか言ったらいいのに可愛くねえ....」

小瀧「何にも言わねえんだったらちょっとヤキでも入れてやるか。おい!スカしてんじゃねえぞ!」

小瀧は亜澄のスポーツカーに思いきり蹴りを入れた。
スポーツカーのドアに凹みが出来てしまったがそれでも亜澄は無表情だった。

小瀧「てんめえ!」

自分のした事を棚に上げ、逆ギレして頭に血が上った小瀧は、亜澄の髪を掴んで引きずり倒してやろうと腕を伸ばしたが....


小瀧「ぎっ!ぎいぃ!うぎやあああああああああ!」

ジェジュン「こっ!小瀧!」

一瞬の事だった!

見れば小瀧の腹部は大きく裂け、そこからはドボドボと腸が飛び出していた。

これは堀田亜澄がやったのだろうか?

小瀧「あがが!げええ!うぐげええええ!」

ジェジュン「ひいいいいいいい!」

当然 助かる筈はなく、小瀧は血涎を垂らしながらそのまま絶命していった。

ジェジュン「ばっ、化け物だああ!助けてくれええ!」

ジェジュンは逃げ出そうと背を向け、慌てて軽トラックの方へ走り寄ったが....

ジェジュン「うぇべろ!うぇべろげえええ!」

肛門に何かが突き刺さり激痛を感じたのも束の間。
それはそのままジェジュンを串刺しにしてしまい、ジェジュンの意識も途絶えた。

ジーザス

ジーザス「相変わらず、エグい殺し方だな....」

亜澄「あら、見てたの?」

その様子をゴルゴムのハイエナ怪人ことジーザスが見ていた。

ジーザス「綺麗な顔してやる事は下衆いなあ」

亜澄「だってムカついたんだもの。それに下衆は貴方だってそうでしょ」

ジーザス「確かにな。それは違いない....」

このふたりは仲間なのだろうか?
という事は堀田亜澄もゴルゴムの者?

亜澄「ブラックサンが動き出したみたいね」

ジーザス「お前、奴を討ち取れるか?」

亜澄「愚問ね。貴方、誰に物を言ってるつもり?」

ジーザス「では手出し無用だな。しくじるなよ、クモ怪人....」

それだけ言うとジーザスは、亜澄を残して姿を隠した....

南 光太郎

光太郎「しまった!遅かったか!」

ジーザスが姿を隠したその直後、入れ替わるように南光太郎がその場に姿を現した。

何かに導かれるように悪い予感を感じた光太郎は急いで駆けつけたが、既に犠牲者が出てしまった後だった。

ジェジュンと小瀧の無惨な屍を目にした光太郎は、そこにいた亜澄をキッと睨みつけて言った。

光太郎「お前か!お前の仕業か!答えろ!」

亜澄「フフ、だったらどうなの?」

この女は人間ではない!

憎き敵ゴルゴムの者だと、光太郎は直感的にそれを感じた。

光太郎「ゴルゴム!俺はお前達の思い通りにはならないぞ!お前達を倒して信彦を取り戻し、この地球の人達も守ってみせる!」

亜澄「貴方にそれが出来るかしらね。まあ、今の貴方相手に小細工は無用だから、私も全力で行くわよ。ハアアアアア!」

声を上げたと同時に、亜澄は眩い光に包まれた。
そしてあっという間に亜澄の身体は、この世の者とは思えぬ恐ろしく不気味な姿に変貌した!

クモ怪人(堀田 亜澄)

クモ怪人「ウゴオオオオ!!」

光太郎「こっ、コイツは!」

堀田亜澄の正体は、ゴルゴムのクモ怪人だった!

当然怪人なので、クモ怪人の身体は長身の成人男性ほどは有にある。

クモ怪人「シャアアァァ!」

クモ怪人は、その鋭い触肢を光太郎の頭上目がけて振り降ろした。

光太郎「食らうか!」

光太郎はそれを交わし、クモ怪人の腹部に蹴りを入れた。

改造人間となった光太郎の力は、常人を遥かに凌ぐ。
しかし相手は怪人である。
そのような攻撃ではなかなかビクともせず、このままでは到底勝ち目はない。

倒す術はただひとつ....

光太郎「許さん、ゴルゴム!」

光太郎は気を静め、そして拳を強く握りしめた。
革のバイクグローブが、ギシリギシリと音を立てた。

誰かにそれを教わったわけではない。

しかし光太郎はまたもや何かに導かれるかのように、そのポーズを取った。

そして....

光太郎「変身!」

光太郎はその言葉はを口にした....


仮面ライダーBLACK

時を超えろ 空を駆けろ この星のため

君は見たか 愛が真っ紅に燃えるのを
暗い闇の底で 危険な罠が待つ

信じる奴が 正義(ジャスティス)
真実の王者
夢を見続ける事が 俺のファンタジー
生きることが好きさ 蒼く浮かぶ宇宙(コスモ)

時を超えろ 空を駆けろ この星のため
熱く燃やせ 涙 流せ 明日という日に
仮面ライダー BLACK
仮面ライダー BLACK

黒く光るボディ ハートに血が通う
風が運ぶ歌に気持ちがふと揺れる

支配したがる魔術師(マジシャン)
妖しげな超能力(エスパー)
闘う時は 戦士(ソルジャー) 俺の誇りさ
この地球が好きさ 心許した友

永遠に守れ 若さ弾け この愛のため
現在を燃やせ 強く生きろ 今日という日を
仮面ライダー BLACK
仮面ライダー BLACK

信じる奴が 正義(ジャスティス)
真実の王者
夢を見続ける事が 俺のファンタジー
生きることが好きさ 蒼く浮かぶ宇宙(コスモ)

時を超えろ 空を駆けろ この星のため
熱く燃やせ 涙 流せ 明日という日に
仮面ライダー BLACK
仮面ライダー BLACK

仮面ライダーBLACK(南 光太郎)

蒼き光が光太郎の身体を包み込んだ。

そして光太郎はブラックサン、いや、仮面ライダーBLACKに変身を遂げた。

これが南光太郎の真の力だった。

クモ怪人「フッフッフ。遂にその姿を現したわね....」

BLACK「来い!ゴルゴム!俺はお前達を許さない!俺は仮面ライダーBLACK!」

光太郎はそれを仮面ライダーBLACKと名乗った。

クモ怪人「BLACK!死ねえい!」

BLACK「ぐっ!」

クモ怪人は口から糸を吐き、BLACKの身体はそれに絡まれてしまった。

クモ怪人「私の強靭なこの蜘蛛の糸。振り解くなんて無駄な事よ。ここで貴方を倒せば、私は大神官様に更なる出世を認めて頂ける....」

このままクモ怪人にやられてしまうのか!

しかしBLACKには、まだ奥の手があった。

それは....

仮面ライダーBLACK with バトルホッパー

BLACK「バトルホッパー!」

それは仮面ライダーBLACKの愛機であるバトルホッパーだった。

バトルホッパーはオフロードバイク型の生体メカで、ゴルゴムの科学力によって生みだされた世紀王専用のマシン。
体内にキングストーン〈太陽の石〉を持つ者しか操縦出来ないのだ。

バトルホッパーは自らの意思を持ち、BLACKの呼びかけに応えてその場に駆け付ける....

そして今 BLACKの呼びかけに応じ、この場に駆け付けたのだ。

クモ怪人「おのれい!」

駆け付けたバトルホッパーは走行攻撃で、BLACKの身体を捕らえていた蜘蛛の糸を断ち切ってしまった。
これでBLACKの身体は自由の身となった。

BLACK「これまでだ!ゴルゴム!」

クモ怪人「この私があ、こんな所でえ!」

BLACK「ライダーパァーンチ!」

クモ怪人「ぐわああ!」

クモ怪人はBLACKのライダーパンチを食らい、大ダメージを受けた。

更に....

仮面ライダーBLACK

BLACK「ライダーキィーック!」

BLACKは、トドメのライダーキックを繰り出した。

クモ怪人「ギヤアアアア!」

BLACKの必殺技ライダーキック、これはクモ怪人はひとたまりもなかった。

クモ怪人「うぐぐ....。私を倒したくらいで図に乗るな....。ゴルゴムの力はこんなものではない....。ゴルゴム、大神官様あああ!」

炎のような橙色の光がクモ怪人の身を包み、最期の言葉を発したクモ怪人はそのまま炎上し、欠片ひとつ残らず爆発した。

BLACKの勝利だ!

南 光太郎(左)、ジーザス(右)

ジーザス「やはりな....。クモ怪人如きでは倒せる相手ではないと思っていたよ、ブラックサン....」

光太郎「お前は!」

クモ怪人を倒した仮面ライダーBLACKの身体は、人間・南光太郎の姿に戻っていた。

そこへ、ハイエナ怪人ことジーザスが再び姿を現した。
ジーザスは退散しておらず、クモ怪人とBLACKとの闘いを見届けていたのだ。

ジーザス「クモ怪人が言ったように、ゴルゴムの力はこんなものではない!」

光太郎「お前も怪人か!」

ジーザス「フッ、お察しの通りだ」

光太郎「何故人間を見捨てて怪人なんかになった!そんなにしてまで5万年も生きたいのか!」

ジーザス「5万年の寿命だと。フン、そんなもんは最初から興味などない!俺が欲しかったのは力だけ。俺とてお前やシャドームーンと同じ、人間同様に歳を重ねて老いさらばえてゆく存在だ。俺だけではない。ゴルゴム怪人にも、俺やお前達のようにそういう奴は他にもいる」

光太郎「どういう事だそれ?俺も信彦も、この先孤独に5万年も生きなければならないのではないのか?」

ジーザス「何を言っているんだ?お前、杉本から何も聞かされてなかったのか?確かに正式に創世王様ともなれば5万年の時を生きる事にはなる。しかし今のお前とシャドームーンには、そのような物など無い!」


ゴルゴムの怪人は5万年生きるという....

そのゴルゴムの怪人に改造された光太郎は自分もそのように、愛する家族や友、見知った者は誰ひとりといない時を、ひとり孤独に生きなければならないのかと苦悩していた。

それはきっと光太郎だけではなく、秋月信彦も同じ筈だ。

しかしジーザスが言うには光太郎も信彦もそうではなく、普通の人間と同様に歳を重ねて生涯を終えるという事なのだろうか?

光太郎「本当なのかそれ?俺も信彦も?おい!分かるように説明しろ!」

ジーザス「お前、相手に物を頼む態度ではないな....。でも、まあいいだろう。分かりやすく説明してやるよ....」

ジーザスは光太郎に、創世王とふたつのキングストーン、そして怪人達の寿命の秘密を話した....


光太郎「そういう事だったのか....」

ジーザス「そういう事だ。まあ、俺には興味がない事だが、もし5万年生きたいと思うならキングストーンをふたつ手に入れる事だ。シャドームーンを倒してな、っておい!何が可笑しい!」

ジーザスにその話を聞いた光太郎は、不敵な笑みを浮かべていた。

俺も信彦も、5万年の時など孤独に生きなくてもいいんだ!
例えこの身はもう人間ではなくとも、これからも人間として、愛する者達と共に同じ時の中のみで生涯を終えられる!

ただそれだけで、光太郎も信彦も充分だった。

光太郎「ひとつだけ、お前に感謝するよ。よく話してくれた。だが借りを作ったとか、そんな風には決して思わない!俺はお前を倒す!そしてゴルゴムを滅ぼして、信彦も救い出してみせる!」

光太郎の改めてのその宣戦布告に、ジーザスも不敵な笑みを返していた。
闘いを好むジーザスにとっても、それは望むところだった。

ジーザス「やはり面白いな、お前....」

光太郎「来い!ゴルゴム!」

迷いが吹っ切れた光太郎は新たに闘志を燃やし、ジーザスに鋭い眼光を向けた!

(続く)