『アイルトン・セナ 詩集②』

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IN YOUR HEART(彼女の涙)

〝ただいま…″と〝おかえり…″

交わした言葉はそれだけだった

レーシングスーツを脱いで帰路に着き
出迎えてくれた彼女の胸…

僕はその胸の中で顔を埋めていた

彼女は何も言わず
そっと僕を抱きしめてくれた

本当は甘えたかったんだ
そう、ずっと以前から…

マシンのタイヤが磨り減るように
命さえも削れてゆく

聴こえないフリをしていたけど
やっぱり本当は怖かったんだ

サーキットに棲みつく
亡霊達の喘ぐ声が…

せめて今夜くらいは
その暖かな胸の中で僕を眠らせて

彼女の流した涙が
口づけの中に流れてゆく

ベッドの中の抱擁
汗にまみれた君の涙

その涙を笑顔に変える為に…

明日になればまた
僕は走り続けるのだろう

終わりなき、BORN  TO  RUN…

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MASTER OF RACING(セナの魂)

ここは何処だろう…

何も見えない
何にも聴こえない…

戦慄のダークブルーに閉ざされ
深い眠りへと堕ちてゆく…

貴方は誰?

何を言ってるのか、全く聴こえないよ

〝…………″

金属の破片が焼けるような匂いがした

貴方はまさか…

〝ヒキカエセ…″

えっ?来るなと言ってるの?

待って、行かないで!

煙のように消えたその人は
顔は見えず
足音すらも聴こえなかった

ただ、ロスマンズブルーの輝きが
闇の中で光っていた…

そして目が覚めた

気がつけば僕は
白いベッドの上に横たわっていた

そこには涙ぐむ彼女の笑顔…

そしてまた僕の頬も、涙で濡れていた

〝バカ…″と小声で抱きつく彼女

彼女の胸に顔埋め…

僕は〝ゴメン…″と小声で呟いた…

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DEAREST LOVE

(ふたつの愛が育んだもの)

愛すべき者達の為に、僕は走り続ける

君と…

そして

君と僕との間に産まれた新しい命…

ふたりの笑顔が見たいから
僕は今まで走り続けて来たんだ

因縁達が巣食う、魔のサーキットを…

それはまるで

クロスロードにそびえ立つ
いつかのロバート・ジョンソン…

そして

勝利の為に魂を死神に捧げ
1994年の5月1日に
サーキットの風に帰化したあの人…

今の僕のこの姿は
貴方達のそれに似ているのだろうか?

君の手に引かれていた幼き少年は
いつしか優しさと逞しさを併せ持つ
そんな子供に育ってくれた

僕が君を泣かせてしまった時には
彼は僕のことを責め立てる

僕にはそれが頼もしくも思えた

時折に君にしがみつき
君の胸で泣いている

そんな甘えん坊な子だけれど…

勇気のある子に育ってくれた

少し涙もろいそんな所は
多分、君譲りなのかなぁ?

君と僕とのふたりで育んだその愛を
ずっとふたりで見守っていこう…

悲しくなったそんな時には
ふたりでその手を繋いであげよう…

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全作詩:ZETA  BLUE
MODEL:白石麻衣、ZETA  BLUE
SpecialThanks:CG提供AKI15