『蒼き翼を受け継ぐ者』

〝もしも 俺の身に何かあったなら…″

僕は彼を この胸に抱き寄せた

僕の胸に顔を埋めた彼…

発する言葉も無い彼に
僕は続けてこう言った

〝ママのことはお前が守るんだぞ…″

涙で僕のシャツを染め
彼は強く 僕の胸を叩いていた

細いと思ったその肩に
セナの勇姿を重ねてた

抱きしめてくれるのが
ママの胸じゃなくて
お前はきっと嫌だろな…

でも僕はそんな彼を 
さらに強く抱きしめた

僕の頬にも
いつの間にか涙が伝ってた
彼にそれを見られるのは
ちょっと恥ずかしかったな…

友は
身体中を支配する痛みを麻痺させて
マシンを操り続けていた
やがて自分を迎えに来る
深い闇と闘いながら
サーキットの荒野を駆り続けていた

今の僕の目にも
その闇の正体が見えてしまう
そんな気すらもしていた
青白き朝の光の中
翼が燃ゆる予感がしていた…

ママの言うことはよく聞くのに
僕にはちょっと反抗的な彼

でも僕は そんな彼も愛おしくて
さらに強く抱きしめた

いつになく
僕に甘える彼の肩…

涙で震えたママの肩
そっと支えてやってくれ

涙で濡れたママの頬に
お前の胸を貸してやれ

守ってくれたママのこと

〝今度はお前が守るんだ…″

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