中電が裏金2.5億円で政界工作か | 山本洋一ブログ とことん正論

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元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!

 「海の日」の21日、気象庁は東海や近畿、九州で梅雨明けしたとみられると発表しました。今朝、家を出るときには子どもたちのラジオ体操に遭遇。いよいよ夏本番だと実感したところです。さて、三連休の方も多かっただろうこの週末ですが、こんな気になるニュースが報じられていました。


 「中部電力、政界に裏金2.5億円 元役員が証言」

 「中部電、4県の知事候補に裏金 愛知前知事認める」


 朝日新聞が20日、21日の2日にわたって一面アタマ(トップ)で報道。22日の朝刊からは「原発利権を追う 裏金システム」とする特集を始めました。事実かどうかはわかりませんが、朝日新聞が力を入れている調査報道であり、入念に準備されていた記事のようです。


 内容を簡単に紹介すると、中部電力で政界工作を長年担当していた元役員が、2004年までの20年間で約25000万円もの裏金を作り、知事や国会議員に渡していたと証言したもの。裏金は複数の建設会社などに拠出してもらい、中部電力は見返りとして工事を発注したり、発注額に上乗せしたりしていたとしています。つまり、裏金の原資は利用者の支払った電気料金です。


 愛知県の神田真秋前知事にも2回にわたって300万円と500万円を渡したと証言。そのうち1回は神田氏も受け取ったことを認めています。明確な政策誘導の依頼があったかどうかは不明ですが、裏金を使っていることから、何らかの後ろめたい目的があったのでしょう。


 朝日新聞が力を入れている背景には原発政策を批判したいという狙いもあるのでしょうが、それを差し引いても深刻な問題です。愛知・中部財界の中心役を担ってきた中部電力が裏金を政界工作に充て、政治家たちもそれを平然と受け取っていたというのですから。


 カネを受け取った政治家たちは当然のように中電の意向に配慮していたでしょう。いったんカネを受け取れば、彼らは立派な後援者。原発に限らず、中電の意向に反する政策を唱えることなどできなくなります。事実なら、あらゆる政策が歪められてきた可能性があります。


 元役員が証言に応じたのは、福島第一原子力発電所事故を受け、いつまでもこのような不透明な政界工作を続けるべきではないと考えたからだ、といいます。贈収賄などについてはすでに時効が成立していますが、だからといって「終わったこと」と片づけるべきではありません。


 中電による政界工作の全容を解明し、政治とカネを一段と透明化する契機としなければなりません。