名前の書けないビラって… 何ともおかしな選挙運動 | 山本洋一ブログ とことん正論

山本洋一ブログ とことん正論

元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!

 東京都議選が昨日から始まった。参院選ももうすぐである。都内に住む方は駅で候補者からチラシを受け取ることがあるだろうが、候補者の名前が一切書いてないことにお気づきだろうか。候補者の名前、もしくはそれを類推させる文言は一切禁止されているのだ。きょうはなんともおかしな選挙運動の話。


 選挙に向けた活動としては二種類ある。選挙期間前の政治活動(事前活動)と、選挙期間中の選挙運動だ。政治活動というのは「後援会への勧誘」などと銘打って自分の名前を売るもの。いわゆる「投票してください」というのは事前活動では禁止されており、選挙期間中のみ許される。これが選挙運動だ。この選挙運動の中で使える配布物というのは実は非常に限られている。


選挙で使える配布物

衆院選

(小選挙区)

参院選

(比例区)

首長選

地方議員選

ビラ

7万+4万枚

25万枚

500030万枚

なし

マニフェスト

制限なし

制限なし

なし

なし

ハガキ

35000

15万枚

2500枚以上

8008000


以上に挙げたのが法律で許された配布物。ここで地方議員選をみると、ビラの類は一切なし。実際には政党のビラを配ることができるものの、自分の名前は書いてはいけない。都議選でビラを受け取った方はよく見てほしいが、候補者を類推することは何も書いていない。私も4月に名古屋市議補選に携わったが、政党名しか書いていないビラを配りながらむなしい思いをしたものだ。


郵送物はハガキだけ認められているのもおかしな話だ。政府系の郵便会社を潤すためではないかとの憶測がされるのも無理はない。かつては「金持ちばかりが受かるのを避けるため」にこうした規制がなされたが、今や時代に合ってない。根本から改めるべきだろう。


選挙カーも時代に合わないと常に感じる。このブログをご覧の方で、「選挙カーでウグイス嬢が名前を連呼していたから」という理由で投票者を決めたことがある人はいるだろうか。ほとんどの方がそんな経験はないし、うるさいだけだと感じていることだろう。


なぜ、候補者がみんな選挙カーを活用するかというと、公職選挙法で認められた数少ない選挙運動だからだ。ほとんどの事が禁止されている現状では、限られた「できること」は費用対効果にかかわらず、みんなやろうとする。ほとんど効果がないと自分で思いながらだ。


もちろん、金をかければ当選するという制度はよくない。しかし、金をかけて宣伝したからと言って、今や賢いほとんどの有権者は投票しないのではないか。もちろん、金を配ることやそれに類することは禁じるべきだが、選挙運動については原則自由化すべきだ。そうしてこそ、候補者はそれぞれが「費用対効果高い」運動に知恵を絞ることになる。


そもそも、たった12週間の選挙運動ですべては決まらない。普段の地道な活動でほとんどが決まるのだ。最近は政党自体がどう報じられるかというのも大切だが、選挙に通じた人が「公示日(告示日)には決まっている」というのは事実だろう。政治家も有権者もネット選挙がようやく認められたことを喜ぶのではなく、もっとたくさんの「おかしなこと」に目を向けなければならない。