数日前の事だが、久しぶりに東京まで出張した。

一時期は転勤したのが嘘のように東京に戻ったものだが、転籍もしたし、コロナもあって出張は減った。

日帰りの出張なので、あまりゆっくりもしてられないし、割と詰めた予定で動きまわった。

とは言っても、品川と新横浜で個別の打合せがあっただけで、それぞれよく知った場所なので問題もない。

午前中に品川で打合せを終えて、新横浜に移動して16時前には役目を終えた。

ちょっと身体が万全ではない為、空いた時間で遊びに行くわけにはいかないのだが、そのまま帰るのも味気ない。

だいぶん無駄な遠回りになるが、電車を乗り継いで馴染みの店を訪ねてみた。

以前に暮らした街の駅前なので、ほぼ無休で営業していた筈だが、残念ながらお店は閉店してしまっていた。

事情はわからないが、おそらくコロナが原因だろうと思う。

本当の無駄足になってしまい、諦めて通勤で利用していた電車に揺られて品川まで移動した。

車窓を眺めながら、食べたかった料理の事を考えたが、いつしか昔の事を思い出していた。

懐かしむような思い出でもないが、思い出は美化されるもので、この場所を去る頃の苦々しい思いも薄らいでいる。

終わり良ければとはならなかったが、多少は楽しい事もあった。

そう思うと、逆に今の電車に揺られている自分は空虚だ。

終わった事を考えても仕方がないので、感情に蓋をして流れる景色を眺めた。

品川駅で新幹線に乗り換え帰路に着いたが、せっかくなので、晩メシ代りにお弁当を買ってビールも買った。

今日くらいは良いかと、ささやかな晩酌を楽しみながら、少しの時間くつろいだ。

新幹線を降りて、地元の駅まで電車に揺られてるうちに眠気に襲われた。

わずかな時間眠っただけだが、すっかり下車駅を乗り過ごしてしまった。

誰が待つわけでもない自宅に帰るだけだ。

帰りの電車も待たず、よろよろと自宅に向かって歩いた。

長く歩くと暑いと感じる季節になったが、汗を流しながら出張カバンと上着を抱えて歩いた。

汗と一緒に酒気も飛んで、忘れたい事も何処かに置き去りになった。

予想より長い出張になったが、地元の駅が近づいて安堵して元の自分に戻った気になった。

やはり居場所があるって大事なんだとしみじみ思う。