コロナ禍の真っ只中ではあるが、ある期間だけ仕事で大阪と滋賀に滞在した。

 

少し見ない間に梅田の発展ぶりが凄まじい事になっているが、俺は仕事先とホテルの間を行き来するだけだった。

 

せっかくの大阪の賑わいもホテルで過ごすだけで、全く触れる事もない日々。

 

街灯りを横目に見ながらホテルの部屋で過ごすのは寂しいものだったが、不思議と良く寝れる日が続いた。

 

 

滋賀に移ってからは、郊外なのでコロナの心配はマシかと思ったが意外とそうでもなく、おまけに足がないと移動も不便。

 

 

仕方なくレンタカーを借りる事にした。

 

 

ここでも街に繰り出す事は出来なかったが、代りに車でのドライブを楽しんだ。

 

 

ホテルでの缶詰めにも飽きてきた頃で、特に行く宛てがある訳ではないが、夜の琵琶湖を眺めたりして車窓の景色を楽しんだ。

 

 

前の勤務地では車がないと生活できなかったが、今ではハンドルを握る事の方が珍しい。

 

 

なんとなく忘れかけていた運転の感覚を楽しみ、大昔に眺めた景色の変貌ぶりや、記憶の片隅にある懐かしい場所が残っている事を喜んだ。

 

 

そんな日々を過ごす中、土日の休みを挟んだので、思い切って遠出をしてみた。

 

 

まだ独身時代の話だが、関西に赴任した事があってバイクでいろんな場所を走ったものだ。

 

 

その中でも、特にお気に入りの道が、京都の高雄から京北や美山を回って亀岡まで戻る道だ。

 

 

昔はそこから大阪の能勢~池田まで抜けたが、今回は嵐山に抜けるつもりで車を走らせた。

 

 

高雄を走る頃には昔の懐かしい景色が目に飛び込んできた。

 

 

以前は気持ち良く走るだけの道だったが、今では思い出が乗っかる特別な道なんだなと実感する。

 

 

やはり、郊外の景色は大して変化がないと思ったが、所々で道が修正されてトンネルが出来て走りやすくなっている。

 

 

おまけに道の駅も何箇所か出来ている。

 

 

観光目的ではなかったが、道の駅に立寄って観光客に紛れてみた。

 

 

休日という事で、ライダーやファミリー客、アベックや年配グループといった集団客ばかりで、俺には少し居心地が悪い。

 

 

早々に道の駅を後にして、思い出を追いかける旅に戻った。

 

 

美山の先にダム湖があって、春先には桜が綺麗だった記憶があるが、この時期ではそれも望めない。

 

 

自分の記憶より少し小さな湖面を望んで、さらに亀岡の街を目指した。

 

 

昔は亀岡を9号線で抜ける際に渋滞に難儀をしたが、今ではそれさえも懐かしい。

 

 

途中の道がよくなっていた為か、想定よりもかなり早いペースで亀岡に着いたが、特に立寄りたい先もなく嵐山まで抜けた。

 

 

嵐山も賑わってはいるが、本来ならこんなものではないのだろう。

 

 

ここはメジャーな観光地なので、立ち寄る事なくスルー。

 

 

結局、まだ日が高い時間に宿に戻る事が出来た。

 

 

その日は思い出とは無縁だが、帰り道のスーパーで買ったお弁当と道の駅で買った牛乳で締めた。

 

 

いつもは牛乳など飲まないが、懐かしい気分に浸って、ちょっとだけ気持ちも若返ったのかもしれない。

 

 

ささやかな放浪だけど、大体30年前くらいの思い出を辿った事になるのだろうか?

 

 

得たものよりも失ったものの方が多く、時間だけが過ぎた。

 

 

しかし、忘れる事なくふと気がつけば、記憶として蘇ってくるものなんだと学んだ気がした。

 

 

滋賀の夜は少し眠れなくなった。