医学部専門課程1年目はほとんどが基礎医学でした。
最初の授業が解剖学でした。
いずれにしても、
基礎医学というのは面白くはありませんでした。
解剖学なんてすべて暗記です。
理屈なんて何もありません。
この解剖学の最初の授業の最初のスライドが、
女優の関根恵子さんの裸でした。👸
何で裸のスライドが出てきたのか分かりませんでした。
「女性の裸だって、よくみれば解剖学の立派な勉強になるんだ。
君たちが見ているすべてに名前がついている」
そう言って、
関根恵子の裸を棒で指しながら解説をしていました。
みんな、
だんだんしらけてまいりました。
医学部専門課程は、
医者になるために絶対に通過しなければいけない道です。
関根恵子の裸で気を引かなくたって、
無味乾燥な解剖学用語を覚えなくてはいけないことは、
みんな百も承知でした。
解剖学の中心は実習でした。
死体の解剖です。
不安もありましたが、
怖いもの見たさもありました。
このとき、
犯罪史上の歴史に残る大量殺人犯、
大久保清が死刑になり、
その遺体が我々の大学に解剖実習の目的で保管されておりました。
遺族が、
生きている時にあれだけ迷惑をかけたのだから、
せめて死んでから少しでも人の役に立ってもらいたい、
ということで大学へ献体しました。
私は、
大久保清にだけは当たりたくないと思いました。
大久保清を解剖したなんてことになったら、
自分まで歴史に残ってしまいそうでした。
幸いなことに、
解剖される遺体は、
献体順だったので、
大久保清が解剖になるのは数年先のことだ、
ということでした。
しかし、
医者になってみて思うのですが、
解剖実習って役に立っているのかなあ。
人体解剖が医者になるために必要かどうかはよく議論されます。
ただ、
医者になるための自覚を持たせるためにはいいのではないか、
とよく言われています。
こんなことは言いたくないけど、
あの辛気臭い解剖実習が、
医者になるためにプラスになっているとは思えないけど、
ちょっと言い過ぎかな。
同級生が解剖実習が原因かどうか分からないけど、
病院の屋上から飛び降りて自殺したのが解剖実習の期間中だったというのは、
ただの偶然ではなかったような気がしました。
献体した人には申し訳ないけど、
死体を黙々と解剖しているのってかなり辛いです。
解剖実習が終了して、
遺体を袋に収める時になって、
本当に解放された気分になりました。
解剖実習は頻繁に実地試験がありますが、
これは一夜漬けでたいてい何とかなりました。
最後に筆記試験がありました。
これは範囲が膨大でしたので、
落とすと進級にひびきました。
友達と麻雀をやっている時に、
問題を読み間違えたことに気づき、
茫然としている間に大負けしてしまったことがありました。🀄️
しんどくて、
臭くて、
辛くて、
面倒臭い解剖実習でしたが、
約半年ですべて終了致しました。
しかし自殺者1名、
大きな犠牲者が出てしまいました。
もちろん本当の原因は分かりませんが、
釈然としないものが残ってしまいました。
医学部専門課程に入って最初の科目を通過しましたが、
始めからこんなに苦戦しているようでは、
これから先が思いやられました。
国立西洋美術館の「睡蓮」です。(再掲)
クロード・モネ<1840年11月14日生〜1926年12月5日没>の作品です。
クロード・モネは1926年肺硬化症で病床につき、
12月5日に86歳で永眠いたしました。